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サンエイト貿易主催 ジル・マルシャル氏による特別来日講習会
2016年9月28日、東京渋谷にあるドーバー洋酒貿易講習会場にて、フランス・ヴァローナ社のチョコレートなど洋菓子を中心とした高級製菓原材料の専門商社・サンエイト貿易が主催する、Gilles MARCHAL(ジル・マルシャル)氏による特別来日講習会が行われました。

ジル・マルシャル氏は、「ホテル・プラザ・アテネ」や「ホテル・ル・ブリストル・パリ」といった最高峰の名店でシェフ・パティシエを務めた後、「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のクリエイティブ・ディレクターとして、日本でも多くのファンを確立。2014年11月には、フランス・パリのモンマルトルに自身の店「パティスリー・ジル・マルシャル」をオープンさせた、現在、世界で最も注目を集めるパティシエの一人です。

21歳の初来日から実に40回以上も日本に足を運んでいると語るジル氏ですが、自身の店をオープンさせて以降、一度も来日することが出来ていなかったということで、今回の講習会が久しぶりの来日。ジル氏のアシスタントには、ハイアットリージェンシー東京のペストリー・ベーカー料理長・佐藤浩一氏や、ペストリーシェフ・仲村和浩氏という豪華な布陣を迎えます。

デモンストレーションの冒頭のあいさつでは、「クラッシックなレシピを現代的にアレンジする」というジル氏のパティシエとしてのスタイルを提言。この考え方をベースにして、アシェット・デセール、アントルメ、プチガトー、焼き菓子というバラエティー豊かな全5品のデモンストレーションを行います。作品によっては、同じパーツを使用して仕上げのアレンジを変えるなど、お菓子を構築する為の重要なアイデアがたくさん詰まった講習会となりました。

開 催 日 2016年9月28日(水)
講 師 ジル・マルシャル(Gilles MARCHAL)氏
(パティスリー・ジル・マルシャル)
主 催 サンエイト貿易株式会社
モンブラン・ソルベ・カシス(Mont Blanc sorbet cassis)
1作品目は「モンブラン・ソルベ・カシス(Mont Blanc sorbet cassis)」。本作品は、クラッシックなモンブランの組み合わせをベースにしたアシェット・デセールです。

作品のメインとなるのは、マロンロワイヤル社のマロンペースト、クレームシャンティ、焼成したメレンゲという、モンブランを構成する上で欠かすことが出来ない3パーツ。この3パーツをベースにして、カシスのソルベ、キャラメリゼしたピーカンナッツ、カシスのコンフィチュール、オレンジ果肉、パータ・シガレット、マロンコンフィを皿の上で組み合わせていきます。

盛り付けは、球体状のガラス皿と円盤状のガラス皿の2種類で行います。側面からも美しく盛り付けの様子を見せることが出来る為、アシェット・デセールにはガラス皿を好んで使用していると語るジル氏。球体状の方は高さを活かした立体的な盛り付けに、円盤状の方は皿の縁まで大胆に使用したワイドな盛り付けに仕上げて行きます。

完成したモンブラン・ソルベ・カシスは、アシェット・デセールらしいスタイリッシュな盛り付けながら、一目で「モンブラン」と分かる秀逸なデザインとなりました。マロン、クレームシャンティ、メレンゲが織り成すモンブランの味をベースに、マロンと相性の良いカシスや、ピーカンナッツ、パータ・シガレットなどのパーツを絡ませながら食べれば、様々なバリエーションの味わいが楽しめます。「クラッシックなレシピを現代的にアレンジする」という、ジル氏のパティシエ・スタイルが分かりやすく表現された一品です。
モンブランがベースになる為、まずはシャンティとメレンゲを皿に配置します。
メレンゲの上にはキャラメリゼしたピーカンナッツ、オレンジ、カシスコンフィをトッピング。
トッピングをサンドするように、もう一度シャンティを絞り出してフタをします。
一番トップにはバターとラム酒を混ぜ合わせたマロンペーストを立体的に絞ります。
円盤状の皿は縁まで大胆にマロンペーストを絞り、ワイドな仕上がりに。
マロンと相性の良いカシスのソルベは、クネルにしてマロンペーストの上に盛り付けます。
最後に仕上げとしてシャンティ、パータ・シガレット、マロンコンフィなどを飾り付けて完成。
円盤状のアシェット・デセール。横幅を最大限に利用してワイドで豪華なデザインに仕上げています。
球体状のガラス皿は高さを活かした立体的なデザインに。カシスのソルベは皿の下に盛り付けています。
サブレ・クラッカン・ショコラノワール・ソルベ・エキゾチック(Sable craquant Chocolat Noir sorbet exotique)
2作品目は「サブレ・クラッカン・ショコラノワール・ソルベ・エキゾチック(Sable craquant Chocolat Noir sorbet exotique)」。こちらも1作品目と同じくアシェット・デセールの作品となります。

