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カンタン・ベイィー氏、冨田大介氏によるアンベール・ジャパン洋菓子講習会
じっとりとした暑い陽気も落ち着き始めた9月下旬、上質なマロン加工品メーカーとしてトップパティシエ達から熱い支持を受ける「アンベール・ジャパン」による洋菓子講習会が開催されました。

今回の講習会では、2013年クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーでフランスチームのキャプテンとして見事優勝に輝いたカンタン・ベイィー氏と、同大会の日本チームとしてチーム準優勝とチョコレート細工部門最優秀賞を受賞し、その後は実家である名古屋のパティスリー「カルチェラタン」のシェフとして活躍する冨田大介氏という国境を越えた豪華な2人を講師に迎えます。2人は2013年のクープ・デュ・モンドでの対戦をきっかけに知り合い、現在では製菓の枠を超えて親交を深めているということで、今回はまさに友情のコラボレーション講習会。

デモンストレーションではカンタン氏が4作品、冨田氏が3作品を担当。それぞれ自分の担当する作品でない時は、お互いにアシスタントとして作業をサポートします。まるで普段から同じ店で働いているのではないかと思わせるほどぴったりと息の合った2人の作業に、お互いを信頼しあう姿勢が感じられる素晴らしい講習会となりました。

開 催 日 2015年9月30日(水)
講 師 カンタン・ベイィー氏
冨田大介氏(カルチェラタン・シェフ)
主 催 アンベール・ジャパン株式会社
協 賛 池伝株式会社、タカナシ販売株式会社
ケーク・マロン・ベルガモット(Caka marrons bergamote)
マロン生地とベルガモット生地を組み合わせた焼き菓子「ケーク・マロン・ベルガモット(Cake marrons bergamote)」。本作品から4作品目まではカンタン・ベイィー氏のレシピとなります。

デモンストレーションでは、まずセンター部分となるケイク・マロン生地から仕込んでいきます。作り方はシンプルにシュガーバッター法。ビーターを使用して各材料を丁寧につなぎ合わせてから、最後に粉類を混ぜ合わせます。ケイク・マロンなので、生地中にはアンベールのマロンクリーム、マロンピューレ、マロンインシロップ・ブリジュア(シロップ漬けブロークン)が配合されています。さらにタカナシ乳業のクレーム・エペス(発酵クリーム)を配合して生地に重みを持たせます。完成した生地は、トヨ型の1/3程度まで流して冷凍庫で冷やし固めます。

ケイク・マロン生地を冷やし固めている間に、ケイク・ベルガモット生地を仕込みます。こちらもケイク・マロンと同じくシュガーバッター法で作ります。生地中には、ベルガモットのパウダー、コンフィチュールとシコリのベルガモットピューレを配合してベルガモットの風味をプラス。こちらにも生地の状態を調整する為、クレーム・エペスを配合します。

両方の生地が完成したところで組み立てを行います。まず先に冷やし固めておいたケイク・マロン生地をトヨ型から外し、そこにケイク・ベルガモット生地を型の1/3程度まで流します。次に先ほど型から外したケイク・マロン生地を隙間が出来ないようにしっかりと押し込んで配置します。最後に残りのケイク・ベルガモット生地でフタをしてオーブンで焼成。ポイントはセンターのケイク・マロン生地が解凍するまで常温で休ませてから焼成すること。この工程を行わないと、センターまでしっかりと火が通らないので注意が必要です。

焼成後は、生地が熱いうちにベルガモット果汁やコニャックなどを混ぜ合わせたシロップをたっぷりアンビバージュ。仕上げとしてマロンとチュイールを飾り付けて完成となります。飾り用のチュイールは、アンベールのマロンクリームをシルパットにそのまま伸ばし、オーブンで軽く火を入れて水分を飛ばしたもの。特に仕込みが必要ないので大変お手軽です。

