2019年3月5日、バリーカレボー社のショコラティエ研修機関であるチョコレートアカデミーセンター東京が主催する「メリッサ・コッペル(Melissa Coppel)氏による特別デモンストレーション」が開催されました。
講師を務めるメリッサ氏は、コロンビア出身の女性ショコラティエ。米国ラスベガスの三ツ星レストラン「ジョエル・ロブション・アット・ザ・マンション」や「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」に勤務後、「シーザースパレスカジノ」にて全てのチョコレート作りを担当。そのずば抜けたチョコレートの芸術的才能が評価され、国際コンクール「ペストリー・ライブ」等、数多くの賞を受賞しています。現在はラスベガスに設立した自身のスクールを拠点にチョコレート技術の指導を行う傍ら、2015年よりカカオバリー大使に就任し、世界中でコンサルティングや講習会を行っています。 今回の講習会のテーマは「現代チョコレートとデザート・バー」。こちらのテーマを基に、ボンボン・ショコラ2品とデザート・バー2品の合計4作品のデモンストレーションを披露。チョコレートに対する圧倒的な知識をベースに、伝統に囚われない自由な発想から誕生するメリッサ氏のチョコレート菓子は、非常に独創的であり、世界的な女性ショコラティエの美技に会場中が酔いしれました。 また、この日は「国際女性デー」(2019年3月8日)を目前にした講習会ということで、女性受講者には特別料金が設定されており、会場には多数の女性パティシエ・ショコラティエが集まりました。メリッサ氏は世界的なショコラティエでありながら、8歳になる娘を持つ母親でもあります。そんなメリッサ氏の活躍する姿に、女性受講者はもちろん、男性受講者も大きなエネルギーと勇気を得たことでしょう。
1作品目は「ピニャコラーダ(Pina Colada)」。本作品はホワイト・ラムにパイナップルジュースとココナッツミルクを組み合わせた同名のカクテルをモチーフにしたボンボン・ショコラで、“パイナップルとココナッツのガナッシュ”と“マカダミアとココナッツとパイナップルのクランチ”の2層のセンターで構成されています。
デモンストレーションの冒頭は、シェルの色付けからスタート。本作品のシェルはイエローとホワイトのグラデーションにブラックのドットを取り入れた配色。ピニャコラーダのトロピカル感を表現したデザインです。 センター1層目の“パイナップルとココナッツのガナッシュ”は、ゼフィール34%(カカオバリー)をベースに、パイナップルピューレ、ココナッツピューレ、生クリーム、糖類などを乳化したガナッシュです。ベースとなるゼフィール34%は、さっぱりと甘みを抑えたホワイトチョコレートなので、パイナップルとココナッツの風味がしっかりと感じられるガナッシュになります。 2層目の“マカダミアとココナッツとパイナップルのクランチ”は、溶かしたゼフィール34%、カカオバター(カカオバリー)、マカダミアペーストをベースに、ココナッツファインやフリーズドライパイナップルを混ぜ合わせて結晶化させたもの。フィヤンティーヌや砕いたナッツなどを用いずに食感のアクセントを表現するメリッサ氏の柔軟な発想が垣間見えるパーツです。 シェルの配色からもイメージできる通り、トロピカルなテイストをチョコレートの中に閉じ込めた作品「ピニャコラーダ」。一口食べるとココナッツとパイナップルの爽やかな味わいが口の中に広がります。トロリとした口溶けの良いガナッシュとシャキシャキしたココナッツファインのコンビネーションは独創的。モチーフとなったカクテルと同様、夏の暑い季節に食べたいボンボン・ショコラです。 デモンストレーションの冒頭はシェルの色付けからスタート。
ピニャコラーダのシェル。トロピカル感を表現したデザイン。
センターは2層。1層目はパイナップルとココナッツのガナッシュ。
2層目はマカダミアとココナッツとパイナップルのクランチ。
ピニャコラーダの断面。夏の暑い季節に食べたいボンボン・ショコラ。
