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ステファン・ルルー チョコレート技術講習会
この度、世界のパティスリー業界より熱い支持を受けているベルギーのチョコレートメーカー『ベルコラーデ』より、世界屈指の技術を有する『ステファン・ルルー氏』が来日され、プロユーザー向けの講習会が開催されました。
ステファン氏はMOF(フランス最優秀職人)の称号を有すパティシエの一人であり、WPTC(ワールド・ペストリー・チャンピオンシップ)ではチョコレート・ショーピース部門で2度にわたり個人優勝を果たした、今まさに注目すべき人物でもあります。
今回はノリエットの永井紀之シェフの通訳のもと、ステファン氏自らデモンストレーションをして頂きました。早速その充実した講習会の内容を、簡単にではありますがご紹介させて頂きます。
「ステファン・ルルー」チョコレート技術講習会ラインナップ
シングルプランテーションガナッシュ
仏手柑(ぶっしゅかん)のチョコレート
ボンボンヌガー&フランボワーズ
ボストックショコラ
キャレマンフランボワーズ
カヤン45%
ババ-ボウル・プラリネ・アマンデ・オランジュ・パッション
トップには艶やかなグラサージュをまとったプラリネムース。まるでイースターエッグを彷彿とさせるフォルムが何とも愛らしいです。更にその下には溢れんばかりのシロップを抱き込んだブリオッシュ。
オレンジとパッションの爽やかな味わいが口いっぱいに広がります。
ここで早速シェフのこだわりポイントが。ムースで合わせる生クリームは口当たり・食感重視の為、軽さが出てしまうスイップ(ホイップマシーン)は使用しないとの事。
そしてムースを支えるブリオッシュの仕込みでも、一次発酵の後に溶かしバターを加えていました。これは後入れの方がシェフの好みのテクスチャーになるからとの事。発酵によってどう味がのっていくかを追求した結果故の製法であるそうです。また、ババはシロップの味をストレートに出す事が目的の為、いかに生地がシロップを抱き込めるか・それをどれだけ保てるかが重要なので、それを第一に今回のルセットを考えたとの事でした。
ババ-ボウル・プラリネ・アマンデ・オランジュ・パッション
ジャバネーズ・オランジュ・プラリネ
プラリネを土台にジョコンド、オレンジ風味のクレーム・オ・ブールをサンドしていき、トップには美しいチョコレート飾りを施したケーキです。
ここでは大量のオレンジを使用していますが、シェフ曰く、オレンジは表面の皮も内側の白い部分も薄い物がベストとおっしゃっていました。そしてやはり気になるのが素材そのものの品質。現代ではシーズンに関係なく、どんなものでも年間を通して手に入る様になっています。しかしやはり一番美味しいタイミングは旬のもの。その旬に合わせて自然に収穫されたものを使用するのがベストとの事でした。ただタイミング的に品質の良い物が得られなかった場合は、有機栽培で安心して食べられる、こだわりの素材を自ら求めて行くべきともお話されていました。
ジャバネーズ・オランジュ・プラリネ
バンブー・バー・フランボワーズ・ユズ
『バンブー』という名の通り、竹の形をしたモールドで仕込んだバータイプのボンボンショコラ。
艶やかに・メタリックにピストレされたバンブーの中には柚子のガナッシュ。その上にはフランボワーズのパートドフリュイが忍ばせてあります。
ここでのポイントはガナッシュの仕込み時のバターを加えるときの温度。合わせた時の温度によって口に入れた時、バターの油脂分を強く感じてしまう場合もあり、ただ材料を合わせていくのではなく、作業工程ごとの温度管理が重要との事でした。
ちなみに今回使用したモールドは特注品との事。チョコレートを外した後のモールドの処理の仕方も、シェフ自ら実践して下さいました。
バンブー・バー・フランボワーズ・ユズ
ガナッシュ・レ・ダマンド・シトロン・バヌアツ
ヘーゼルナッツがデコレーションされたショコラの中は、アーモンドミルクとシトロンが香るガナッシュ。ナッツの香ばしさにほのかなシトロンが香り、その後アーモンドの風味が口いっぱいに広がります。
ここでは材料の『アーモンドミルク』に受講者の方もとても興味津々で、素材そのものの詳細や取り扱いメーカー等、熱心に質問されていました。
そしてこのアイテムだけではなく、ガナッシュの仕込み時によく登場するのが『ソルビトールパウダー』。
これを使用する事によって、ガナッシュの水分と油分のバランスが良くなり、ベストな状態が長持ちするとの事でした。このソルビトールパウダーにもやはり質問が集中していました。
ガナッシュ・レ・ダマンド・シトロン・バヌアツ
パレ・フィン・カフェ・アマンデ
薄いシートタイプのショコラにはプラリネとカフェを合わせたものがサンドされています。
そのマーブル状の美しさは思わず大理石を彷彿とさせるほど。
とてもシンプルな配合ですが、その見た目には思わず目を奪われてしまう一品でもありました。
パレはブラック・ホワイトのチョコレートを使用して実践して頂き、細かなポイントを丁寧に説明して下さいました。
パレ・フィン・カフェ・アマンデ
ピエスモンテ
後半はピエスモンテのデモンストレーション。今回はモンタージュ(組み立て)しながら、所々に部分的なパーツの作り方の実践・解説をして頂きました。その中で芸術性の高いピエスを作る為の最大のポイントは、素材・仕込みに注意を払うのは勿論の事、その作業空間やパーツそのものの温度管理が一番重要である、とおっしゃっていました。
また、今回型取りで使用した道具類はお手製のものであったり、身近なもので代用する等、その創造性に富んだ使い方に大変感銘を受けました。
そしてモンタージュではピエスの大きさに関わらず『動き』を重視しているとの事。たとえシンプルであっても、動きを付ける事で表情豊かになり、より芸術性の高い作品に仕上がるとの事でした。
また、作成途中で折れてしまったパーツも必ず最後までとっておき、最終的に全体のバランスを見ながら使用する事でピエス全体が引き締まる事もある、とお話しされていました。
ステファン氏は全ての工程を通して全神経を集中させ、まるでピエスに息を吹き込む様な一連の流れは、とどまる事無くスピーディーに進んで行きました。緊張感と期待感が入り混じった会場内で、受講者の方々もそんなステファン氏の一挙手一投足を見逃さない様、最後まで熱い眼差しを向けていました。
ピエスモンテ
素材選びから作業工程まで、随所にシェフのこだわりが感じられるデモンストレーションでした。
『どこに重きを置くか・何を求めるか』を常に念頭に置き、今までのやり方とは一味違った製法で進めて行かれたのがとても印象的でもありました。更にパーツによっては他アイテムへのアレンジも説明してくださり、作り手に広がりを持たせるルセット構成も大変すばらしかったです。
今回受講された方にとって、世界レベルの技術は勿論の事、ステファン・ルルー氏の五感全てを網羅できる、とても充実した1日であったのではないでしょうか。
Stéphane Leroux氏(ステファン・ルルー)
1967年フランス生まれ。
「ピエール・マルコリーニ」「ドゥバイヨル」「コンラッドホテル」等、ベルギー国内の有名店での修業を経て、「ピュラトス」「IBC社」等で研究開発を担当。WPTCでは2002年・2004年と連続してベルギー代表として出場。チョコレート・ショーピース部門で2度にわたり個人優勝を果たす。
また、2004年にはMOF(フランス最優秀職人)の称号を取得する。
 
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