完成したケーク・マロン・ベルガモットは、さりげないベルガモットの香りがマロンの風味を引き立てる味の構成。あくまでも主役がマロンになるように、バランス良く配合を調整したカンタン氏の見事な感覚が光ります。しっとり・どっしりとしていながらもパンの様にやや弾力が感じられるケイク・ベルガモットと、マロンを彷彿させるほくほくとしたケイク・マロンの2つの食感が楽しめるハイセンスな焼き菓子に仕上がりました。
マロン生地、ベルガモット生地共にシュガーバッター法で仕込みます。どちらの生地もクレーム・エペスを配合。
トヨ型を使用して2種類の生地を組み立てていきます。ベルガモット生地でマロン生地をサンドする構成。
センターには先に仕込んでから冷やし固めたマロン生地を配置。隙間が無いようにしっかりと埋め込みます。
焼成後は熱いうちにベルガモット果汁やコニャックなどを混ぜ合わせたシロップをたっぷりアンビバージュ。
飾り用のチュイルはマロンクリームをオーブンで軽く焼成したもの。焼成直後は自由に形を変形することが可能です。
ケーク・マロン・ベルガモットの飾り付けの様子。マロンのシロップ漬けと先ほどのチュイルをシンプルに組み合わせます。
赤いフルーツとマロンのフィンガー(Finger marrons fruits rouges)
小さなプチフールを4つ繋げたような独特の形をしたスティックタイプの作品「赤いフルーツとマロンのフィンガー(Finger marrons fruits rouges)」。

土台となるサブレのクランブルの上に赤い果実のコンフィチュールを絞り、そのコンフィチュールの周りをマロンのシャンティーで覆った作品構成。デコレーションとして、赤い果実のギモーブ、フランボワーズ、マロンのブロークンが添えられています。

サブレのクランブルは、生地を目の粗いグレーターにかけてそぼろ状にしてから焼成。焼成した後には、ヴァローナのドゥルセ、ひまわりオイル、ライスパフを絡めて4つの円が連なった型に敷きつめて固めています。その上に配置する赤い果実のコンフィチュールは、シコリのフランボワーズピューレとグリオットピューレに砂糖、ペクチン、レモン果汁を加えて作ります。使用する際にはミキサーにかけて状態をなめらかにしてからサブレのクランブルの上に絞ります。コンフィチュールを覆うマロンのシャンティーには、アンベールのマロンペーストとマロンクリームを使用。生クリームと合わせてほんのりとラム酒の風味を効かせます。

赤いフルーツの酸味とマロンの風味をクリームがやさしく包み込む繊細な味わいの作品。力強くマロンの風味が感じられるようなガトーではありませんが、赤いフルーツのコンフィチュールがマロンの存在感を見事に引き出しています。土台となるサブレのクランブルは、サクサクとした食感のアクセントに。さらにコンフィチュール中に配合されたフランボワーズの果実によるプチプチ感も楽しめます。後味として感じられるドゥルセの香ばしい風味も秀逸。小さなガトーですが、それぞれの素材の良さをしっかりと閉じ込めた作品です。
土台となるサブレのクランブルは目の粗いグレーターにかけてそぼろ状にしてから焼成。
焼成後はドゥルセ、ひまわりオイル、ライスパフを絡めてから型に敷きつめて冷やし固めます。
冷やし固めたサブレのクランブルは側面に金粉と粉糖を混ぜ合わせたものを刷毛で塗り、色味と質感を調整。
サブレのクランブルの上には赤いフルーツのコンフィチュールを絞ります。フルーツの酸味がマロンを引き立てる役割。
さらにその上にはマロンのシャンティーを。マロンペーストとマロンクリームに生クリームを合わせてラム酒の風味をほんのり効かせています。
仕上げとしてフランボワーズ、マロンのシロップ漬け、赤いフルーツのギモーブを飾り付けて完成。
チチ・オー・マロン(Le Titi aux marrons)
マロンにトロピカルフルーツとバニラを組み合わせたアントルメ作品「チチ・オー・マロン(Le Titi aux marrons)」。

作品の構成は、バニラのシュトローゼルを底生地にして、クレーム・ヴァニーユ、ビスキュイ・ノワゼット、クレーム・マロン、もう一度クレーム・ヴァニーユ、そして一番トップにパイナップルのマーマレードの順に配置されています。側面を帯状に囲んでいるのは、センターにも使用されているビスキュイ・ノワゼットです。

