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ピュラトスジャパン主催 ステファン・ルルー氏によるチョコレート技術講習会
2018年7月24日、製菓・製パンのプロフェッショナルに向けて様々な原材料やサービスを提供するピュラトスジャパン株式会社が主催する、ステファン・ルルー氏によるチョコレート技術講習会が開催されました。

2018年で11回目を迎えるステファン氏による技術講習会。今回は、10月に一般発売を予定しているステファン氏の新刊「ブルーショコラ(日本語版)」(原題:Bleu Chocolat)を記念する講習会ということで、同書籍内に収められているチョコレート作品の中からピックアップしたものを中心にステファン氏自ら実演するという内容となりました。ステファン氏の通訳はノリエットのオーナーシェフである永井紀之氏が担当。

WPTC(ワールド・ペストリー・チーム・チャンピオンシップ)のチョコレート・ショーピース部門で2度に渡る個人優勝を果たすなど、世界屈指のチョコレート技術を持つと評されるステファン氏が、現在どのような考え方とテクニックを用いて創作活動を行っているのかを体感できる講習会となりました。

開 催 日 2018年7月24日(火)
講 師 ステファン・ルルー(Stéphane Leroux)氏
主 催 ピュラトスジャパン株式会社
コキヤージュ(貝)のピエス
「水」、「気」、「土」、「火」という自然の中にある4要素から着想を得て創作活動を行っているというステファン氏。中でも「水」に関連するものは多くの作品で表現されており、ステファン氏の“代名詞”とも言えるでしょう。今回の講習会では、そんな「水」に関連する作品としてコキヤージュ(貝)のピエスを実演。

ベース部分はプラスティックシートで作った自作の型を使い、チョコレートを流しては結晶化させるという作業を繰り返して、少しずつチョコレートに厚みを持たせていきます。しっかりした厚みになった所で型から外して模様付けに移ります。

模様付けは、ベースとなるチョコレートにランダムな大きさに丸めた粘土を貼り付け、その上から着色したカカオバターをスプレーするという手順で作業を行います。この時、チョコレートに対して粘土をピッタリと貼り付けるのではなく、少し余裕を持って張り付けることがポイントです。これにより粘土とチョコレートとの境界線にナチュラルなグラデーションが掛かり、自然な風合いの模様になります。

模様まで付けた後は、仕上げとして磨きを行います。まずは無色のカカオバターを極薄くスプレーで吹き付け、結晶化したところで全体を指で擦って磨きの下地を作ります。この作業は、ピストレにより“毛羽立った”状態で結晶化しているカカオバターを均す効果があり、最終的な美しい輝きに繋がります。 次に冷水で濡らしたタオルを使い、チョコレート全体を丁寧に磨き上げます。ポイントはチョコレートと冷水の温度。ステファン氏が最適と提案する温度は、“チョコレート18℃”に対して“冷水10℃”。しっかりと温度調整を行ってから、全体を磨いてはタオルを冷やすという作業を4〜5回程度繰り返すことで、非常に艶やかな美しい輝きに仕上がります。
ベース部分はプラスティックシートで作った自作の型を使用。
模様付けはまずベースとなるチョコレートに丸めた粘土を貼り付けます。
次に粘土の上から着色したカカオバターをスプレー。
カカオバターが結晶化した所で粘土を取り除くと自然な風合いのドット模様になります。
模様を付けた後は無色のカカオバターをスプレーで吹き付けてから指で擦って磨きの下地を作ります。
仕上げとして冷水で濡らしたタオルを使い、全体を丁寧に磨き上げます。回数を重ねるごとに美しい輝き。
ペンシルバルーンのピエス
バルーンアート用のペンシルバルーンを使ったピエス。作り方は非常にシンプルで、膨らませたバルーンを好みの形にして、そのままチョコレートにトランペするというもの。トランペした後は、チョコレートをしっかりと結晶化させ、バルーンを割って取り除けば中心が空洞になったユニークなデザインのピエスとなります。今回の講習会では結んだバルーンを使って実演を行いました。