メインとなるパーツは、サブレ生地でヴァローナ・マンジャリのクレムーをサンドしたもの。サブレ生地は、ポマード状にしたバターに各材料を混ぜ込んで作り、5mm厚に伸してからセルクルで抜いて、焼き色が均一になるように注意しながら焼成しています。サンドしているマンジャリのクレムーは、トンカ豆の香りをアンフュゼしたアングレーズソースをベースにしてマンジャリとしっかり乳化させて作ります。どちらも基本を大切にしたシンプルな製法のレシピとなります。

メインパーツの上にクネルにして乗せているのは、作品名にも記載のあるエキゾチックフルーツのソルベ。マンゴーピューレ、パッションピューレ、ココナッツピューレ、オレンジジュースの4種類の素材をベースにして、ライムとレモンのゼスト、ヴェルヴェーヌ(バーベナ)の香りをアンフュゼしたソルベ用のシロップを混ぜ合わせてから、ソルベティエール(シャーベットマシン)にかけて冷やし固めます。

ソースには、マダガスカル産バニラビーンズの香りをアンフュゼした生クリーム・牛乳と混ぜ合わせてじっくりと弱火で煮詰めたマンジャリのショコラショーを温かい状態のまま別容器に入れて添え付けます。ジル氏のパティスリーでは、実際にこちらのショコラショーを店頭販売しており、シーズンに合わせて様々なスパイスなどで香り付けをしているそうです。

ビターチョコレートとエキゾチックフルーツという相性の良い素材の組み合わせが1枚の皿の上で楽しめる作品。クレムーのねっとりした質感がマンジャリ特有の華やかな酸味を持つビターチョコレート感を強調し、エキゾチックフルーツのトロピカルな風味と口の中で良く混ざり合います。しっかりと硬めに焼き上げたサブレ生地のサクサク感は、クレムーとソルベのなめらかさとは対照的で、食感のアクセントに。温められたショコラショーのソースを上からかければ、冷たいデザートとの温度差も楽しむことができるなど、アシェット・デセールの特徴を存分に活かした作品です。
マンジャリのクレムーをサンドするサブレ生地を仕込む様子。5mm厚に伸してからセルクルで抜いて焼成。
こちらはマンジャリのクレムー。トンカ豆の香りをアンフュゼしたアングレーズをベースに仕込みます。
ソースとなるショコラショーは、クレムーと同じくマンジャリを使用。弱火で煮詰めて濃厚な質感に。
モンタージュの様子。サブレとクレムーはキャラメル・ムーを使用して接着します。
サブレでクレムーをサンドした後は、エキゾチックフルーツのソルベをクネルにして乗せます。
グリュエドカカオをまぶしたメレンゲやショコラを飾り付けて完成。ショコラショーは別容器に入れて添付。
シャルロット・オ・マロン・エ・オランジュ・コンフィ(Charlotte aux marrons et oranges confites)
3作品目は「シャルロット・オ・マロン・エ・オランジュ・コンフィ(Charlotte aux marrons et oranges confites)」。本作品は、子供の頃、祖母が良くシャルロット型を使用してお菓子を作ってくれたという想い出から考案されたプチガトーで、金属製のシャルロット型をそのまま容器にして組み立てられたユニークな一品です。ちなみに作品名の「シャルロット」は、「シャルロット型を使用したプチガトー」ということからネーミングしている為、ビスキュイ・ア・ラ・キュイエールを使用した一般的なシャルロットとは異なります。

こちらの作品は、季節に合わせてメインとなる素材を変えながら、ジル氏のパティスリーでも販売しており、今回の来日時は本国フランスでもちょうどマロンをメイン素材に使用しているということでした。実際に販売する際は、シャルロット型の値段も含めた価格設定で型ごとお客様に購入して頂き、後日、型を返品するとその分の金額を返金するというシステムで販売しているそうです。

