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ドミニク・クレア(Dominique CLERC)氏と菅又亮輔氏による特別講習会
2017年8月9日、東京・渋谷にあるドーバー洋酒貿易講習会場にて、ドミニク・クレア(Dominique CLERC)氏と菅又亮輔氏による特別講習会が行われました。

ドミニク氏は、フランス・リヨンにある1917年創業の老舗ショコラトリー「Palomas(パロマス)」のオーナーシェフ。一方、菅又氏は、2015年に東京・用賀にパティスリー「Ryoura(リョウラ)」をオープンした人気・実力ともに注目を集めるパティシエ。

両氏は、10数年前に同じパティスリーのラボでドミニク氏がシェフ、菅又氏がスーシェフとして働いていた師弟関係にあたります。そんな二人の講習会ということで、アシスタントには当時のラボメンバーが集結して二人のサポートを務めました。

講習会では、主催であるサンエイト貿易が取り扱う「マロンロワイヤル社」の商品を使用した作品を、ドミニク氏が6品、菅又氏が3品実演。同じラボで苦楽を共にした仲間が集まったということもあり、終始笑顔の絶えない和やかな雰囲気の講習会となりました。

開 催 日 2017年8月9日(水)
講 師 ドミニク・クレア(Dominique CLERC)氏 「Palomas(パロマス)」
菅又亮輔氏 「Ryoura(リョウラ)」
主 催 サンエイト貿易株式会社
クリストーレン・オ・マロン(Christollen au Marron)
ドミニク氏の1作品目は「クリストーレン・オ・マロン(Christollen au Marron)」。クリスマスシーズンに食べられる伝統菓子シュトーレンにマロンを組み合わせた作品です。

まずは発酵種作りからスタート。小麦粉、グラニュー糖、ドライイースト、牛乳、ヨーグルトを全て混ぜ合わせて、2倍程度の大きさになるまで常温で発酵を行います。発酵種の特徴となるのが「ヨーグルト」。このヨーグルトを配合するアイデアは、イタリア製菓界の巨匠イジニオ・マッサーリ氏のレシピを参考にしたもので、生地にヨーグルト特有の酸味を若干加えると共に、仕上がりの食感を柔らかくする効果があります。

発酵種の準備が出来た所で本生地の仕込みに移ります。この作品の本生地は、最初に小麦粉とバターでサブラージュを行い、そこに発酵種や卵などの材料を加えて捏ね上げる独特な手法を用います。これは、生地中にバターを均一に分散させることで、生地の状態を安定させる目的があり、焼き上がりの食感が良くなるとドミニク氏は解説します。

また本作品は、マロンのクリストーレンとなるので、生地中にマロンペースト(マロンロワイヤル)を配合。さらに今秋に新しく発売されたマロンロワイヤル社の新商品オレンジペーストとレモンペースト(輸入検討品)も配合されており、マロンの味わいと共に柑橘類のフレッシュな風味が感じられる生地に仕上げています。

生地に混ぜ込むガルニチュールは、ラム酒で漬けたレーズン、マロンコンフィ・エグテ(マロンロワイヤル)、オレンジキューブ(マロンロワイヤル)、シトロンピール(マロンロワイヤル)、アーモンドスライスの5種類。混ぜ込む際は、グルテンの形成が壊れるのを防ぐ為、生地を三つ折りにするようにガルニチュールを混ぜ込みます。

ガルニチュールまで混ぜ込んだ生地は、通常のシュトーレンのパート・ダマンドの代用として、マロンペーストとクルミオイルを混ぜ合わせて棒状にしたものを中に入れて成形。さらに生地の一部を薄いシート状に伸ばして、全体を覆うように包み込んでから、発酵と焼成を行います。

