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GIANLUCA FUSTO 特別来日講習会
時代の最先端を行く商品を数多く生みだし、各国のパティシエ達から絶大な支持を集めているヴァローナ社。
4月のYANN DUYTSCHE(ヤン・ドゥイッチ)氏の講習会に引き続き、6月にはイタリアよりGIANLUCA FUSTO(ジャンルーカ・フュスト)氏が来日し、エコール・ヴァローナ東京にて講習会が開催されました。
ジャンルーカ氏は料理人からスタートし、イタリア料理界の巨匠アイモ・モロニ氏との出会いをきっかけに製菓の道へと歩み出します。その後一流の才能を開花させ、ヴァローナ エコール・デュ・グラン・ショコラの一員として活躍されました。彼にとって新しい素材や食感への探究心に『限界』という文字は無く、常に進化し続けている彼のパティスリー。そして特筆すべきはその創造性の幅広さにあります。いかなるものにも好奇心を常に持ち、過去の経験から得た知識・伝統・技の全てをフル稼働させ、限界の無い創造力を生み出します。
今回は伝道師の名にふさわしく、プランニングやノウハウの指導で必須となる厳密なルールに基づいた理論や、技術だけでは無い、その先にあるパティスリーとしての完成形を余す所無く見せて頂きました。
LUCENTE NUOVO(ルチェンテ・ヌォーヴォ)
まずは『LUCENTE NUOVO(ルチェンテ・ヌォーヴォ)』と『DOLCE EMOZIONE(エモーション・ドゥース)』の2品から。イタリアでは固めのタルト台を使用したお菓子が多いとの事ですが、『噛む』という動作は口の中で味わいを生み出すためには必須の作業。更に口内の温度で素材を温める事で味わいとアロマが生まれてきます。それを前提にサブレやビスキュイ・ダックワーズなど、『生地』という噛む事が必須な『味わう素材』を必ず構成の中に組み込む様にしているそうです。その流れで仕込みの段階で素材に香りを閉じ込めておき、噛む事でそのアロマを口の中で感じ取れる様、ルセットを組んでいるとの事。今回はダックワーズ生地の砂糖に柑橘の皮を加え、アロマを移してから仕込む流れとなっています。
そして驚きなのが、2品とも構成・使用する生地は全く同じですが、最終的には別のお菓子へと変貌を遂げているのです。更にこれだけでは終わりません。プランニングやノウハウの伝達において、自分が考えたものを人に伝え、同じものを常に安定した状態で別の職人に仕込んでもらわなければ意味を成しません。そのため、仕込みの際は環境設定をし、素材そのものの温度、仕込み時の材料を合わせるタイミング等を厳密にルール化しているとの事。そして構成の際も、全体に対して何パーセントをムースにするのか、クレムーにするのか、と数値に出しておくそうです。こういった緻密な準備を踏まえ、この2品は効率的に且つ分かりやすく、そして食べた者へ驚きと喜び・笑顔を生み出せる、全てにおいてパーフェクトなお菓子となっているのです。
ではそれぞれの構成を見て行きましょう。『LUCENTE NUOVO』はイタリア語で『輝く未来・新しい光』を意味しています。ヨーグルトとマンダリンのムースに柑橘系のジュレ。ダックワーズのしっとり感とビスキュイ・サブレの歯切れ良い食感が全体をシャープに引き締めます。『新しい』という言葉のもと、フルーツとチョコレートを素材にした新しい味覚を考えたかったとの事。どこへ旅しても必ず様々なものを試食し、新しい素材を貪欲に求める姿勢を持つジャンルーカ氏は、日本で食べたマンダリン(みかん)にも大変心を打たれたそうです。この美味しさをチョコレートと合わせて最高のものを作りたい!その純粋な気持ちが今回のお菓子へと生まれ変わったのです。
そのマンダリンと組み合わせたのがホワイトチョコレート(オパリス34%)とヨーグルト。マンダリンとヨーグルトの爽やかな酸味の中に、オパリスの丸みのあるミルク感が素材を更に引き立てます。そして生地とグラサージュ以外はグラニュー糖を使用していないので、それぞれの素材の持ち味がとても活かされているのが特徴です。
DOLCE EMOZIONE(エモーション・ドゥース)
