TFOODS.COM 材料にこだわる人とプロの為の洋菓子材料通販サイト

M.O.F.ニコラ・ベルナルデのパティスリーモデルヌ
2019年2月5日、バリーカレボー社のショコラティエ研修機関であるチョコレートアカデミーセンター東京が主催する「M.O.F. ニコラ・ベルナルデ(Nicolas Bernardé)氏による来日講習会」が開催されました。

ニコラ氏は1966年生まれのフランスを代表するパティシエの一人。ダロワイヨに勤務後、アフリカ・ガボン共和国の大統領付きパティシエ、フランス外務省のパティシエ、ル・コルドン・ブルーの教授などを歴任。そして2011にはパリ郊外のラ・ガレンヌに自身のブティックである「ニコラ・ベルナルデ」をオープン。その間、2004年M.O.F.(フランス最優秀職人章)パティスリー・コンフィスリー部門の称号取得や、2005年ワールド・グルメ・サミットにて世界最高シェフの一人に選出されるなど、世界中のパティシエから注目を集めます。日本でもサロン・デュ・ショコラへの出店などを通じて高い人気を誇ります。

そんなニコラ氏を講師に迎えた今回の講習会は、“ニコラ・ベルナルデのパティスリーモデル”と題して、ニコラ氏のブティックで実際に販売していた「アントルメ・ショコラ」、「タルト・シトロン」、「ケイク・ショコラ・ノワゼット」の3作品のデモンストレーションを披露。ニコラ氏は、ル・コルドン・ブルーでも教鞭を執った経験があるだけに、受講者に対して丁寧に分かりやすくレシピや作り方を解説。どの作品もシンプルな構成ながら、素材の美味しさを引き出すニコラ氏のテクニックが随所に盛り込まれた講習会となりました。
アントルメ・ショコラ(Entremets Chocolat)
1作品目は「アントルメ・ショコラ(Entremets Chocolat)」。こちらの作品は、ニコラ氏のブティックで毎週土曜日に週替わりで限定販売される“ガトー・ド・サムディ(土曜日のお菓子)”として考案されたアントルメで、ヘーゼルナッツのフィナンシェ、プラリネのクルスティヤン、ミルクチョコレートのムースの3種類のパーツで構成されています。

土台となるのはヘーゼルナッツのフィナンシェ。一般的なフィナンシェは、砂糖と粉類に卵白を混ぜ合わせてから焦がしバターを加えるという手順で生地を仕込みますが、ニコラ氏の作るフィナンシェは、先に砂糖と粉類に焦がしバターを加えてから最後に卵白を混ぜ合わせるという手順で作業を行います。この仕込みの手順は、予め焦がしバターの温度を下げて卵白に余計な火が入るのを防止することが目的です。仕込んだ生地は、冷蔵庫で一晩休ませてからセルクルを使用してオーブンで焼き上げます。

焼き上げたフィナンシェの上には、プラリネのクルスティヤンを配置します。このクルスティヤンは、ラクテ38%(カカオバリー)とバターをベースに、プラリネ・ノワゼット(カカオバリー)、ヘーゼルナッツペースト、パユテフォユティーヌ(カカオバリー)を混ぜ合わせたもので、食感のアクセントになります。

アントルメのメインとなるのはミルクチョコレートのムース。こちらのムースは砂糖の入らないアングレーズをベースに仕込みます。炊き上げたアングレーズには、ラクテ38%、グランカラク(カカオバリー)、ゼラチンを溶かしてから泡立てた生クリームと混ぜ合わせ、プラスティック製の型に流し入れて冷やし固めます。

上記3種類のパーツは、全て重ねてからグラッサージュでコーティング。デコレーションは、細かく砕いたパユテフォユティーヌにブロンズ色のパウダーを混ぜ合わせたものをアントルメの側面に貼り付け、上部にデコール・ショコラとメレンゲをシンプルに配置して完成です。

