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Jérémie RUNEL(ジェレミ・ルネル) 特別来日講習会
2017年5月18日、3月に開催されたJulien ALVAREZ(ジュリアン・アルヴァレス)氏の講習会に引き続き、世界を代表するチョコレートブランドであるヴァローナのショコラ専門学校「エコール・ヴァローナ東京」にて、Jérémie RUNEL(ジェレミ・ルネル)氏による特別講習会が行われました。

ジェレミ氏は、「フォション」、「ホテル・ル・ブリストル・パリ」といった世界的な名店や、「ヴァローナ・エコール・デュ・グラン・ショコラ」での勤務後、2013年に出身地であるフランス・アルデシュ地方のオーブナに2人の幼馴染みと共同経営でアイスクリーム店「La Fabrique Givrée(ラ・ファブリック・ジヴレ)」をオープン。2017年7月にはパリのリュクサンブール地区に7店舗目をオープンするなどフランス国内で人気を博しています。

ジェレミ氏の創作する作品は、水や牛乳からフルーツに至るまで、極力アルデシュ産の素材を使用して、素材本来の美味しさを追及。自身の作品を「ガストロノミー(美食)」と「グラス(氷菓)」を融合した「グラストロノミー」と定義して、氷菓の概念に囚われない様々な技術を導入しながら、独自の世界観を築き上げています。

2016年にもジェレミ氏による講習会の模様を取材させて頂きましたが、昨年の講習会から内容を一新し、今年はジェレミ氏のブランド内で展開している3つのシリーズ別に、全6作品のデモンストレーションを披露。氷菓に関するテクニックにとどまらず、経営やブランドに対する考え方まで、様々なアイデアを学ぶことができる内容となりました。
J'EN SUIS BABA(ジョン・スイ・ババ)
1作品目は「J'EN SUIS BABA(ジョン・スイ・ババ)」。こちらのジョン・スイ・ババと2作品目のバーガー・ジヴレは、街を歩きながら手軽に食べられるテイクアウトのアイスデザートとして、ラ・ファブリック・ジヴレでは「Street Coupes(ストリート・クープ)」と総称されるシリーズ。本作品はネーミングからも分かる通り、フランスの伝統菓子「ババ」をベースにしたもので、今回のデモンストレーションでは、ヴァローナの新作ブロンド・チョコレート、オレリスを使用したアイスクリームとマンゴーソースを組み合わせています。

デモンストレーションはババの生地作りからスタート。この作品のパータ・ババは、発酵時間を取らないレシピの為、各材料をビーターで5分程度混ぜ合わせてから、そのまま型に流して焼成を行います。焼成後は、生地が熱いうちにライム果皮で香り付けをしたラムシロップに漬け込みますが、最終的にアイスクリームとソースを組み合わせるのでシロップの甘さは控えめにしてあります。

ババと組み合わせるグラス・オレリスは、牛乳、生クリーム、糖類などを加熱したベース液とオレリスをシンプルに乳化させて仕込みます。一般的なアイスクリームのレシピは、アングレーズベースを用いることが多いですが、ジェレミ氏はアングレーズに含まれる「卵」が素材の味わいをマスキングしてしまうという理由から、自身の作るアイスクリームにアングレーズベースを使用することはありません。素材の良さを大切にするジェレミ氏らしい考え方と言えます。

トッピングとなるマンゴーソースは、マンゴーとパッションフルーツのピューレに、ヴァローナのアプソリュ・クリスタルを加えてソース状のとろみを付けています。アプソリュ・クリスタルは、余計な香りや過度の甘みを排除した無風味のナパージュなので、ピューレと混ぜ合わせるだけで簡単に素材の味わいを生かしたソースを作ることが可能です。

全てのパーツが揃ったところで、お椀状のカップの中にモンタージュしていきます。カップの底からマンゴーソース、ババ、グラス・オレリス、クレーム・シャンティの順に重ねて、最後にパンプキンシードとアマニシードを振りかけて完成。マンゴーとラムの味わいをメインにした、トロピカルなアイスデザートです。
BURGER GIVRÉ(バーガー・ジヴレ)
2作品目は、1作品目と同じストリート・クープシリーズの「BURGER GIVRÉ(バーガー・ジヴレ)」。このバーガー・ジヴレは、2016年に行われたジェレミ氏の講習会でも登場した作品で、バーガーバンズの形に焼き上げたブリオッシュにアイスクリームをサンドしています。店舗ではお好みのアイスクリームを注文できます。今回は、「グラス・マロン」をセレクト。トッピングには、小豆のコンフィとキャラメリゼしたピーカンナッツが添えられています。

