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アドルフ・サイラー氏オーストリアパン講習会
 
アドルフ・サイラー(Adolf Sailer)氏 オーストリアパン講習会

 

洋菓子講習会のレポートが多いTFOODSですが、今回は製パン講習会に参加しました。

日本オーストリア食文化協会による、本場オーストリアのパンを学ぶ講習会です。

講師は福岡「ベッカライ&コンディトライ・サイラー」アドルフ・サイラー氏。

オーストリアのパン職人の家に生まれ育ち、現在は福岡にて伝統的なオーストリアのパンを作り続けています。

 

オーストリアの食卓に欠かせないパンといえば、やはり「カイザーゼンメル」。

バターやマーガリンではなくラードを使うのが本場の味だそうで、オーストリアでは良質のラードを仕入れるため、肉屋・パン屋・レストランを一緒に経営している店も多いのだとか。サイラーさんの店で出すカイザーゼンメルにも、熊本の肉屋で仕入れる質の良いラードが使われているそうです。また、オーストリアではフランスパンにもカイザーゼンメルの生地を使用するそうで、いかにこの味が生活に根付いているのかがよくわかりました。

 

サイラーさんは、プレッツェルに明太子やチリソースを入れたり、日本で新しい組み合わせを模索するなど、柔軟なアイデアを取り入れています。その一方で、絶対にこれだけは守るポイントというものがあり、「ルートをはずさないことが大事」と、講習会の最中も繰り返しアドバイスをしていました。

「本場の味を作り続けること、伝統の味を伝え続けることがわたしのパン職人としての誇りです」というサイラーさん。

その国で昔から根付く食の原点をあらためて知ることで、新しいパンの楽しみ方を知ることができた講習会でした。

 

 
開催日
  2008年9月25日(木)
講師
  ベッカライ&コンディトライ・サイラー」 アドルフ・サイラー氏
主催
  日本・オーストリア食文化協会
会場
  日清製粉株式会社日本橋小網町ビル 講習会場
 
 
 
「カイザーゼンメルは日本でいう米のような存在。その店ごとに味があり、小さいお店でも一日1000個は作られるオーストリアの食卓に欠かせないパンです」とサイラーさん。

  サイラーさんが祖父から受け継いだカイザースタンプの装置。空気が一気に抜けるため、プラスチックのカイザースタンプとはまた違う食感になるのだそう。

  ミキシング、発酵、分割、ベンチタイム・・・。成型の前に麻袋に入れたコーンスターチとライ麦の打ち粉を振ります。かなりたっぷりです。
 
 
生地を入れて、手早く回します。ガチャンガチャンとリズミカルな音が響きます。

  これは手で成型をしたもの。本場のパン職人は1分間で10個を仕上げるといいます。   「スタンプの成型を施した面は必ず下にすること」サイラーさんが大切にしているポイントのひとつです。
 
 
ポイント二つめは「焼く前にたっぷりの水分を吹きかけること」。講習会に参加していたプロのパン職人さんも「本当にたっぷりなんだなぁ」とつぶやいていましたよ。

  パリッとしたクラストに軽めの食感のカイザーゼンメルです。左がプラスチックのカイザースタンプ、真ん中がサイラーさんのスタンプ装置、右が手による成型。   次は「プレッツェル」です。この成型のモチーフは“祈り”。写真のように胸の前で手をクロスし、祈りを捧げる様子から、宗教色を色濃く反映したパンといえるでしょう。
 
 
プレッツェルには3つの穴があることも重要です。カトリックにおいて“3”という数字はとても大切な意味合いをもつのだそうです。

  苛性ソーダを使うのもこのパンならでは。味と焼き色に欠かせません。正しい使い方と管理が重要で、網にのせて焼くのがポイントだとか。   岩塩をしっかりきかせた歯切れの良い食感の「プレッツェル」。オーストリアでは同じ生地でさまざまな成型のパンを作るそうです。
 
 
最後は「カルトッフェルブロート」です。じゃがいもを練りこんだパンなのですが、予想以上にたっぷり。大きい粒がゴロゴロしているのがわかります。

  このパン生地はグルテンが少なくベタベタするため、手で丸めます。「このパンは焼きたてが一番美味しいですよ」とサイラーさん。   「カルトッフェルブロート」の成型も2種類。右側はふんわりもっちりしていて、岩塩がいいアクセントです。かなりおいしいです。左側は月型の成型で仕上げています。
 
 
オーストリアのパンは具材とあわせ、サンドイッチのように食べるのも多いそうです。いろいろなアレンジも教えていただきました。

  軽い食感のカイザーゼンメルは、シンプルにトマトやベーコンと。フィリングを合わせることも考えての食感ということがよくわかります。   白ソーセージと赤玉ねぎをカレーパウダー、ケチャップ、マスタードでペースト状にしたフィリングは、プレッツェルの生地にあわせます。
 
 
これはカイザーゼンメルの生地で作ったバンズ。具材はにしんです。   これもカイザーゼンメルの生地で作った「サルツシュタンゲル」というロール成型。これはオーストリアが得意とする成型なのだそう。

  日本語は苦手・・・と言いながらも、笑顔で伝統の技と味わいを披露してくれたサイラーさんでした。
 

アドルフ・サイラー氏

「ベッカライ&コンディトライ・サイラー」 
アドルフ・サイラー氏

 

1963年 オーストリア・マウエアキルフェン生まれ。

1978年 アルトハイム・カールヴァインハウプトで菓子職人、パン職人の訓練を受ける。祖父の代から続く実家のパン屋で働く。

1984年 福岡「千鳥屋」原田みつひろ氏のもとで働く。この間、オーストリアでパンと菓子のマイスターの資格を取得。

1989年 福岡「バイローゼ」で店長を務める。

1994年 福岡「ベッカライ&コンディトライ・サイラー」をオープン。

現在、大阪辻調理師専門学校の講師を務めるほか、長野オリンピックや日韓ワールドカップなどオーストリア選手のためのパンを焼くなど多方面で活躍中。


▼ ベッカライ&コンディトライ・サイラーHP  http://www.sailer.jp/



 

 

 

 

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