次に『DOLCE EMOZIONE』は先にご説明した『LUCENTE NUOVO』と構成・生地は一緒なのですが、実際に試食してみると全く別のお菓子である事がとても実感できます。こちらはヘーゼルナッツ・チョコレート(オパリス34%ニアンボ68%)・マンゴーの組み合わせで構成されており、素材から見ても全体的に濃厚なイメージを与えます。ヘーゼルナッツとマンゴーは非常に相性の良い組み合わせで、今回もこれをメインに考えたとの事。センターにはマンゴーベースのチョコレートのクレムーを入れ込み、間にパール・クラッカン・キャラメリアを入れる事で食感を演出します。そしてパッションとマンゴーのジュレにオパリスベースのムース・オパリス・ノワゼットが続きます。ナッツとマンゴーの濃厚な風味が非常に良く合い、パール・クラッカンのアクセントが入る事で『LUCENTE NUOVO』とは全く違った味わいを楽しめます。
SEMPLICEMENTE NOCCIOLA(サンプルモン・ノワゼット)
3品目は『SEMPLICEMENTE NOCCIOLA(サンプルモン・ノワゼット)』。生地にもムースにもヘーゼルナッツがふんだんに使用された、ナッツの風味溢れるアントルメです。グアナラ・ラクテ41%を使用したアパレイユには、そのまるみのあるまろやかなチョコレートの特性と、それに合う(似ている)素材と言う事で、マスカルポーネが使用されています。そして土台のサブレ、センターのジョコンド、表面のシャンティにそれぞれにヘーゼルナッツ風味が忍び込み、マスカルポーネのまろやかさとナッツの香ばしさが非常にマッチした仕上がりとなっています。ちなみにセンターに使用されているジョコンド生地は、ジャンルーカ氏にとって好きな生地でもあり嫌いな生地でもあるそう。これは生地の仕上がりが仕込みの時間によって左右される為、との事。つまり、仕込んだばかりの生地はメレンゲの保形性がしっかりしているが、天板に伸している内にどんどん生地が死んでいってしまい、ベストな状態をキープするのが難しいためであるから。ましてやそれを自分以外の職人が行うとなると、人によって仕上がりに差が出来かねません。そこで常に安定した生地が仕上がる様に考えられたのが今回のルセット。まず粉類(粉とナッツのパウダー)・転化糖・グラニュー糖・全卵の半量をビーターを使用して立てます。油脂分が多いので、ホイッパーで泡立てると潰れやすい目の粗い泡になってしまいますが、ビーターを使用する事で大きく空気を取り込み、しっかりした泡になるそう。そして別途メレンゲを立てて最終的に2つの生地を合わせる事で、保形性の高い生地が仕上がります。そして気になるのが転化糖の存在。本来であればビスキュイ・ジョコンドには使用しませんが、添加する事で@生地の保水性を高め安定させる A焼き上がった状態でも水分を保持するのでしっとり焼き上がる Bきれいな焼き色が付く、この3点の効能が発揮されます。こういったジャンルーカ氏の緻密な研究により、誰が仕込んでも美味しく且つ安定した生地が仕上がるのです。
MURA BERGAMO(ムーラ・ベルガモ)
4品目の『MURA BERGAMO(ムーラ・ベルガモ)』はジャンルーカ氏がヴァローナ社にいた当時のお客様からの依頼で開発されたケーキとの事。『BERGAMO(ベルガモ)』とはイタリアにある村の名前で、この村を象徴したお菓子を!とのリクエストを受けて考えたそうです。この村は旧市街地を囲む様に壁(MURA)が存在しており、その村の象徴でもある壁をイメージして開発したとの事。ノワゼットとチョコレート(P125 クール・ド・グアナラ)それぞれ2種のケークに、ラム酒のきいたパート・ダマンドを挟み焼き込んだ、ずっしりと濃厚なケークです。こちらも間にパール・ショコラが入っており、全体のしっとりした食感にカリッとした歯触りという『遊び』が盛り込まれています。そして仕込みではジャンルーカ氏のとっておきの秘策が。通常、型離れをよくする為にバターを塗って小麦粉をはたきますが(ブールファリネ)、ここではヘーゼルナッツのパウダー・コーンスターチ・小麦粉を合わせたものをはたいています。この様に一部をナッツに置き換える事で、一層美味しさがプラスされるとの事です。こういった細やかな所にまで味を追求するその姿勢。普段の当たり前の作業を見直す良いきっかけになったのではないでしょうか。
