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サンエイト貿易主催 ジル・マルシャル氏による特別来日講習会
2017年10月3日(火)、洋菓子を中心とした高級製菓原材料を取り扱うサンエイト貿易と、世界30社から洋菓子には欠かせない様々な洋酒を輸入するドーバー洋酒貿易の共催による、ジル・マルシャル(Gilles MARCHAL)氏の特別来日講習会が行われました。

ジル氏による講習会は、大好評となった2016年に引き続き2年連続での開催となり、今年もジル氏のデモンストレーションを一目見ようと、定員を超える多数の応募がありました。アシスタントには昨年の講習会と同じく、佐藤浩一料理長と仲村和浩ペストリーシェフを始めとするハイアットリージェンシー東京のスタッフが担当します。

今年の講習会では、クリスマスを意識したブッシュ・ド・ノエル、伝統的なフランス菓子のオペラ、ホテル時代に考案した皿盛りデザートなど、バラエティ豊かな6作品を披露。時代の流れと共に移り変わる味覚の変化に反応しながらも、伝統的なレシピやビジュアルを大切にした作品を創造するジル氏のパティスリースタイルを今年も堪能させて頂きました。講習会のラストにはちょっとしたサプライズも用意されていました。

開 催 日 2017年10月3日(火)
講 師 ジル・マルシャル(Gilles MARCHAL)氏
(パティスリー・ジル・マルシャル)
主 催 サンエイト貿易株式会社
ドーバー洋酒貿易株式会社
ビッシュ・マロン、クレーム・ショコラ・ドゥルセ、ノワゼットとアマンドのダコワーズ(Bûche marron,crème chocolat dulcey,dacquoise noisette et amande)
1作品目は、「ビッシュ・マロン、クレーム・ショコラ・ドゥルセ、ノワゼットとアマンドのダコワーズ(Bûche marron,crème chocolat dulcey,dacquoise noisette et amande)」。本作品は、ヴァローナ社のドゥルセ35%とマロンを組み合わせたクリスマス向けのビッシュ・ド・ノエルで、作品構成はマロンのムースをメインに、センターにクレーム・ドゥルセとダックワーズ、底生地にセンターと同じダックワーズをそれぞれ配置しています。

メインとなるマロンのムースは、パータ・ボンブベースで仕込みます。レシピにはマロンペーストマロンクリーム、マロンコンフィエグテ(全てマロンロワイヤル)を配合。アクセントとしてラム酒(ディロン)を加えてマロンの風味を高めています。

全てのパーツが揃った所で、50cmを超える大きなビッシュ・ド・ノエル型にモンタージュ。一度冷凍してから、ドゥルセのグラッサージュで表面にコーティングを行い、仕上げとしてマロンのヴェルミセルやツリー型のデコールショコラなどを飾り付けて完成です。クリスマスシーズンはもちろんですが、秋シーズンにも食べたいビッシュ・ド・ノエルとなりました。
センターのクレーム・ドゥルセ。ハンドブレンダーで各材料を乳化。
センターと底生地に使用するダックワーズは天板に伸して焼成。
メインとなるマロンのムースはパータ・ボンブをベースにして仕込みます。
50cmを超える大きなビッシュ・ド・ノエル型に各パーツをモンタージュ。
冷やし固めた後はドゥルセのグラッサージュでコーティング。
仕上げのマロンのヴェルミセル。和菓子道具の「小田巻」を使用。
断面部分にはツリー型のデコールショコラをデコレーション。
オペラ(Opéra)
2作品目は、今回の講習会に向けた事前の打ち合わせの中で熱心なリクエストがあり、そのリクエストに応える形でデモンストレーションのメニューに取り入れたという「オペラ(Opéra)」。伝統的なスタイルを大切にした作品に定評のあるジル氏だけに、伝統的なフランス菓子を代表するオペラをどのように仕上げて行くのか注目を集めます。