焼成後は、溶かしバターをたっぷりと刷毛で塗り込み、最後にバニラシュガーを全体にたっぷりまぶしてクリストーレン・オ・マロンの完成です。
クリストーレンの発酵種。イタリア製菓界の巨匠イジニオ・マッサーリ氏のレシピを参考にヨーグルトを配合。
本生地は小麦粉とバターでサブラージュしてから捏ね上げることで生地の状態を安定。
レーズンやマロンなどのガルニチュールは生地を三つ折りにするようにして混ぜ込みます。
マロンペーストとクルミオイルを混ぜ合わせて棒状にしたものを生地の中に配置。
さらにシート状に伸ばした生地で全体を覆うように包み込んでから発酵と焼成。
焼成後は溶かしバターをたっぷりと刷毛で塗り込みます。
最後にバニラシュガーを全体にたっぷりまぶしてクリストーレン・オ・マロンの完成。
サブレ・マロン(Sablés Marron)
2作品目は「サブレ・マロン(Sablés Marron)」。丸い円盤状に焼き上げたサブレ生地でマロンのクリームをサンドした焼き菓子です。

サブレ生地は、ドミニク氏の出身地であるリヨンの郷土菓子「タルト・プラリン」の生地をアレンジしたレシピを使用します。ポマード状にしたバターをベースに、マロンペースト、マロンクリーム(マロンロワイヤル)、糖類、小麦粉などの材料を混ぜ合わせて、丸い円盤状に成形。170℃のオーブンで程良く色が付く程度まで焼成を行います。

サブレ生地にサンドするマロンのクリームは、マロンペーストとマロンクリームに、バター、生クリーム、カカオバター、コニャックを混ぜ合わせたもの。焼き上げたサブレ生地の上に絞り、マロンコンフィ・エグテを少量乗せてから、もう片方のサブレ生地でサンドしています。
焼成前のサブレ生地。リヨンの郷土菓子「タルト・プラリン」の生地をアレンジしたレシピ。
170℃のオーブンで焼成。程良い焼き色が付くまで焼き込みます。
焼成したサブレ生地にはマロンのクリームを絞ります。
クリームの上にはガルニチュールとしてマロンコンフィ・エグテを少量乗せます。
もう片方のサブレ生地でサンドしてサブレ・マロンの完成。
コンフィズリー各種(Confiserie)
3作品目は2種類のコンフィズリーです。

一つ目のコンフィズリーは「ダンテル(Dentelles)」。アーモンドパウダーから作ったドミニク氏オリジナルのパート・ダマンドで、ラビオリを仕込むようにオレンジのパート・ド・フリュイを包んだものを、シロップに漬け込んでから乾燥させてキャンディングをしています。パート・ダマンドとパート・ド・フリュイ共に、オレンジペーストを配合して、オレンジ風味に仕上げています。

二つ目のコンフィズリーは「キャラメル・シトロン(Caramel Citron)」。色を付け過ぎないように丁寧に加熱したキャラメルに、レモンゼストで香り付けをした生クリームとレモン果汁を加えて煮詰め、バターやレモンペーストを混ぜ合わせて作ります。非常にやわらかな食感が特徴で、クリーミーなキャラメルの味わいとレモンのフレッシュ感がマッチした一品です。

コンフィズリーは糖類の使い方がポイントとなるだけに、ドミニク氏は随所に糖類についての理論的な解説を挟みながら作業を進行。糖度や温度はもちろん、糖の種類による特徴などもしっかり理解した上で作業を行うことが、最適な状態の仕上がりに繋がります。
ダンテルに使用するオリジナルのパート・ダマンド。ロボクープを使用してアーモンドパウダーから作成。
シート状に伸ばしたパート・ダマンドの上にはオレンジのパート・ド・フリュイを絞ります。
パート・ダマンドのシートをもう一枚用意してパート・ド・フリュイを包みます。
ローラーカッターを使い、ラビオリを仕込む要領で一つ一つ切り分けていきます。
その後、キャンディング用のシロップに漬け込んでから乾燥させて完成です。
完成したダンテル。糖類の使い方を熟知したドミニク氏による美しいキャンディング。
こちらはキャラメル・シトロンの仕込み風景。色を付け過ぎないように丁寧に加熱。
加熱後は少量のキャラメルをマーブルの上で冷やし固めて、仕上がりの状態を確認。
四角セルクルに流して冷やし固めて完成。キャラメルの味わいとレモンのフレッシュ感がマッチ。
ボンボン・ショコラ(Bonbon au Chocolat)
ドミニク氏の最後の作品は2種類のボンボン・ショコラです。