作品の構成は、各パーツを複数層に重ねたヴェリーヌ仕立て。底から、マロンのサバイヨン(ムース)、クルミのビスキュイ、オレンジコンフィ、ノワゼットキャラメリゼ、もう一度マロンのサバイヨン(ムース)、バニラの香りを付けたクレームシャンティ、そして一番トップにヴェルミセル・マロンという順に配置されています。

作品内に2層使用されているマロンのサバイヨンは、卵に加熱したシロップを加えて泡立てたものをベースにして、マロンペースト、クレームシャンティ、ラム酒などを混ぜ合わせて作ります。日本ではパータボンブと呼ばれることが多い製法を用いたマロンのムースで、良く知られているサバイヨンとは異なり、白ワインは配合されておりません。

一番トップのヴェルミセル・マロンは、マロンペーストにバターとラム酒を混ぜ合わせてからモンブラン口金で絞り出したもの。小さいサイズのシャルロットには、平面的に絞り出してから冷凍してセルクルで丸く抜いたものを乗せ、大きいサイズのシャルロットには、直接絞り出します。

完成したシャルロット・オ・マロン・エ・オランジュ・コンフィは、マロンのサバイヨンのふんわりとした食感となめらかな口溶けが大変印象的。クレームシャンティやオレンジコンフィとのバランスも素晴らしく、マロンの味わいを引き立てます。たくさんの層から形成されている作品なので、ガラス容器など透明なデザートカップに盛り付けて層の美しさを見せてもおもしろい一品です。
子供の頃、祖母が良くシャルロット型を使用してお菓子を作ってくれたというエピソードから生まれたプチガトー。
本作品のメインとなるマロンのサバイヨンは、パータボンブをベースにして仕込みます。
シャルロット型を利用してヴェリーヌのように各パーツを複数層に重ねて仕上げて行きます。
小さなシャルロット型は一番トップにセルクルで丸く抜いたヴェルミセル・マロンを配置。
大きいシャルロット型は上から直接ヴェルミセル・マロンを絞り出します。
仕上げとしてマロンコンフィ、オレンジコンフィ、キャラメリゼしたヘーゼルナッツをトッピングして完成。
サクレ・クール・ショコラブラン・フランボワーズ(Sacré cœur chocolat blanc , framboises)
4作品目は「サクレ・クール・ショコラブラン・フランボワーズ(Sacré cœur chocolat blanc , framboises)」。本作品は、パリ・モンマルトルの丘にそびえ立つ「サクレ・クール寺院」をモチーフにしたアントルメ作品で、サクレ・クール寺院の丸いドーム状の屋根を作品のデザインに取り入れています。

本作品のメインとなるのは、ヴァローナ・オパリスのムース。アングレーズソースをベースにして、オパリス、生クリーム、ゼラチンでシンプルに仕込みます。このムースのポイントは、セミリキッドの状態に仕上げること。そうすることで食べた際に口溶けの良いなめらかな食感になるとジル氏は解説します。

センターには、ココナッツのダックワーズとフランボワーズのムースが埋め込まれています。ココナッツのダックワーズは、アーモンドプードルを使用せずにココナッツファイン、粉糖、メレンゲのみで作られている為、ココナッツの風味がダイレクトに感じられるパーツとなります。フランボワーズのムースは、30年前から使用しているというイタリアンメレンゲをベースにしたクラッシックなレシピ。柑橘系の風味を好むジル氏は、アクセントとしてライムのゼストを加えてフレッシュ感を演出します。

アントルメの底には、フランボワーズのクランブルを散りばめてから、センターでも使用したココナッツのダックワーズを敷き込みます。冷凍庫で冷やし固めた後は、仕上げとしてホワイトのグラッサージュでコーティングを行い、最後に赤とピンクのグラッサージュで模様を付けてからフランボワーズとショコラを飾り付けて完成。

オパリスらしい甘さを控えたホワイトチョコレートの味わい、フランボワーズの酸味、ココナッツのトロピカル感が見事にマッチした一品。白地に赤とピンクの模様を付けたアントルメなので、クリスマスケーキとしてもお勧めということです。
センターに入れるフランボワーズのムースは、イタリアンメレンゲをベースにしたクラッシックなレシピ。
メインとなるオパリスのムースは、アングレーズがベース。セミリキッドに仕上げてなめらかな質感に。
モンタージュはドーム状の型を使用して逆さ仕込みで行います。
仕上げとして、まずホワイトのグラッサージュでアントルメ全体をコーティング。
ホワイトのグラッサージュの上には、赤とピンクに色付けした2種類のグラッサージュで模様を付けます。
最後にフランボワーズとショコラを飾り付けて完成。クリスマスにも使える配色のアントルメ。
「サクレ・クール〜」の断面図。一番底とフランボワーズのムースの上にはココナッツのダックワーズが配置。
ケイク・ショコラ・オランジュ(Cake Chocolat Orange)
デモンストレーション最後の5作品目は「ケイク・ショコラ・オランジュ(Cake Chocolat Orange)」。今回の講習会では唯一の焼き菓子作品となります。