底生地となるバニラのシュトローゼルは、バニラスティックと転化糖をペースト状にしたものを配合してバニラの風味を効かせます。その上に配置されるクレーム・ヴァニーユは、バニラの香りをアンフュゼしたココナッツピューレとコンデンスミルクに全卵などを加えて炊き上げてから、泡立てた生クリームを混ぜ合わせて作ります。分かりやすく例えるとバニラとココナッツのクレーム・ディプロマットといった印象のパーツです。さらにその上に配置されるクレーム・マロンは、マロンピューレとマロンペーストを牛乳で伸ばしてから、全卵などを加えて炊き上げたマロン風味のクレーム・パティシエールになります。

作品の一番トップとなるパイナップルのマーマレードは、水あめと砂糖で作ったキャラメルにシコリのマンゴーピューレとパッションピューレ、ダイス状にカットしたパイナップルなどを加えて煮詰め、ペクチンとゼラチンで固めたもの。円盤状の型に流してから冷凍庫で冷やし固めてアントルメのトップに飾ります。

マロンといえば秋冬の印象が強い素材ですが、夏を連想させるトロピカルフルーツとも相性の良さを感じることが出来る作品に仕上がりました。各パーツに様々な形で使用されているバニラの甘く豊かな香りが作品全体をリッチに包み込みます。クリーム系のパーツが多く配置されているので全体的になめらかな食感となっており、風味の良い作品の特徴をさらに引き立てます。
ビスキュイ・ノワゼットは1cm厚のカードルに伸ばしてから焼成。焼成後は使用するサイズに合わせてカット。
トップとなるパイナップルのマーマレード。キャラメルにトロピカルフルーツのピューレやパイナップルダイスなどを加えて煮詰めていきます。
煮詰めた後はペクチンとゼラチンを加え、円盤状の型に流してから冷凍庫で冷やし固めます。
各パーツの準備ができたところでモンタージュ。上の画像はビスキュイ・ノワゼットとクレーム・マロンを配置しています。
その上にはクレーム・ヴァニーユをすり切りまで流してから冷凍庫で冷やし固めます。
冷やし固めた後は側面のビスキュイに粉糖をふりかけて生地の色味と質感をコントロール。
トップとしてパイナップルのマーマレードを配置。表面は透明のグラッサージュでコーティングしています。
最後にキャラメリゼしたナッツやチョコレートなどを飾り付けて完成。マロンにトロピカルフルーツとバニラを組み合わせたアントルメ。
マロンのタルトタタン風(Tarte rustique marrons pommes facon tatin)
カンタン氏最後の作品は、伝統的なフランス菓子タルトタタンとマロンを組み合わせた「マロンのタルトタタン風(Tarte rustique marrons pommes facon tatin)」。

ヘーゼルナッツの風味を効かせたサブレ生地をタルトの器にして、ミキュイ・オー・マロン(マロン生地)、タタン風リンゴ、マルカルポーネのシャンティーの順にパーツを配置。一番トップには、シロップに漬け込んだスライスリンゴを敷き詰め、仕上げとしてタルト内にも配置されているマルカルポーネのシャンティーをクネルにして乗せています。タルト内が複数の層から構成されている為、一般的なタルトに比べて背の高い仕上がりになります。

タルト内の一番底生地となるミキュイ・オー・マロンは、マロンペースト、粉糖、卵白、バターをハンドブレンダーでシンプルに繋ぎ合わせて作り、予め空焼きしておいたタルトに流してから焼き上げます。焼成後の仕上がりはフィナンシェのような質感の生地になります。その上に配置されるタタン風リンゴは、砂糖とバターと一緒にペースト状になるまでじっくり煮詰めてからミキサーにかけたリンゴと、キャラメリゼしたダイス状のリンゴを混ぜ合わせたパーツ。異なる2種類の質感に仕上げたリンゴが楽しめということで、リンゴパイのフィリングとしても適しているとカンタン氏は解説します。

タルト上面のマルカルポーネのシャンティーは、生クリームとマスカルポーネを混ぜ合わせたものを一晩寝かしてからミキサーで泡立てて使用。パレットナイフを使用してタルトのすり切りまで入れて、スライスリンゴの土台になるようにきれいに表面を馴らします。そしてその上を覆うようにして螺旋状に敷き詰められたリンゴのスライスは、「マンザナ」という青りんごのリキュール、水、砂糖で作ったシロップに一晩漬け込んだもの。リンゴのフレッシュ感を損なわない程度の浅漬けに仕上げています。