BLACK SENSATIONS(ブラック・センセーション)
最後はジャンルーカ氏とっておきの『BLACK SENSATIONS(ブラック・センセーション)』。このルセットを考えた当時はちょっと変わった部類のお菓子だったとの事ですが、それから数年経った現在でも同じルセットとデコレーションで作り続けているそう。しっかりとした塩気のあるビスキュイ・ショコラのタルトにグリュエ・ド・カカオを液体にアンフュゼ(香りを移す作業)させてオパリスと共に仕込まれたムース。トップにはグアナラ70%を使用した『なめらか・グアナラ』という構成となっています。ここでジャンルーカ氏からお願いが。チョコレートを使用したお菓子を考える際、必ずその原料であるカカオ豆が作られている背景にも思いを馳せて欲しいとの事。カカオ豆が作られている地域は社会情勢が不安定な地域も多いのが現状です。素材を簡単に使うのではなく、そういった地域でカカオの生産に携わった農園の方々全てを尊重し、感謝の気持ちをもって扱って欲しいとおっしゃっていました。
講習会まとめ
現在は主にプランニングや技術の伝道師として世界中を駆け巡っているジャンルーカ氏。『人に伝える』という事は厳密なルール無くしては成り立ちません。それは自分自身に対してもそうです。ブレの無い芯を持ち、自身が確信を持って取り組んでこそ成り立ちます。また、イタリアでは労働の長さに合わせて人件費が支払われるので、効率化を求めるユーザーが非常に多いとの事です。そういった要望を踏まえつつ、且つお客様に驚きと感動を与えられるアイテムを提案するには、単に自分の理想だけで考えるわけにはいきません。どんなレベルの職人が仕込むのか?効率良く仕上げられるか?原価は?どんな客層なのか?と現場のあらゆる要望にも同時に応えていかなければなりません。そして氏は続けます。これからのパティスリー界を支えて行くのは若い世代のパティシエ達。自分の持つ信念、そしてパティシエとしての理念を積極的に後世に伝えて行きたいともお話されていましまた。
作り手、そして食べる者が求めるお菓子は時代の流れと共に変化してきます。歴史の中で積み重ねられてきた古典菓子を、時代の流れと共にどう変化させるか、残して行くか。その構築に限界はありません。正にその事が証明された1日でした。
GIANLUCA FUSTO(ジャンルーカ・フュスト)氏
GIANLUCA FUSTO(ジャンルーカ・フュスト)氏
イタリア料理界の巨匠Aimo MORONI(アイモ・モロニ)氏との出会いをきっかけに、料理から製菓の道へ。これを機にパティシエとしての才能を開花させ、ヴァローナ エコール・デュ・グラン・ショコラの一員として活躍。フレデリック・ボウ、ヤン・ドゥイッチ、フィリップ・ジブルらと5年間を共にし、ショコラに関する造詣を深め、その技術を洗練させていきます。現在は伝道師としてミラノ・パリ・ロンドン・ニューヨーク等世界中を駆け巡り、情熱的かつ厳格に豊かなノウハウを伝えている。
ヴァローナ
ヴァローナ(VALRHONA)社について
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。 カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。 超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、 その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。 2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。 さまざまな研修プログラムが用意されている。

ヴァローナ・ジャポン
http://www.valrhona.co.jp/
エコール・ヴァローナ 東京
http://www.valrhona.co.jp/ja/valrhonacontent/ecolevalrhonatokyo.htm
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