グラス・マロンには、ジェレミ氏の出身地であり、世界的な栗の名産地として有名なアルデシュ産の栗を原料にしたマロンペーストとマロンクリームを使用。前作品と同じく、牛乳、生クリーム、糖類などの材料とマロンをシンプルに混ぜ合わせて、栗の風味を生かした味わいに仕上げています。

小豆のコンフィは、和菓子で言うところの「小豆の蜜漬け」です。一度茹でてすすいだ小豆を、水とグラニュー糖で煮込んでから、そのままシロップに漬け込んでいます。このグラス・マロンと小豆のコンフィという組み合わせは、フランスで行われたフードイベント用に考案したアイデアで、その際に大変好評だったことから、今回のデモンストレーションでもメニューに組み込んだとジェレミ氏は語ります。

モンタージュの際は、ブリオッシュをオーブンで少し温めてからサンドするのがポイント。適度に温められたブリオッシュは、柔らかな食感とリッチな風味が強調されて、アイスクリームの味わいと見事にマッチします。またブリオッシュとアイスクリームの温度差も楽しめます。
KIF CABOSSÉ DU CHOCOLAT(キフ・カボセ・デュ・ショコラ)
3作品目は「KIF CABOSSÉ DU CHOCOLAT(キフ・カボセ・デュ・ショコラ)」。前半はストリート・クープシリーズが2作品続きましたが、このキフ・カボセ・デュ・ショコラから5作品目のキフ・ヒップスターまでは、「Les Kifs du chef(レ・キフ・デュ・シェフ)」シリーズとなります。このシリーズは、透明のプラスチック容器の中にアイスクリームを始めとする様々なパーツを複数の層に重ねたアイスケーキで、「細長く背が低い」デザインが最大の特徴。

この「細長く背が低い」特徴的なデザインを取り入れた理由として、短い時間でケーキ全体を均一に食べごろの温度にすることができると共に、全ての層をスプーンで一度にすくえるようにする目的があり、ラ・ファブリック・ジヴレのアイスケーキを最高の状態で食べてもらいたいという想いが込められています。

本作品のキフ・カボセ・デュ・ショコラは、キャラメルソース、グラス・ジヴァラ・ラクテ、グラス・イタクジャ、ゴマ風味のシュトルーゼルという4層のパーツで構成されています。

特徴的なパーツとなるのがヴァローナのチョコレートを使用した2種類のアイスクリーム。一つ目のグラス・ジヴァラ・ラクテは、牛乳を使用せずに水でジヴァラ・ラクテを乳化させており、脱脂粉乳を加えることで乳成分を補っています。水がベースになる配合なだけに、ジヴァラ・ラクテの味わいがストレートに感じられる仕上がりです。

もう一つのグラス・イタクジャは、「ドゥーブル・フェルマンタシオン(二重発酵)」という独自の製法を用いてカカオの風味とパッションフルーツのアロマを共存させたヴァローナの新作チョコレート、イタクジャを素材に使用。パッションフルーツ果汁も少量プラスされたレシピ配合のグラス・イタクジャは、トロピカルな味わいが特徴です。
KIF HABIBI(キフ・ハビビ)
4作品目は「KIF HABIBI(キフ・ハビビ)」。このキフ・ハビビは、メイン素材として「ナッツ」をピックアップした作品。作品名の「HABIBI(ハビビ)」という言葉は、アラビア語で「愛しい人」を意味しており、中東でナッツが好まれているという理由からこのユニークな響きのネーミングを付けています。

作品構成は、プラリネ風味のクルスティアン、グラス・オパリス・カフェ、グラス・プラリネ・フリュイテの順に3層のパーツが重ねられており、一番トップにはトッピングとしてキャラメリゼしたカシューナッツとピスタチオナッツが配置されています。

プラリネ風味のクルスティアンとグラス・プラリネ・フリュイテには、ヴァローナのプラリネ・フリュイテ・クラッカンを使用しています。このプラリネは、細かく砕いたナッツとキャラメルシュガーが練り込まれているので、プラリネの濃厚な味わいと共にカリカリした食感を加えることができる便利な素材です。