ジル氏のオペラは、ビスキュイ・ジョコンド3層、コーヒー風味のクレーム・オ・ブール2層、ガナッシュ1層、グラッサージュ1層の全7層構成。奇をてらうことなく、王道のパーツのみを使用してオペラを構築しています。

モンタージュの際には、ビスキュイ・ジョコンドにたっぷりのコーヒーシロップをアンビバージュするのがポイントとなります。コーヒーシロップの量は、配置するビスキュイ・ジョコンドとほぼ同量。オペラにフォークを立てるとジワッと滲み出るくらい刷毛でしっかりとシロップを浸み込ませています。

グラッサージュまで順にパーツを重ねた後は、冷やし固めてから長方形にカット。仕上げはシンプルにココアパウダーを振りかけるのみで完成となります。甘さを抑えたビターで高級感のある味わいは、まさに王道。ジル氏のショップでもベスト5に入る人気商品ということです。
コーヒー風味のクレーム・オ・ブールはアングレーズを配合して軽い仕上がりに。
ビスキュイ・ジョコンドには生地と同量のコーヒーシロップをたっぷりアンビバージュ。
ガナッシュもオペラには欠かせません。チョコレートにはエクアトリアール・ノワールを使用。
トップにはグラッサージュを薄く重ねます。全7層構成。
冷やし固めた後は長方形にカット。片手でつまんで食べられるサイズ感。
デコレーションはココアパウダーのみ。シンプルな美しさ。
王道のパーツで構成されたジル氏のオペラ。高級感のある味わい。
タルト・ブルダルー(Tarte bourdaloue)
3作品目は、「タルト・ブルダルー(Tarte bourdaloue)」。タルト・ブルダルーもオペラに引き続き伝統的なフランス菓子ですが、こちらはクラシックなレシピに現代的な要素も取り入れて、オリジナリティのあるスタイルに仕上げています。

ベースとなるのは、パート・シュクレ、クレーム・ダマンド、ポワール・ポッシェの3パーツで構成されたタルト。この時点で伝統的なタルト・ブルダルーは完成といえますが、ジル氏はここに現代的な要素としてピスタチオのクレーム・オ・ブールを重ねていきます。

ピスタチオのクレーム・オ・ブールは、アングレーズをベースにして、バターとピスタチオペースト(BABBI)を加えながら、ミキサーでしっかりとモンテします。程よいクリーム状になったところで、絞り袋を使って予め焼成しておいたタルトの上に絞ります。

このタルト・ブルダルーは、ジル氏のショップでも9月後半頃より販売をスタートしたそうです。ポワールとピスタチオの収穫時期を意識した秋向けのタルトとなりました。
ジル氏自らタルトリングにパート・シュクレをフォンサージュ。
タルトの中にはクレーム・ダマンドとポワール・ポッシェを配置。
焼成後はフチ部分に粉糖をかけてデコレーション。
タルトのトップにはピスタチオのクレーム・オ・ブールを絞って完成。
タルト・ブルダルーの断面。素材の収穫時期を意識した秋向けのタルト。
ケーク・マーブレ(Cake marbré)
4作品目は、「ケーク・マーブレ(Cake marbré)」。バニラ風味のプレーン生地とオレンジダイスをアクセントに加えたチョコレート生地を、その名称の通りマーブル状にして焼き上げたケイク菓子です。

プレーン生地とチョコレート生地は、共に卵、砂糖、粉類などの各材料をシンプルに混ぜ合わせて作ります。混ぜ合わせる際には、空気を含ませないように丁寧に各材料を繋ぎ合せるのがポイント。絶対にブランシールさせることはありません。

2種類の生地が準備できたところで、アシスタントを務める仲村ペストリーシェフと並んで、それぞれの生地をパウンド型の中に絞り入れて行きます。両方の生地を絞り終えた後は、生地の上部にきれいな裂け目ができるようにポマード状のバターを一直線に絞ってから焼成。今回のケーク・マーブレではアンビベも行いませんので、このまま完成となります。