2作品目は、ピスタチオの無限の可能性をボンボン・ショコラで表現した「インフィニティメント・ピスタチオ(Infinitiment Pistachio)」。こちらのボンボン・ショコラは、“ピスタチオのガナッシュ”と“ピスタチオ・ドゥージャ(ピスタチオで作ったジャンドゥージャ)”の2層のセンターで構成されています。
「インフィニティメント・ピスタチオ」のシェルは、ライトグリーンとダークグリーンの2色に、ワンポイントとしてホワイトのラインを取り入れたデザイン。ホワイトのラインは、筆を使ってシェルひとつひとつに模様を書き込む為、多少手間が掛かりますが、ラインが入ることにより高級感を演出。わずかな一手間で作品の価値を高めるメリッサ氏のセンスが輝きます。 センター1層目の“ピスタチオのガナッシュ”は、前作品のガナッシュと同様、ゼフィール34%をベースにして、ピスタチオペースト、生クリーム、糖類などを乳化して仕込みます。このレシピのポイントとなるのが少量のオリーブオイルを加えること。このポイントについてメリッサ氏は「リキッド状のオイルとホワイトチョコレートは相性が良く、非常に滑らかな質感に仕上がる」と解説。ホワイトチョコレートのガナッシュを仕込む際、素材にマッチしたリキッドオイルがある場合は、一度試してみると良いでしょう。 2層目の“ピスタチオ・ドゥージャ”は、ピスタチオペーストにカカオバター、粉糖、塩を混ぜ合わせたパーツです。ピスタチオをベースにしたシンプルなレシピの為、ピスタチオ本来の旨みと、鮮やかなグリーンの色合いが特徴的。昨今話題となっているルビーチョコレートを使ったパーツと組み合わせれば、美しい色彩のボンボン・ショコラになるだろうとメリッサ氏は提案します。 完成した「インフィニティメント・ピスタチオ」は、ピスタチオの美味しさがシンプルに楽しめる仕上がり。ガナッシュに配合しているホワイトチョコレートとピスタチオのバランスは絶妙です。ピスタチオを連想させるシェルの色合いも美しく、ピスタチオの魅力を見事に引き出した作品です。 シェルは筆を使ってホワイトのラインをひとつひとつ書き込みます。
色付けをしたシェル。ピスタチオを連想させる配色。
1層目のピスタチオのガナッシュは少量のオリーブオイルがポイント。
2層目はピスタチオで作ったジャンドゥージャ。
シェルのフタにはメリッサ氏オリジナルの転写シート。
ピスタチオの美味しさがシンプルに楽しめるボンボン・ショコラ。
3作品目は「マイ・ドリーム(My Dream)」。この「マイ・ドリーム」は、型に直径4cmの半球型を使用したデザート・バーで、センターには“ローズのクランチ”、“ラズベリーのコンフィチュール”、“ライチのガナッシュ”の3種類のパーツを組み合わせています。
シェルの配色はホワイトとブラックの2色。シンプルな配色ながら、ホワイトの部分にはバニラシードが散りばめられており、近くで見ると独特な質感のシェルに仕上げています。 センターの“ローズのクランチ”は、溶かしたカカオバターとゼフィール34%をベースに、ローズペタル、フリーズドライラズベリーなどを混ぜ合わせたパーツ。全ての材料を混ぜ合わせた後は、小さな山型に成形し、予め冷やし固めておきます。 同じくセンターとなる“ラズベリーのコンフィチュール”は、ラズベリーピューレに糖類などを合わせてペクチンを加えたシンプルなコンフィチュール。こちらのパーツも事前に仕込みを行い、予め冷やしておきます。 2種類のパーツが揃ったところで、センターのメインとなる “ライチのガナッシュ”を仕込みます。こちらのガナッシュは、前の2作品に登場したガナッシュと同じくゼフィール34%をベースにして、ライチピューレ、生クリーム、糖類などを乳化したもの。27℃に調温してからシェルに流し入れ、事前に仕込んだ“ラズベリーのコンフィチュール”と“ローズのクランチ”を順に配置して「マイ・ドリーム」の完成です。 ローズ、ラズベリー、ライチという素材の組み合わせからもイメージできる通り、華やかでフローラルな香りが楽しめるボンボン・ショコラ。特にローズの使い方は絶妙で、チョコレートを飲み込んだ後にローズの馥郁たる香りが余韻として口の中に広がります。食感のアクセントとなるのはフリーズドライラズベリー。プチプチした食感が口溶けの良いガナッシュと合わさり、独特の食べ心地を演出。1作品目の「ピニャコラーダ」が夏向けのボンボン・ショコラなのに対して、こちらの「マイ・ドリーム」は、花々が咲き誇る春にピッタリなボンボン・ショコラです。 マイ・ドリームの色付け。ホワイトとブラックの2色。
