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エコール・ヴァローナ東京10周年記念デモンストレーション
2017年11月2日、世界を代表するチョコレートブランドであるヴァローナのショコラ専門技術校「エコール・ヴァローナ東京」にて、同校の10周年を記念する特別デモンストレーションが開催されました。

エコール・ヴァローナ東京は、ヴァローナのフランス本社に併設されている研修機関「エコール・ヴァローナ」の世界初の姉妹校として2007年に誕生。創設以来、アジアにおける情報と技術の発信拠点として、日本国内はもちろん、台湾や香港などのアジア各国から、スペイン、フランス、イタリアなど、年間3000名以上のプロのショコラティエ・パティシエにテクニカルサポートを提供しています。

そんなエコール・ヴァローナ東京は、2017年で創設から10周年という節目を迎えることになりました。それに伴い、同年4月より北海道から福岡までの全国7都市に出向き、これまで支えて下さったプロフェッショナルのお客様に感謝の気持ちを伝えるべく、記念デモンストレーションを開催。この日に行われた東京でのデモンストレーションが全国行脚のラストを飾りました。

講師はエコール・ヴァローナ東京のエグゼクティブ・シェフを務めるファブリス・ダヴィドゥ(Fabrice DAVID)氏が担当し、全5品を披露。どちらの作品もヴァローナのチョコレート製品の特徴を活かした仕上がりになっており、記念イヤーのデモンストレーションに相応しい内容となりました。
ENTREMETS DULCEY(アントルメ・ドゥルセ)
講習会のオープニングとなる1作品目は、その登場により “ブロンド”という新しいチョコレートのジャンルを確立したドゥルセ(ヴァローナ)を使ったアントルメ、「ENTREMETS DULCEY(アントルメ・ドゥルセ)」。

本作品のメインとなるのは、ムース・アレジェ・ドゥルセ。このムースは、牛乳や生クリームの代わりに「水」で乳化したドゥルセを、泡立てた生クリームと混ぜ合わせて仕込みます。乳化に水を使用している為、一般的なチョコレートムースよりも食べ心地が軽く、ダイレクトに感じられるチョコレートの味わいが特徴です。

底生地はビスキュイ・ノワゼット。ヘーゼルナッツパウダーには皮付きのものを使用し、さらに砂糖をマスコバド糖とカソナードにすることで、風味が強くコクのあるビスキュイに焼き上げています。

ビスキュイ・ノワゼットの上には、バナナのシャンティとバナナのコンポートの二つのパーツを重ねています。バナナのシャンティは、バナナピューレに生クリーム、マスカルポーネ、ゼラチンを乳化させて泡立てたもので、配合中にマスカルポーネを加えることでコクのある味わいに仕上げています。もう一つのバナナのコンポートは、カソナード、溶かしバター、パッションピューレ、レモン果汁で作ったマリネ液に漬け込んだスライスバナナをオーブンで焼成してから、ゼラチンとラム酒を加えてスティックミキサーにかけてコンポートにしています。
CHOUX ORELYS(シュー・オレリス)
2作品目は、「CHOUX ORELYS(シュー・オレリス)」。シューとパイを組み合わせた生地の中に、モーリシャス産のマスコバド糖を使用したブロンドチョコレート、オレリス(ヴァローナ)のガナッシュ・モンテとバナナのコンポートが詰め込まれています。

日本と言えばシュー大国。日本人が大好きなシューに、日本文化「折り」の技法を取り入れたのが本作品。その国の文化的背景も考慮しながら、レシピを構想するファブリス氏のアイデアが活かされています。このシューオレリスは、2016年、東京で開催された「ルレ・エ・シャトー」世界大会のオープニングパーティーでも振る舞われた一品。無垢の木の紙が器として使われています。

本作品に使用するシュー生地は、沸騰するまで加熱した水分と小麦粉をミキサーで混ぜ合わせてから、定量の卵を加えるという独特の製法で作ります。この製法は一般的なシュー生地のように、水分と小麦粉を混ぜてから鍋で炊き上げる必要が無く、さらに生地の状態を見ながら卵の量を調整する必要も無いので、作業性に優れており非常に効率的。誰が作っても安定した状態に仕上げることが可能です。今回のデモンストレーションでは、この製法で仕込んだシュー生地を小さな球状に絞り、予め冷凍しておきます。

シューと組み合わせるフィユタージュ(パイ生地)は、バターでデトランプを包み込むアンヴェルセ(逆折り)で仕込みます。折り込みは6回行い、厚さ2.5mmに伸してから70×70mmの正方形にカット。この正方形にカットした生地で、予め冷凍しておいた上記のシュー生地を包み込み、シリコン製のドーム型に入れて焼成。綺麗な球状に焼き上がれば、シューとパイを組み合わせたユニークな生地の出来上がりです。

生地の中に詰めるフィリングは、オレリスのガナッシュ・モンテとバナナのコンポートの2種類。オレリスのガナッシュ・モンテは、糖類を加えて加熱した生クリームで乳化したオレリスに、別量で用意したリキッドの生クリームを合わせて、一晩休ませてからミキサーで泡立てたもの。バナナのコンポートは、1作品目のアントルメ・ドゥルセと同じパーツを使用しています。
TARTELETTES ORELYS CAFÉ MANDARINE(タルトレット・オレリス・カフェ・マンダリン)
3作品目は、前作品でも登場したオレリスにエスプレッソとマンダリンを組み合わせたタルト、「TARTELETTES ORELYS CAFÉ MANDARINE(タルトレット・オレリス・カフェ・マンダリン)」。