完成したマロンのタルトタタン風は、タタンのキャラメル感・香ばしさが全面に感じられる味わいをイメージしていましたが、試食品を食べてみるとマロンの風味がタタンに負けないくらいしっかりと感じられる事に驚かされました。マロン、タタン、タルトと香ばしいパーツが続く中、マルカルポーネのシャンティーのクリーミー感が作品全体をやさしくまとめ上げます。試食品にはリンゴのシロップ漬けは乗っていませんでしたが、この味わいにリンゴのフレッシュ感が加わるとどのように味が変化するのか、是非一度食べてみたいものです。
背が高いタルトなので焼成中に生地が内側に倒れないようにしっかりとフォンサージュ。
タタン風リンゴの仕込み風景。ダイス状のリンゴとペースト状にしたリンゴを混ぜ合わせることで2種類の質感が楽しめます。
ミキュイ・オー・マロン(マロン生地)は事前に空焼きしたタルトの中に流してから焼成。
ミキュイ・オー・マロンの焼成後は先ほどのタタン風リンゴをタルトの中に詰めていきます。
その上にはマルカルポーネのシャンティーをすり切りまで入れて表面を平らに馴らします。
タルトの表面を覆うようにシロップ漬けのリンゴスライスを螺旋状に敷きつめます。
仕上げとしてタルト内にも配置されているマルカルポーネのシャンティーをクネルにして乗せて作品は完成。
ポム・ヴェルト・マント(Pomme Verte Menthe)
5作品目からは冨田大介シェフのレシピがスタート。冨田シェフ最初の作品は、青リンゴとミントを組み合わせた色鮮やかなヴェリーヌ「ポム・ヴェルト・マント(Pomme Verte Menthe)」。こちらの作品は、2015年にフランスで配布されたシコリ社のレシピブック掲載用に考案したというもので、夏頃までは冨田シェフの店に植えられていたミントを活用して、実際に店でも販売をしていたそうです。

作品構成は、一番下からダイス状のパートシュクレ、青リンゴのババロワーズ、青リンゴのジュレとコンポート、ミントのババロワーズ、そして一番トップが青リンゴのナパージュとなります。デコレーションには青リンゴの枝と葉をイメージしたチョコレートが飾られています。

ダイス状のパートシュクレは、すぐ上に配置されるババロワーズからの吸湿を防ぐ為、焼成後にミルクチョコレートとカカオバターを混ぜ合わせてコーティング。ヴェリーヌの中にサクサクした食感を閉じ込めます。ミントのババロワーズは、ベースとなるアングレーズソースにミントの香りをアンフュゼしてから、泡立てた生クリームを合わせてふんわりと仕上げます。青リンゴのジュレとコンポートには、それぞれシコリの青リンゴピューレとリンゴキューブを使用。ヴェリーヌの真ん中に配置して、青リンゴらしい色合いを演出します。

完成した作品は、思わず手に取りたくなるような大変可愛らしいヴェリーヌとなりました。枝と葉をイメージしたプラックショコラをシンプルに飾り付けるだけで、丸い容器を青リンゴに見せてしまう冨田シェフのセンスが光ります。メインに使用されている素材が青リンゴとミントなので、香り抜けの良い爽やかな味わいが特徴的。ただしあくまでも本作品の主役は青リンゴ。青リンゴの良さを引き出すように計算されたミントの使い方には、受講者の皆様も感心していたことでしょう。
ヴェリーヌの底にはチョコレートとカカオバターでコーティングしたダイス状のパートシュクレ。食感のアクセントに。
パートシュクレを包むように青リンゴのババロワーズを絞ります。青リンゴ特有の爽やかな風味をクリーミーなババロアに閉じ込めました。
その上には青リンゴのジュレとコンポートを配置。クリアなジュレが一層入るだけで瑞々しい印象に仕上がります。
ジュレとコンポートの上はミントのババロワーズ。青リンゴの風味を邪魔しない繊細なミントの香りが特徴。
一番トップにはグリーンのナパージュを少量流します。青リンゴらしい色彩にする為、少量の色粉で色付けしています。
完成したポム・ヴェルト・マント。シンプルながら一目で青リンゴを連想させる秀逸なデザイン。
タルト・マロン・カフェ(Tarte Marron Cafe)
冨田シェフの2作品目はマロンとコーヒーを組み合わせたタルト作品「タルト・マロン・カフェ(Tarte Marron Cafe)」。