センターに使用するローズのクランチ。小さな山型に成形。
同じくセンターに使用するラズベリーのコンフィチュール。
センターのメインはライチのガナッシュ。中に前述したパーツを配置。
華やかでフローラルな香りが楽しめるデザート・バー。
最後の4作品目は「アップル・タルト(Apple Tart)」。その作品名の通り、リンゴのタルトをチョコレート菓子にアレンジした作品で、“リンゴのガナッシュ”と“マカダミアのプラリネ”の2層のパーツで構成されたデザート・バーです。
「アップル・タルト」のシェルはレッド一色のみ。チョコレートの色が透けて見えるように薄く着色を行い、最後に爪楊枝を使って小さなライン模様を付けています。2作品目の「インフィニティメント・ピスタチオ」と同様に、ワンポイントを巧みに取り入れたデザインです。 センターの1層目となる“リンゴのガナッシュ”は、香ばしく炊き上げたキャラメルにリンゴ、バター、生クリームを加えてから、アルンガ41%(カカオバリー)とカカオバターを混ぜ合わせて仕込みます。このガナッシュについてメリッサ氏は、リンゴの量が多いと食感が悪くなってしまい、逆にリンゴの量が少ないとリンゴの風味が弱くなってしまうということで、レシピの調整に苦労したパーツだったと語ります。 2層目の“マカダミアのプラリネ”は、マカダミアペーストをベースに、ゼフィール・キャラメル35%(カカオバリー)、カカオバター、塩、フレーク状に加工したクロワッサン生地を混ぜ合わせたもの。こちらのレシピに使用しているゼフィール・キャラメル35%は、キャラメル・ブール・サレを彷彿させる香りが特徴的なチョコレート。このゼフィール・キャラメル35%を実際のキャラメルに見立てることでプラリネのテイストに仕上げています。 リンゴの爽やかな風味とキャラメルの香ばしさをチョコレートで表現した「アップル・タルト」。ガナッシュはとろりと濃厚な質感で、ほんのりとシナモンの香り。一方のプラリネは、キャラメルの香ばしさの中に程良い塩味が感じられ、クロワッサン生地のサクサクした歯切れの良い食感がアクセント。甘味と塩味のバランスが良く、ついついもう一個と手が伸びるデザート・バーです。 アップル・タルトの色付けを行うメリッサ氏。色はレッドのみ。
着色後は爪楊枝を使って小さなライン模様を付けています。
ワンポイントを巧みに取り入れて独創的なデザインに。
センターは2層。リンゴのガナッシュとマカダミアのプラリネ。
リンゴの爽やかな風味とキャラメルの香ばしさが特徴的な作品。
メリッサ・コッペル(Melissa Coppel)
コロンビア出身。米国ラスベガスの三ツ星レストラン、ジョエル・ロブション・アット・ザ・マンション、ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブションにて勤めた後、チョコレートへの忠実な情熱を実現すべくシーザースパレスカジノにてすべてのチョコレート作りを担当。ずば抜けたチョコレートの芸術的才能が評価され、国際コンクール「ペストリー・ライブ」等、これまで数多くの賞を受賞している女性シェフ。2015年にカカオバリー大使に任命され、世界中でコンサルティングや講習会を精力的に行っている。
チョコレートアカデミーセンター東京
2015年にバリーカレボー社が東京・品川に開設したショコラティエ研修機関。バリーカレボー社のグローバルブランドであるカレボー、カカオバリー、カルマを中心としたグルメブランドの日本での情報発信拠点と同時に、世界各国で活躍している経験・知識が豊富なテクニカルシェフによるチョコレートを主軸とした技術指導、講習・デモンストレーション、レシピ開発のサポートなどを行う。
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