この結んだバルーンのピエスを作るポイントは、緩めに結び目を付けること。ステファン氏が試作を行った結果、結び目をきつくしてしまうと、バルーンを割って取り出す際に引っかかってしまい、取り出せなくなってしまうそうです。またトランペ直後は、バルーンの向きを変えながら結晶化させて、チョコレートの厚みが均等になるようにすることも大切です。チョコレートの厚みを均等にすることで、最後にバルーンを取り出した際に美しい空洞に仕上がります。
バルーンアート用のペンシルバルーンを使用。
膨らませたバルーンを好みの形にしてそのままチョコレートにトランペ。
チョコレートが結晶化したらバルーンを割って取り除きます。
着色して磨きをかけるとユニークなデザインのピエスに仕上がります。
バルーンの形を変えれば、様々なデザインのピエスを作ることができます。
陶磁器のピエス
チョコレートピエスとは思えない程、繊細な質感と美しい輝きが特徴的な陶磁器のピエス。先述したバルーンのピエスに引き続き、こちらのピエスでもバルーンを巧みに使用します。

作り方は、まず回転台の中央にプラスティック容器を固定し、その容器の中に膨らませたバルーンをしっかりとはめ込みます。次にはめ込んだバルーンごと回転台を回転させて、バルーンの上部に着色したカカオバターを塗り付けます。この時にバルーンの中心位置と回転台の中心位置をしっかりと合わせておくことで、美しい螺旋模様に仕上がります。模様まで付けたバルーンは、回転台から取り外して模様を付けた部分のみをホワイトチョコレートでトランペ。チョコレートが冷えて結晶化した所でバルーンを取り外し、最後に仕上げとして食用ニスを使用して全体に艶出しを行って完成です。

この陶磁器のピエスを作成するにあたり、ステファン氏が重視しているのが「繊細さ」です。バルーンを使用した美しい螺旋模様はもちろんですが、トランペした部分も外側から内側の模様がうっすらと透けて見えるほど繊細な質感に仕上げています。この繊細さこそがチョコレートで作成したピエスとは思えない素晴らしい印象を与えてくれます。
回転台にプラスティック容器を固定し、その中に膨らませたバルーンをはめ込みます。
台を回転させて着色したカカオバターを塗り付けると美しい螺旋模様が作れます。
模様を付けた部分のみをそのままホワイトチョコレートでトランペ。
バルーンを取り外した後は食用のニスを使って艶出し。
裏面まで丁寧に食用ニスを塗り込みます。
外側から内側の模様がうっすらと透けて見えるほど繊細な質感。
マーブルストーンのピエス
天然石を彷彿させる美しい模様が目を引くマーブルストーンのピエス。この神秘的で複雑な模様もステファン氏のテクニックによりチョコレートで実現することが可能です。

模様の作り方は、まずシワを付けたラップフィルムを数センチ間隔に折り重ねます。次にこの折り重ねたラップフィルムの上に、「赤」「青」「緑」3色に着色したカカオバターを手で塗り付けます。この段階で折り重ねたラップフィルムを広げると、カカオバターが付着している箇所と何も付いていない箇所に分かれるので、最後に白色のカカオバターを全体に塗り重ねて模様付けは完了。ポイントとなるのはラップフィルムの折り重ね方と着色です。どのような模様に仕上げるかをきちんと意識することが、最終的な模様の美しさに繋がります。

模様付けを行ったラップフィルムは、画材用の接着剤を使用してアルミボールのフチにぴったりと貼り付けた後、端からアルミボール内の空気を抜くことで、内側にカーブした状態を作ります。ここにチョコレートを流して結晶化させたものを2枚張り合わせれば、マーブルストーンのピエスは完成となります。
まずシワを付けたラップフィルムを数センチ間隔に折り重ねます。
その上から赤・青・緑の3色に着色したカカオバターを手で塗り付けます。
この段階で折り重ねたラップフィルムを広げるとカカオバターが付着した箇所と無い箇所に分かれます。
さらにその上から白色のカカオバターを全体に塗り重ねて模様付けは完了。
完成したマーブル模様のラップ。身近な道具も使い方次第で複雑な模様を作ることが可能。
アルミボールに模様を付けたラップを張り付け、チョコレートを流して結晶化。
結晶化させたチョコレートを2枚張り合わせて完成。
寄木細工のピエス
異なる模様を複数組み合わせた寄木細工のピエス。この寄木細工模様は、まずプラスティックシートの上に、塗装用のスポンジを使用して着色したカカオバターを複数重ね、3パターン分の模様を作ります。次に模様を付けたプラスティックシートを同じ幅の帯状にカットし、別のプラスティックシートの上に3パターン分の模様を順々に貼り付けます。最後に3パターン分の模様を貼り付けたプラスティックシートの上からチョコレートを流し、薄く伸ばしてから模様が斜めになるように正方形にカット。これで寄木細工模様の完成となります。