一つ目のボンボン・ショコラは「Carina(カリーナ)」。カリーナは、フランスのオーガニックチョコレートメーカー、カオカ社のラミティエ55%チロリ66%をミックスしたガナッシュに、オレンジペーストとオレンジ果汁をベースにしたオレンジのコンフィを重ねた2層仕立て。ダークチョコレートとオレンジという王道のコンビネーションです。

二つ目のボンボン・ショコラは「Vela(ヴェラ)」。こちらのボンボン・ショコラでも、カリーナと同じカオカ社のラミティエ55%とチロリ66%をミックスしたガナッシュを使用。ヴェラではガナッシュの組み合わせとして、バターとマロンペーストをシンプルに混ぜ合わせたものを重ねています。マロンの風味が楽しめる秋向けのボンボン・ショコラに仕上げています。
カリーナの仕込み風景。長方形のシャブロン型にオレンジのコンフィを流します。
オレンジのコンフィの上には、カオカ社のチョコレートを使用したガナッシュを流します。
クレア(Clair)
この作品から菅又氏のレシピがスタート。菅又氏の最初の作品は「クレア(Clair)」です。クレアは、菅又氏とドミニク氏が同じラボで働いていた時、ドミニク氏と共にコンクール用の作品として構想しながらも未完成のままで終わってしまったレシピをアレンジしたもの。2人にとって思い出深いレシピを、現在の菅又氏の技術で再構築しています。

クレアの作品構成は、マロンのムースをメインにして、センターにコーヒー風味のクレーム・ブリュレとキャラメル・ムー、底生地にビスキュイ・ダマンドを組み合わせ、全体をマロンのグラッサージュでコーティング。仕上げとしてトップにマロンのシャンティーが絞られています。

ムース、グラッサージュ、シャンティーは、それぞれマロンテイストに仕上げられたパーツですが、3パーツともマロンピューレ(マロンロワイヤル)をメインにレシピを組み立てているのが本作品の特徴。これは加糖などの調整がされていないマロンピューレ特有のフレッシュな味わいを活かす目的があり、フランスでは果物(フルーツ)として認識されている「マロンのフルーツ感」を表現した作品に仕上げています。
シリコン型を使い、クレーム・ブリュレとキャラメル・ムーを組み合わせてセンターを仕込みます。
マロンのムースはマロンピューレをメイン素材に使用。特有のフレッシュな味わいを活かします。
シリコマート社のストーン型を使ってモンタージュ。隙間の無いように丁寧にパーツを詰めていきます。
冷やし固めた後はマロンのグラッサージュでコーティング。2度掛けしてやや厚めに。
グラッサージュの上には仕上げとしてマロンのシャンティーを絞ります。
クレアの断面。シンプルな構成で「マロンのフルーツ感」を表現した作品。
ロワイヤル(Royal)
菅又氏の2作品目は「ロワイヤル(Royal)」。ビスキュイ・ダマンド、クレーム・ムースリーヌ、マロンのジュレ、モンテリマールのムースという4つのパーツで構成されたアントルメ作品で、カードルを使用して各パーツを順に重ねて仕込みます。

底生地となるのは前作品のクレアと同じビスキュイ・ダマンド。上にはクレーム・パティシエールとクレーム・オ・ブールをシンプルに混ぜ合わせたクレーム・ムースリーヌを重ね、表面にマロンコンフィ・エグテを散らしています。

クレーム・ムースリーヌの上には、マロンのジュレを重ねます。前作品のクレアと同様にマロンピューレを使用してマロンのフルーツ感を活かした味わいに仕上げ、上に底生地と同じビスキュイ・ダマンドを重ねます。

一番トップとなるのはモンテリマールのムース。その名の通りヌガー・モンテリマールの素材の組み合わせをムースに応用しています。卵白に煮詰めた多種花蜜、ハチミツ、糖類のシロップを加えて泡立てたイタリアンメレンゲをベースに、生クリーム、ナッツ、ドライフルーツを混ぜ合わせて作り、カードルすり切りまで流してロワイヤルの完成。