器となるタルトには、コーヒーパウダーとトラブリ・コーヒーエキスを加えて生地中にコーヒーの香りをプラス。生地はサブラージュをして作りますが、冷たいバターでも簡単に細かく粉砕することが出来るので、冨田シェフはロボクープを愛用しているそうです。

タルト部分の中身は3層のパーツで構成されています。一番下はガルニチュールとしてキャラメリゼしたヘーゼルナッツのアッシェとアンベールのマロンインシロップ・ブリジュア、その上にはガルニチュールを覆うようにマロンとショコラのクリーム、一番トップがヘーゼルナッツのクリームとなります。
マロンとショコラのクリームは、アングレーズソースをベースにアンベール・マロンクリームとミルクチョコレートを混ぜ合わせたもの。隠し味として少量のトラブリ・コーヒーエキスが配合されており、コーヒーの香りをさりげなく演出します。トップのヘーゼルナッツのクリームには、冨田シェフ自家製のヘーゼルナッツペーストを使用。ヘーゼルナッツのローストを強めにしてからペースト状にすることでシェフ好みの香ばしい風味に仕上げられています。

タルト部分が完成したところで事前に仕込んでおいたクレーム・ヴァニーユをタルトの中央上部に乗せます。こちらはアングレーズソースをベースにしてバニラペーストを加えて固めたシンプルなパーツです。そしてこのクレーム・ヴァニーユを取り囲むように、泡立てた生クリームとアンベール・マロンクリームを混ぜ合わせたクリームを絞り、作品は完成となります。

マロンとコーヒーの風味の後にヘーゼルナッツの香ばしさとバニラの甘い芳香がふわっと駆け巡る、香り豊かな作品です。口当たりなめらかなクリーム系のパーツが続く中、ガルニチュールとしてタルト内に配置されているキャラメリゼしたヘーゼルナッツが程よい食感のアクセントになり、存在感を示します。素材の組み合わせの相性も良く、とてもバランスの取れた味わいのタルトに仕上がりました。
タルト生地はロボクープを使用してサブラージュ。冷たいバターでも簡単に細かく粉砕することが出来ます。
空焼きしたタルトの内側にはチョコレートとカカオバターを混ぜ合わせたものでピストレをして吸湿を防ぎます。
タルトにはまずガルニチュールとしてキャラメリゼしたヘーゼルナッツのアッシェとマロンのブロークンを入れます。
次にガルニチュールが隠れる程度までマロンとショコラのクリームを流し、一旦冷凍庫で冷やし固めます。
その上に流すのはヘーゼルナッツのクリーム。アングレーズをベースにヘーゼルナッツの風味を加えています。
こちらは冨田シェフ自家製のヘーゼルナッツペースト。ローストを強めにした香ばしい風味がシェフのこだわり。
タルトの中央上部に乗せられているのはクレーム・ヴァニーユ。豊かなバニラの風味が楽しめるパーツ。
クレーム・ヴァニーユを取り囲むようにマロンのシャンティーを絞って完成。香り豊かなタルト作品。
マロン・オランジュ(Marron Orange)
冨田シェフ最後の作品は、マロンとオレンジを使用したパーツを複数層に重ね合わせたアントルメ作品「マロン・オランジュ(Marron Orange)」。

作品構成は、ビスキュイ・マロン、甘夏のコンフィチュール、オレンジとマロンのムースリーヌの順に並べた層を2段重ねた後、マロンのビスキュイでフタをして、最後に仕上げとしてオレンジとマロンのムースリーヌとマロンのシャンティーを組み合わせたクリームを絞っています。