メインとなるムースは、ミルクチョコレートのマイルドな甘さと共にグランカラクによるビターなカカオ風味が感じられ、とろけるような滑らかさが特徴的。やや弾力のあるフィナンシェとカリカリした食感のクルスティヤンは、ムースの口溶けの良さを強調しながらも、ヘーゼルナッツの香ばしい香りを作品全体にプラス。シンプルな構成のアントルメだけに、各素材の美味しさを引き出すニコラ氏のセンスが輝く作品です。
土台となるヘーゼルナッツのフィナンシェ。焦がしバターを混ぜ合わせる順番がポイント。
ミルクチョコレートのムースは砂糖不使用のアングレーズをベースにして仕込みます。
仕込んだミルクチョコレートのムースはプラスチック製の型に流して冷やし固めます。
ムースの上に重ねているのはプラリネのクルスティヤン。食感のアクセントになります。
3種類のパーツは全て重ねてからグラッサージュでコーティング。
パユテフォユティーヌにブロンズパウダーを混ぜ合わせたもので側面をデコレーション。
仕上げのデコレーションを行うニコラ氏。自身の美的感覚を頼りにデコール・ショコラを飾り付け。
仕上げのデコレーションは2パターン披露。どちらもシンプルながらシックなデザイン。
試食用のアントルメ・ショコラ。マイルドな甘さ、カカオのビター感、ヘーゼルの香ばしさをシンプルに表現。
タルト・シトロン(Tarte Citron)
2作品目は「タルト・シトロン(Tarte Citron)」。こちらの作品も1作品目のアントルメ・ショコラと同じく“ガトー・ド・サムディ(土曜日のお菓子)”として考案されたタルトで、パート・シュクレで作ったタルトシェルの中に、クレーム・ダマンドとクレーム・シトロンを配置してから、上部と側面にマスカルポーネのクリームが絞られています。

タルトシェルに使用しているパート・シュクレは、バター、塩、小麦粉をサブラージュしてから、粉糖、アーモンドパウダー、卵を混ぜ合わせたもの。サブラージュの際は、バターで塩をコーティングするように作業を行い、生地中に塩の粒子を閉じ込めることがポイントとなります。このポイントを押さえることで、タルトを食べた際に程良い塩味が口の中に残り、食べた人が「また食べたい」という気持ちになるとニコラ氏は解説。仕込んだ生地はフォンサージュと空焼きをしてから、クレーム・ダマンドを詰めて焼成を行います。

クレーム・ダマンドの上に重ねるクレーム・シトロンは、レモン果汁、レモン果皮、砂糖、卵を炊き上げてからゼラチンとバターを混ぜ合わせるスタンダードな製法で仕込みます。レモン果汁とレモン果皮は必ずフレッシュを使用して、レモン本来の風味と酸味がしっかりと感じられるクリームに仕上げます。仕込んだクレーム・シトロンは、型に流して冷やし固めた後、レモン色のグラッサージュでコーティングを施してから、クレーム・ダマンドの上に重ねます。

クレーム・シトロンまで重ねた後は、マスカルポーネのクリームでタルトの上部と側面をデコレーション。このクリームは、マスカルポーネをベースにしたクリームと、ゼフィール34%(カカオバリー)をベースにしたクリームの2種類を共に泡立ててから混ぜ合わせたものです。