日本のパティスリーで販売されているケイクは、スタイリッシュなデザインのものが多く、デコレーションもバラエティー豊かで非常に興味深いと語るジル氏ですが、自分の作るケイクは、装飾などは一切行わずに焼いたままの状態で提供するのがジル氏のスタイル。本作品も例にもれず、シンプルに焼成したそのままの形に仕上げて行きます。

作り方も非常にシンプル。卵黄をベースにして糖類、粉類、ココアパウダー、溶かしバターなど、空気を含まないように注意しながら、少しずつビーターで繋ぎ合せるというもの。本作品は「ショコラ・オランジュ」なので、2016年9月から日本国内の市場で新発売されたヴァローナ・ドロップ・ショコラのブラックとミルク2種類を配合してチョコレートの味を強調し、さらにキューブ状にカットされたオレンジコンフィとオレンジゼストを配合してオレンジの風味付けを行います。

完成した生地は、型に入れた後に上部中央にポマード状のバターを一直線に絞ってからオーブンで焼成。こうすることにより、焼成の途中でケイク生地の上部にナイフで切れ目を入れなくても、綺麗な裂け目が入った状態に焼き上がります。焼成後は生地に温度計を差し込み、中心温度を確認。中心までしっかりと焼けている事を確認してから、熱いうちにグランマルニエをたっぷりアンビバージュして仕上げます。

近年、良く見られるしっとりした質感のケイクとは異なり、生地がしっかりとしたクラッシックな印象のケイクです。ジル氏自身も解説していたように、生地中にドロップ・ショコラを混ぜ込む事でチョコレートの味が強まり、オレンジの華やかな風味に負けないくらいしっかりと存在感を示します。たっぷりアンビバージュされたグランマルニエの香りも心地よく、伝統の中に高級感が漂うケイクとなりました。
ケイク生地は卵黄をベースにして糖類、粉類、バターなどの材料をミキサーで混ぜ合わて作ります。
全ての材料が混ざり合った後は、生地にムラが無いようにヘラで混ぜ直してから型に入れます。
上部中央にポマード状のバターを一直線に絞ってから焼成。綺麗な裂け目が入った状態に焼き上がります。
焼成後は生地に温度計を差し込み、中心までしっかりと火が入っている事を確認。
中心までしっかりと焼けている事を確認してから、熱いうちにグランマルニエをアンビバージュ。
装飾は一切行わず、シンプルに焼いたままの状態で提供するのがジル氏のスタイル。
ジル・マルシャル(Gilles MARCHAL)氏
1966年フランス・ロレーヌ地方生まれ。1984年にパティシエ、ショコラティエ、グラシエの国家資格を取得。「レストラン ジャン・バルデ」、「ホテル・クリヨン」などの名店に勤務した後、1994年、28歳の若さで「ホテル・プラザ・アテネ」のシェフ・パティシエに抜擢。さらに1999年より8年間に渡り、フランスのホテル最高格付け「パラス」の称号を誇る「ホテル・ル・ブリストル・パリ」でシェフ・パティシエを務める。2007年には「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のクリエイティブ・ディレクターに就任。そして2014年11月、パリのモンマルトルに自身の店「パティスリー・ジル・マルシャル」をオープン。最高峰のホテルやパティスリーで培った技術・知識・センスと、クラシカルなお菓子に現代風のアレンジを加えた独自の作風で、世界中の美食家を魅了し続ける。現在、世界で最も注目を集めるパティシエの一人。

サンエイト貿易
フランス・ヴァローナ社の最高級チョコレートやスペイン・SOSA社の製品を始め、洋菓子を中心とした高級製菓原材料の専門商社。「本物の価値ある商品をお届けする」ことを企業理念に、ヨーロッパを中心とした先見性のある高級洋菓子原材料を輸入販売し、製菓・製パン・料理業界の発展に貢献。

サンエイト貿易ホームページ
http://www.sun-eight.com/

 
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