2016年の講習会に披露された「ケイク・ショコラ・オランジュ」でも触れましたが、自身の作成するケイクは、装飾などを一切行わず、焼成したそのままの姿で提供するのがジル氏のスタイル。日本のケイク菓子のようにスリムパウンド型を使用して、様々な装飾をするスタイルも非常に魅力的で素晴らしいと感心していますが、このクラシックなスタイルを変えることはありません。
まずは生地作りからスタート。空気を含ませないように丁寧に各材料を繋ぎ合せます。
2種類の生地が準備できたところでマーブル状になるようにパウンド型に絞り入れて行きます。
生地を絞り終えた後には上部にポマード状のバターを一直線に絞ってから焼成。
焼成後のケーク・マーブレ。ポマードバターを絞った部分がきれいに裂けています。
装飾は一切行わず、焼成したそのままの姿で提供するのがジル氏のスタイル。
ノワイエ(Noyer)
5作品目は、「ノワイエ(Noyer)」。ノワイエは、シリコン製のマフィン型で焼き上げた小さな焼き菓子。4作品目のケーク・マーブレに引き続き、焼き菓子が2作品続きます。

このノワイエは、パートダマンド(マルコナ)をベースにして、全卵や溶かしバターなどの材料を滑らかな状態になるまでロボクープで順々に混ぜ合わせて作ります。生地中にはアクセントとしてオレンジゼストとグランマルニエを加えて、柑橘の風味をプラスしています。

全ての材料を繋ぎ終えた生地は、冷蔵庫で24時間休ませてから、シリコン製のマフィン型に絞り入れます。絞り入れる際には、生地中にガルニチュールとしてマロンコンフィエグテとオレンジキューブを少量加え、トップには半分に割ったヘーゼルナッツを飾り付けて焼成。焼成後は熱いうちにグランマルニエをアンビバージュし、最後にグラス・ア・ローを上掛けしてからオーブンで表面を乾燥させて完成となります。

パートダマンドをベースにしたシンプルな焼き菓子なので、アーモンドの味わいと柑橘の爽やかな香りが楽しめる素朴な一品です。
パートダマンドをベースにした生地作り。ロボクープを使用。
全ての材料を繋ぎ終えた生地はシリコン製の型に絞り入れて焼成。
焼成後はソースディスペンサーでグランマルニエをアンビバージュ。
仕上げとしてグラス・ア・ローを上掛けしてからオーブンで表面を乾燥。
完成したノワイエ。アーモンドの味わいと柑橘の香りが楽しめる素朴な一品。
サバイヨン・ショコラノワール、クラッカン・ノワゼット、キャラメル・トンカ、クレーム・グラッセ・グランマルニエ、ネクター・エキゾチック(Sabayon chocolat noir,craquant noisette,caramel tonka, crème glacée grand marnier et nectar exotique)
講習会最後の6作品目は、「サバイヨン・ショコラノワール、クラッカン・ノワゼット、キャラメル・トンカ、クレーム・グラッセ・グランマルニエ、ネクター・エキゾチック(Sabayon chocolat noir,craquant noisette,caramel tonka, crème glacée grand marnier et nectar exotique)」。本作品は、ホテル・ル・ブリストル・パリのシェフ・パティシエ時代にサロン向けのデザートとして考案したもので、3種類のパーツから構成されています。

メインとなるのは、パータ・ボンブベースのムースショコラ。チョコレートにはグアナラ(ヴァローナ)を使用して、カカオの風味がしっかりと感じられるビターな味わいに仕上げています。ムースの中には食感のアクセントとしてダイス状にカットしたダックワーズが入っており、ガラス容器に絞り入れた後には上面にキャラメルソースを流しています。

2種類目のパーツは、グランマルニエのクレームグラッセ。アングレーズをベースにして、グランマルニエとオレンジゼストで柑橘の風味に仕上げています。盛り付けの際は、先ほどのムースショコラの上にクネルにして直接乗せるパターンと、別のガラス容器に入れるパターンの2種類を披露。完成品のイメージに合わせて、使い分けていきます。