完成したタルト・シトロンは、食べた瞬間に口の中に広がるクレーム・シトロンのキレのある酸味を、マスカルポーネのクリームの乳味がやさしく包み込むような味の構成。パート・シュクレのサクサクした歯切れの良い食感と、クレーム・シトロンの滑らかな口溶けのコントラストも絶妙。1作品目に引き続きシンプルな構成のタルトですが、ニコラ氏の丁寧な仕事ぶりが伺える仕上がりです。
タルトシェルに使用しているパート・シュクレはサブラージュして軽い食感の生地に仕上げます。
仕込んだ生地はフォンサージュと空焼きをしてからクレーム・ダマンドを詰めて焼成。
クレーム・ダマンドの上に重ねるクレーム・シトロンはスタンダードな製法で仕込みます。
クレーム・シトロンは冷やし固めてからレモン色のグラッサージュでコーティング。
クレーム・シトロンまで重ねた後はマスカルポーネのクリームを上部と側面に絞ります。
仕上げとして花をイメージしたメレンゲを飾り付けてタルト・シトロンの完成。
試食用のタルト・シトロン。キレのあるレモンの酸味とやさしい乳味のバランスが美味。
ケイク・ショコラ・ノワゼット(Cake Chocolat Noisette)
3作品目は「ケイク・ショコラ・ノワゼット(Cake Chocolat Noisette)」。ニコラ氏のブティックでは“ガトー・ド・ボワイヤージュ(日持ちのする菓子)”をメインに販売を行っており、ケイク菓子の種類も豊富に取り揃えています。こちらの作品は、そんなケイク菓子のひとつとして実際にブティックで販売していたもので、小麦粉不使用で作られています。

ベースとなるケイクの生地は、シュガーバッター法でシンプルに仕込みます。粉類には皮付きヘーゼルナッツパウダー、アーモンドパウダー、カカオパウダーのみを使用し、小麦粉は使いません。仕込んだ生地には、ヘーゼルナッツのローストとオコア70%(カカオバリー)を粗く刻んだものを混ぜ合わせてから焼成。生地の中心までムラなく火を通すように温度を調整しながら丁寧に焼き上げていきます。

焼き上げたケイク生地は、熱を取ってからグラッサージュで全体をコーティング。仕上げは、生地中にも砕いて配合したオコア70%のガナッシュ、デコール・ショコラ、ナッツのキャラメリゼをそれぞれ飾り付けて完成です。

バター、砂糖、卵、ナッツ、カカオで構成されているケイク菓子の為、一口食べるとナッツとカカオの風味がしっかりと感じられます。口の中でホロホロと崩れるような独特の食感は、小麦粉不使用の生地ならでは。やや難しい印象を受ける小麦粉不使用のケイク菓子も、ニコラ氏の手に掛かれば上質な作品へと生まれ変わります。
ベースとなるケイクの生地はシュガーバッター法でシンプルに仕込みます。小麦粉不使用。
仕込んだ生地はアルミ製の型に流して焼成。温度を調整しながら丁寧に焼き上げます。
焼き上げたケイク生地は熱を取ってからグラッサージュで全体をコーティング。
オコア70%のガナッシュ、デコール・ショコラ、ナッツのキャラメリゼを飾り付けて完成。
小麦粉不使用のケイク菓子もニコラ氏の手に掛かれば上質な作品へと生まれ変わります。
ニコラ・ベルナルデ(Nicolas Bernardé)氏
1964年生まれ。「ダロワイヨ」に4年勤務した後、アフリカ・ガボン共和国の大統領付きパティシエとして働く。その後、ルレ・エ・シャトー加盟のホテル「ル・プリウーレ」や、フランス外務省のシェフ・パティシエを経て、パリの「ル・コルドン・ブルー」の教授に就任。同校に在学中、2004年にM.O.F.(フランス最優秀職人章)パティスリー・コンフィスリー部門称号取得、2005年にはワールド・グルメ・サミットにて世界最高シェフの一人に選出。2011年、自身のブティックである「ニコラ・ベルナルデ」をパリ郊外のラ・ガレンヌにオープン。
チョコレートアカデミーセンター東京
2015年にバリーカレボー社が東京・品川に開設したショコラティエ研修機関。バリーカレボー社のグローバルブランドであるカレボー、カカオバリー、カルマを中心としたグルメブランドの日本での情報発信拠点と同時に、世界各国で活躍している経験・知識が豊富なテクニカルシェフによるチョコレートを主軸とした技術指導、講習・デモンストレーション、レシピ開発のサポートなどを行う。
 
過去に開催された、講習会や教室の一覧ページ