本作品のベースとなるビスキュイ・マロンは、講習会の前日に行われた準備でカンタン氏がこのパーツを大変気に入ったということから、カンタン氏が仕込みを担当することに。作り方は、砂糖と全卵にバターで伸ばしたアンベール・マロンペーストをダマにならないように少量ずつ加えてから粉類を混ぜ合わせ、最後に常温程度まで温めた生クリームとハチミツを加えていくというもの。完成した生地はシート状に伸ばしてから、ローストしたアーモンドアッシェを表面に散らして焼き上げます。マロンペーストの配合量が多いこともあり、焼成後の生地は重くどっしりとした質感。食感もねっとりと濃厚な仕上がり。

ビスキュイ・マロンの上に配置する甘夏のコンフィチュールは、前作品のヘーゼルナッツペーストと同じように冨田シェフの自家製。甘夏は冨田シェフの祖母の家でたくさん収穫できるそうで、コンフィチュールにして大量に保存しているということです。加糖は控えめにして甘夏本来の風味と苦味を活かした仕上がりにしています。オレンジとマロンのムースリーヌは、オレンジジュースやオレンジピューレなどを加えて炊き上げたパティシエールに、バターとマロンピューレを加えたもの。作り方はスタンダードなムースリーヌと同じ要領です。

カンタン氏も強い興味を示したビスキュイ・マロンの魅力をオレンジと甘夏が引き立てるといった印象の仕上がり。デモンストレーションの最中に「夏向けの爽やかさとは違った重みのあるメニューを意識した」という冨田シェフの解説の通り、重めのビスキュイとムースリーヌを組み合わせたどっしりと食べごたえのあるガトーですが、オレンジと甘夏の爽やかな風味と苦味により、飽きのこない味わいになっています。秋冬の寒い季節に食べたくなるような作品です。
ビスキュイ・マロンは事前準備でこのパーツを気に入ったカンタン氏が仕込みを担当。
完成したビスキュイ・マロン。表面にはローストしたアーモンドアッシェが散らしてあります。
こちらはオレンジとマロンのムースリーヌを仕込む様子。ロボクープを使用してマロンピューレなどを繋ぎ合せます。
冨田シェフの祖母の家で収穫した甘夏で作ったコンフィチュール。加糖を抑えて甘夏本来の風味と苦味を活かします。
マロン・オランジュのモンタージュ。複数層で構成されるので重量を量りながら丁寧に仕上げていきます。
仕上げにはオレンジとマロンのムースリーヌとマロンのシャンティーを組み合わせたクリームを絞ります。
カンタン・ベイィー氏(Quentin Bailly)
2000年フランスの三ツ星レストランPIC(ヴァランス)に入社。2012年パティスリー・フィリップ・リゴロに入社。2013年クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーでフランスチームのキャプテンとして見事優勝。現在はパティスリー・フィリップ・リゴロを退社し、コンサルタントとして活動。
冨田大介氏(カルチェラタン・シェフ)
2000年オテル・ドゥ・ミクニに入社。2005年エーグル・ドゥースに入社。のちに同店のスーシェフを務める。2008年シャルルプルースト杯総合優勝。2013年クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーの日本チームとしてチーム準優勝とチョコレート細工部門最優秀賞を受賞。その後、2014年にエーグル・ドゥースを退社し、現在は実家である名古屋のパティスリー「カルチェラタン」のシェフとして活躍。
アンベール社について
創設の1920年以来、フランス・リヨンの南ローヌ・アルプ地方にあるアルディッシュ県の栗の名産地「オブナ」に本社工場を構える歴史あるマロン製品メーカー。栗に含まれている苦味成分タンニンを極力取り除き、風味を引き出す為にバニラビーンズの使用を抑えて作られたアンベール社の製品は、世界各国のトップパティシエから指示を受けています。
⇒アンベール社取扱い商品一覧
シコリ社について
1962年フランスの南西部リヨン地域の果樹農家による協同組合を母体に活動を開始して以来、50年以上の歴史があるフランス大手フルーツ生産者。現在は1150件の農家が加入し、計約570ヘクタールにおよぶ果樹園で年間約13000トンものフルーツを生産。最適なテロワールで栽培されたフルーツを原料に高品質なフルーツ加工品を世界中に提供しています。
⇒シコリ社取扱い商品一覧
 
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