ポイントとなるのは、プラスティックシートの上に帯状にカットした各パターンの模様を貼り付ける際、隙間が出来ないようにしっかりと並べることです。ここでわずかでも隙間が空いてしまうと、上からチョコレートを流した際に隙間からチョコレートが流れ出てしまうので、慎重な作業が求められます。
塗装用のスポンジを使用して3パターン分の模様を作成。
模様を付けたプラスティックシートは同じ幅の帯状にカット。
別のプラスティックシートの上に3パターン分の模様を順々に貼り付けます。
チョコレートを流し、薄く伸ばしてから模様が斜めになるようにカット。
完成した寄木細工模様のチョコレートプレート。
今回のデモンストレーションではキューブ状のチョコレートに貼り付けています。
柱のピエス
赤と緑にそれぞれ着色した柱のピエス。作り方はプラスティックシートで作った自作の型にチョコレートを流し、結晶化した所でそれぞれ着色するだけです。こちらのピエスも着色後は、冷水で濡らしたタオルを使って丁寧に磨き上げます。

作り方については特筆すべきことはありませんが、曲線と角を組み合わせた独特の形状は非常にシンプルながら存在感があります。これまでに無いステファン氏の世界観が感じられるピエスと言えるでしょう。
プラスティックシートを使用して型を自作。曲線と角を組み合わせた独特な形状。
型にチョコレートを流して結晶化させ、着色したものがこちら。
こちらのピエスも冷水タオルで磨き上げます。シンプルながら存在感のあるデザイン。
プレゼンテーション&ジャンケン大会
ピエスのデモンストレーションは先述した6作品で終了となりましたが、プレゼンテーションの際には、この日に作成したピエスと共に予め事前に作成しておいた睡蓮のピエスの展示も行われました。この睡蓮のピエスもステファン氏の新刊「ブルーショコラ」に収録されている作品で、書籍内ではピエスを地面に直接設置して、その上から水を流すという演出を施した写真が掲載されています。

また講習会の最後にはジャンケン大会が行われました。優勝者にはステファン氏の新刊「ブルーショコラ」をプレゼント。本来であれば著者であるステファン氏がジャンケンを行う所ですが、フランスではジャンケンの出し手が4種類有る為、急きょ通訳を務める永井シェフが担当。見事、ジャンケン大会を勝ち抜いた優勝者には、ステファン氏自ら優勝賞品である「ブルーショコラ」が手渡され、講習会は幕を閉じました。
事前に作成しておいた睡蓮のピエス。マーブル台の上に溶着してプレゼンテーション。
ステファン氏が一つ一つ制作している為、形・大きさ・色合いはそれぞれ異なります。
講習会の最後にはジャンケン大会。優勝者にはステファン氏の新刊「ブルーショコラ」をプレゼント。
見事ジャンケン大会を勝ち抜いた優勝者にステファン氏自らプレゼントを贈呈。
※ステファン氏の新刊「ブルーショコラ」は、下記の問い合わせ先よりご購入頂けます。
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【書籍「ブルーショコラ」問い合わせ先】
ピュラトスジャパン株式会社
マーケティング部 チョコレート担当
TEL:03-5410-2326
Email:Belcolade_japan@puratos.com
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ステファン・ルルー(Stéphane Leroux)氏
ステファン・ルルー(Stéphane Leroux)氏
1967年フランス生まれ。MOF(2004年パティシエ部門)。2002年、2004年と連続してワールド・ペストリー・チーム・チャンピオンシップ(WPTC)にベルギー代表として出場し、チョコレート・ショーピース部門で2度に渡り個人優勝を果たす。2009年に「素材としてのチョコレート」、2013年に「プラリネ」を出版し、世界中のプロフェッショナルより賞賛を得る。現在、ピュラトス本社(ベルコラーデ)に所属し、世界各国で技術指導などを行う。
ピュラトスについて
ピュラトスについて
世界100カ国以上の製菓・製パンのプロフェッショナルに向けて、様々な原材料やサービスを提供する国際的企業。開発から製造まで自社で行う。ベーカリー・パティスリー製品や、ベルギーチョコレートのブランド、ベルコラーデなどチョコレート製品を取り扱う。ベルギーの首都ブリュッセル近郊のグルート・ビジガーデンに本社を構える。
 
過去に開催された、講習会や教室の一覧ページ