土台となるタルト部分は、オレリスと同じマスコバド糖を使用したサブレ生地で作ります。生地は厚さ3mmに伸してから、ホームセンターなどで売られているジャバラの配管カバーを巻いためん棒で縞模様を付けて丸く抜いた後、ドーム状のシルパンの裏面に乗せてお椀のような形に焼成。焼成後は吸湿を防ぐ為、カカオバターでコーティングを施します。

タルトのフィリングは、マンダリンのマーマレード、オレリスとエスプレッソのジュレ、オレリスのムースという3種類のパーツから構成されています。それぞれのパーツをモンタージュした後は、仕上げとしてオレリスのグラッサージュをタルトの上面に流し、タルトのフィリングでも使用したマンダリンのマーマレードとパールクラッカン・ドゥルセ(ヴァローナ)をトッピング。大小2種類のドームが重なり合う可愛らしい形状のタルトに仕上がりました。
STRATE ITAKUJA(ストラット・イタクジャ)
4作品目は、PI25(ヴァローナ)イタクジャ(ヴァローナ)という2種類のチョコレートをメイン素材に使用したプティガトー、「STRATE ITAKUJA(ストラット・イタクジャ)」。

本作品の土台部分は、予備焼成したパート・サブレの上にクレーム・ダマンドを絞り、焼き上げたもので、どちらのパーツにもPI25が配合されています。PI25は、チョコレートの主原料であるカカオパートが、味・香り・色の源となる固形分よりも油脂分の比率が多い事に着目し、この比率を逆転させて固形分比率を高めたチョコレートです。本作品のように焼成生地に使用した場合は、ココアパウダーを配合しなくてもカカオ風味がしっかりと感じられる生地に仕上がります。

P125を使用した土台部分の上には、イタクジャのガナッシュを重ねています。イタクジャは、カカオ豆の自然発酵終了後に、パッションフルーツの果肉を加えて二度目の発酵を行うことで、カカオのアロマの中にフルーツのアロマを共存させたチョコレート。その風味・味わいは非常に個性的な為、本作品のガナッシュでは、このイタクジャに糖類と生クリームのみをシンプルに混ぜ合わせて、イタクジャの個性を活かした味わいにしています。
10ANS ÉCOLE(10ansエコール)
講習会のラストを飾るのは、エコール・ヴァローナ東京の10周年を記念した作品、その名も「10ANS ÉCOLE(10ansエコール)」。本作品は、世界初のハイカカオ・チョコレート、グアナラ(ヴァローナ)にスポットを当てたアントルメで、デモンストレーションはエコール・ヴァローナ(フランス本校)とグアナラについてのエピソードからスタートします。

エコール・ヴァローナとグアナラの関係は、グアナラが発売された1986年まで遡ります。当時の製菓業界で使用されていたチョコレートといえばカカオ分が50%台のものがほとんど。そんな中、カカオ分が70%もあるグアナラの登場は大きなインパクトがあり、パティシエ達はこのグアナラを使用した新しいお菓子作りを試みます。しかし、カカオ分に大きな差があるチョコレートの扱い方に大苦戦。普段使用しているレシピのチョコレートをグアナラに変えるだけでは仕上がりの良いお菓子を作ることが出来ませんでした。その状況を見兼ねたヴァローナは、デモンストレーションを通してこのハイカカオ・チョコレートの使い方を提案する場所の創設を考えます。そこで誕生したのがエコール・ヴァローナ。グアナラの登場無くしてはエコール・ヴァローナの誕生は無かったかもしれません。つまりエコール・ヴァローナ東京もグアナラが大きく関係していることになります。

そんなエピソードもあり、エコール・ヴァローナ東京の10周年を記念するこの作品には、随所にグアナラが使用されています。作品構成は、グアナラのムースをメインにして、グアナラのクレムーと小麦粉不使用のビスキュイを重ねたパーツをアントルメの底に配置しています。

どのパーツも非常にシンプルなレシピでありながらも、計算された配合、確かなノウハウで、チョコレートの味わい・風味がダイレクトに楽しめる仕上がり。
味わいと効率化を兼ね備えた内容が存分に紹介されました。これからもパティシエが持つ問題に真摯に向かい合い、夢、希望、情熱をお客様と分かち合いながら美食の未来を歩み続けたいという、エコール・ヴァローナ東京の願いが込められたデモンストレーションとなりました。
Fabrice DAVID(ファブリス・ダヴィドゥ)
Fabrice DAVID(ファブリス・ダヴィドゥ)氏
ルレ・デセールの名店「ヤニック・ラブ」でシェフ・パティシエとして頭角を現す。1999年、来日。2001年にフレデリック・ボウに導かれてヴァローナへ。2007年、エコール・ヴァローナ東京を創設。ディレクターとして、日本はもとより、アジア、ヨーロッパ各国のプロを迎え、技術の伝播に努める。
ヴァローナ
エコール・ヴァローナ東京について
ヴァローナのフランス本社に併設されている研修機関「エコール・ヴァローナ」の世界初の姉妹校として2007年に誕生。フランス本部と直結した情報網により、アジアにおける情報と技術の発信拠点として、日本国内、台湾、中国、香港、シンガポール、スペイン、フランス、イタリアなど、年間3000名以上のプロのショコラティエ、パティシエにテクニカル・サポートを提供している。

エコール・ヴァローナ 東京
http://www.valrhona.co.jp/ecole/
ヴァローナ・ジャポン
http://www.valrhona.co.jp/
ヴァローナ オンライン・ブティック
http://boutique.valrhona.co.jp
 
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