本格的なフランス菓子のテイストを残しながらも、独自性のある作風に定評のある菅又氏らしさが感じられる一品です。
ロワイヤルに使用するビスキュイ・ダマンド。カードルのサイズに伸ばして焼成。
こちらはクレーム・ムースリーヌ。クレーム・パティシエールとクレーム・オ・ブールを混ぜ合わせて作成。
カードルを使ってモンタージュ。画像はクレーム・ムースリーヌの上にマロンのジュレを重ねています。
マロンのジュレの上には、予め焼成して冷やし固めたビスキュイ・ダマンドを配置。
一番トップとなるのはモンテリマールのムース。ヌガー・モンテリマールの組み合わせをムースに応用。
デコレーションとしてアプリコットやピスタチオなどをトッピング。
タルト・ティエッド・オ・マロン(Tarte tiède au Marron)
菅又氏最後の作品は「タルト・ティエッド・オ・マロン(Tarte tiède au Marron)」。このタルト・ティエッド・オ・マロンは、ドミニク氏が2作品目に披露したサブレ・マロンのサブレ生地を、菅又氏が異なるスタイルに仕上げた焼き菓子です。

サブレ生地は、ドミニク氏が丸い円盤状に焼き上げたのに対して、菅又氏は四角形の器型に焼き上げてタルトとして使用します。タルトの中には、マロンペースト、マロンコンフィ・エグテ、オレンジペースト、多種花蜜、生クリーム、グラニュー糖、卵を混ぜ合わせたガルニチュールを入れて、少し低めの温度で焼成。焼成後は表面をキャラメリゼしてタルティエッド・オ・マロンの完成です。

ドミニク氏が考案したサブレのレシピを、菅又氏がアレンジするというコラボレーション講習会ならではの作品となりました。
ドミニク氏のサブレ生地を菅又氏がタルトにアレンジ。
マロンペーストや生クリームなどを混ぜ合わせたガルニチュールを流して焼成。
焼成後は表面をキャラメリゼして完成。ドミニク氏と菅又氏のコラボ作品。
ドミニク・クレア(Dominique CLERC)氏
1977年、サボア地方シャンベリーに生まれる。1992年よりパティシエ及びショコラティエとして仕事を始め、1995年、ヴァルディゼールのパティスリー「Maison Chevallot」(1993年度MOF)にてショコラトリーの責任者として経験を積む。1999年にパリに渡り「Gérard Mulot」のスーシェフとして活躍。2004年、「帝国ホテル(東京)」に招聘され来日、チョコレート部門の開発に携わる。その後、「Pierre Hermé Salon de Thé」にシェフパティシエとして迎えられ、3年半に渡って店舗の指揮を任される。2008年に帰国、リヨン市内のパティスリー&ショコラトリー「Délices des sens」のシェフに就任、市内の3つの店舗を統括する。2011年11月、1917年創業の老舗ショコラトリー「Palomas」を引き継ぎ、オーナーシェフとして活躍中。
菅又亮輔 氏
1976年、新潟県に生まれる。26歳で渡仏。ノルマンディ、ローヌアルプ、アルザス、パリとフランス各地で3年に渡り修業を積む。2005年に帰国、「Pierre Hermé Salon de Thé」にスーシェフとして迎えられ、エルメ氏の技術はもとより、芸術性、創造性、感性など、その奥深さを学ぶ。2007年12月、「ドゥーパティスリーカフェ」のオープンからシェフパティシエを勤め、2010年春には2号店「ドゥーパティスリーカフェアトウキョウ」を東京駅内にオープン。看板商品のマカロン、ケークの他、本格的なフランス菓子を求めるファンが通う人気店に育て上げる。2015年10月、東京・用賀にパティスリー「Ryoura」をオープン。店名に込められた「自身のオーラをまとった個性的なお菓子を生み続けたい」という想いを胸に、オーナーシェフとして新たなスタートを切る。
サンエイト貿易
フランス・ヴァローナ社の最高級チョコレートやスペイン・SOSA社の製品を始め、洋菓子を中心とした高級製菓原材料の専門商社。「本物の価値ある商品をお届けする」ことを企業理念に、ヨーロッパを中心とした先見性のある高級洋菓子原材料を輸入販売し、製菓・製パン・料理業界の発展に貢献。

サンエイト貿易ホームページ
http://www.sun-eight.com/

 
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