グラス・オパリス・カフェは、コーヒー豆の香りをアンフュゼした牛乳をベースにしてオパリスと乳化させて仕込みますが、冷たい牛乳の中にコーヒー豆を漬け込んだまま「3日間」冷蔵庫で休ませて、じっくりと香りを移していくのがポイント。低温でじっくりと抽出されたコーヒーの香りは、余計な苦味が無く、余韻が長く持続するとジェレミ氏は解説します。
KIF HIPSTER(キフ・ヒップスター)
5作品目は「KIF HIPSTER(キフ・ヒップスター)」。キフ・ヒップスターは、ミューズリーのシュトルーゼル、グラス・オパリス・ヴァニーユ、ソルベ・ポムヴェール・サフランの3層に、カボチャの種とドライクランベリーをトッピングした作品構成。素材の組み合わせが非常にユニークで、今回のデモンストレーションの中でも個性的な一品です。

5作品目までのデモンストレーションではアイスクリームが続きましたが、このキフ・ヒップスターではパーツの一つに「ソルベ(シャーベット)」が登場します。ソルベは「水」をベースにした氷菓の為、糖度で仕上がりの食感をコントロールすることが大切です。ラ・ファブリック・ジヴレでもソルベを仕込む際には、必ず糖度計で糖度をしっかり計測してからソルベティエール(シャーベットマシン)にかけているくらい重要なポイントとなります。

また、このソルベ・ポムヴェール・サフランのように、メインとなる素材にスパイスを加えて味や風味のニュアンスに変化を付ける方法は、アイテムのマイナーチェンジやパリエーションを増やす時に効果的。スパイス以外にも、ハーブや野菜も同じような効果が期待できるので、メニュー作りのアイデアとして取り入れてみるのも良いでしょう。
COSMIC BERRY(コスミック・ベリー)
この日の最後にデモンストレーションされた6作品目は「COSMIC BERRY(コスミック・ベリー)」。こちらの作品は、ラ・ファブリック・ジヴレではフルーツを使用したフラッペドリンク「Fruit frappé(フリュイ・フラッペ)」シリーズとなります。

作り方は、フランボワーズと赤パプリカのソルベ液、フランボワーズピューレ、炭酸水、氷を全てまとめてブレンダーにかけるというシンプルなもので、レシピのポイントとなるのが「炭酸水」です。配合中に炭酸水が入ることで、氷の微粒を残したフラッペ特有の質感に、シュワシュワと炭酸が弾ける感覚がプラスされ、非常に爽快な飲み心地を演出します。

完成したコスミック・ベリーは、フランボワーズと赤パプリカの純粋な味わいがダイレクトに楽しめる仕上がり。素材由来の鮮やかな赤色が美しいフラッペドリンクです。ちなみに作品名の「COSMIC(コスミック)」という言葉は、炭酸の弾ける感覚がキラキラと星が輝く「宇宙」を連想させるということから付けらえています。
Jérémie RUNEL(ジェレミ・ルネル)
Jérémie RUNEL(ジェレミ・ルネル)氏
「フォション」、「ホテル・ル・ブリストル・パリ」、「ヴァローナ・エコール・デュ・グラン・ショコラ」で研鑽を積み、世界各国でも技術指導を行う。2013年、フランス・オーブナに新感覚のアイスクリーム店「ラ・ファブリック・ジヴレ」を開業、フランス国内で瞬く間に人気店となる。2017年、5周年を迎え、パリ・リュクサンブール地区に7店舗目をオープン。ルネル氏の豊かな経験が築いた確かな技術と斬新なアイデアが、ラ・ファブリック・ジヴレの新作を立て続けに生み出す。新世代をリードするパティシエとして、フランス国内でも脚光を浴びている。
ヴァローナ
ヴァローナ(VALRHONA)社について
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。 カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。 超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、 その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。 2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。 さまざまな研修プログラムが用意されている。

ヴァローナ・ジャポン
http://www.valrhona.co.jp/
ヴァローナ オンライン・ブティック
http://boutique.valrhona.co.jp
エコール・ヴァローナ 東京
http://www.valrhona.co.jp/ecole/
 
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