最後の3種類目のパーツは、エキゾチックフルーツを使ったネクター(ドリンク)。マンゴーピューレ、ココナッツピューレ、パッションピューレ(全てクロップス)、ライチピューレ、オレンジ果汁、ライム果汁、砂糖を全てシンプルに混ぜ合わせて作ります。こちらのネクターは、ムースショコラに直接組み合わせることはせず、別のガラス容器に注ぎいれます。

全ての盛り付けが完成した所で、水にドライアイスを入れてスモークを起こしたグラスを重ねて幻想的な雰囲気を演出。サロン向けのデザートならでは、プレゼンテーションとなりました
メインのムースショコラはパータ・ボンブをベースに仕込みます。
各パーツの準備が出来たところでガラス容器にモンタージュ。
ムースショコラの中にはダイス状にカットしたダックワーズを配置。
ムースショコラの上面にはキャラメルソースを流し入れます。
ドライアイスを使用したプレゼンテーション。幻想的な雰囲気を演出。
それぞれのデザートを別容器に入れると違った印象に仕上がります。
ジル・マルシャル バースデー
講習会の終わりには、講習会当日の二日前に51歳の誕生日を迎えたジル氏に向けて、アシスタントを務めたハイアットリージェンシー東京の佐藤料理長より、サプライズとして彩り豊かなバースデーケーキがプレゼントされました。この演出には強面のジル氏もにっこり。受講者全員でバースデーソングを歌い、会場全体でジル氏の誕生日を祝いました。

若くして世界的なホテルのシェフ・パティシエに就任して以来、長年に渡りパティスリー界のトップを歩み続けているジル氏。しかしパティスリーに対する情熱は今現在も衰えることなく、自身の哲学を貫きながら更なる進化を続けています。まだまだこれからも世界中のパティスリーファンを楽しませてくれる事でしょう。
ジル・マルシャル(Gilles MARCHAL)氏
1966年フランス・ロレーヌ地方生まれ。1984年にパティシエ、ショコラティエ、グラシエの国家資格を取得。「レストラン ジャン・バルデ」、「ホテル・クリヨン」などの名店に勤務した後、1994年、28歳の若さで「ホテル・プラザ・アテネ」のシェフ・パティシエに抜擢。さらに1999年より8年間に渡り、フランスのホテル最高格付け「パラス」の称号を誇る「ホテル・ル・ブリストル・パリ」でシェフ・パティシエを務める。2007年には「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のクリエイティブ・ディレクターに就任。そして2014年11月、パリのモンマルトルに自身の店「パティスリー・ジル・マルシャル」をオープン。最高峰のホテルやパティスリーで培った技術・知識・センスと、クラシカルなお菓子に現代風のアレンジを加えた独自の作風で、世界中の美食家を魅了し続ける。現在、世界で最も注目を集めるパティシエの一人。

サンエイト貿易株式会社
フランス・ヴァローナ社の最高級チョコレートやスペイン・SOSA社の製品を始め、洋菓子を中心とした高級製菓原材料の専門商社。「本物の価値ある商品をお届けする」ことを企業理念に、ヨーロッパを中心とした先見性のある高級洋菓子原材料を輸入販売し、製菓・製パン・料理業界の発展に貢献。

サンエイト貿易ホームページ
http://www.sun-eight.com/

ドーバー洋酒貿易株式会社
ヨーロッパを中心に世界30社から洋菓子には欠かせない様々な洋酒の輸入を行う。その一方で自社製品として、ノンアルコール濃縮果汁・エキス「トックブランシュシリーズ」や、バーテンダーより熱い支持を集める和素材リキュール「和酒シリーズ」などの開発も行う。

ドーバー洋酒貿易ホームページ
http://www.dover.co.jp/

 
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