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Fabrice DAVID 特別講習会
2017年7月12日、東京渋谷にあるドーバー洋酒貿易講習会場にて、世界を代表するフランスのチョコレートメーカー、ヴァローナが主催するレミ・モンターニュ(Rémi MONTAGNE)氏による特別講習会が行われました。

レミ氏は、今年の2017年からクリストフ・ルヌゥ氏(MOF)の後を引き継ぎ、エコール・ヴァローナフランス本校のエグゼクティブ・シェフに就任した人物。パン職人、製菓職人の家庭に生まれ育ち、ブーランジェリー、パティスリー、ショコラトリーなど様々な店で修業を重ねた経験から、製菓・製パンに幅広い知識と技術を有しています。

そんなレミ氏を講師に迎えた今回の講習会のテーマは、「Sur le pouce(シュー・ル・プス)」。この言葉は日本語に直訳すると「指で持つ」を意味しており、近年フランスのマーケットでニーズが高まっている「指で持って食べるお菓子(フィンガーフード)」にスポットを当てた作品のデモンストレーションが披露されました。
ROULADE ZEBRÉE(ルーラド・ゼブレ)
講習会のオープニングとなる1作品目は「ROULADE ZEBRÉE(ルーラド・ゼブレ)」。ルーラド・ゼブレは、インドネシアの「クエラピス」というお菓子をモチーフにした作品で、オレンジのブリオッシュ生地とチョコレートのブリオッシュ生地を、複数層に重ねて丸く焼き上げたもの。デモンストレーションは、この作品から5作品目の「COQUILLAGE GUANAJA」まで、発酵生地を使用したヴィエノワズリーが続きます。

オレンジとチョコレートの2種類のブリオッシュ生地は、どちらの生地も通常のブリオッシュと同様に、小麦粉や卵などの各材料をミキシングしてから発酵させて作ります。発酵方法は、生地を冷蔵庫で一晩寝かせる低温長時間発酵。イーストを使用する際は、必ず生イーストで発酵させるのがレミ氏のスタイルです。

発酵させた生地は、同じ大きさの長方形に四つ折りしてから、8層になるまで重ね・伸ばし・分割を繰り返し、最後はロール状に成形。ロール状に成形した生地は、25mm幅にカットしてから断面を上に向けて焼成を行います。

幾重にも重なった渦状のレイヤーを美しく見せる為、焼成時の塗り卵は行いません。変わりに焼成後にオレンジ果皮と水を加えたアプソリュ・クリスタル(ヴァローナ)で上掛けをして、艶やかな質感に仕上げています。
COURONNE PÊLE-MÊLE(クーローヌ・ペール・メール)
2作品目は「COURONNE PÊLE-MÊLE(クーローヌ・ペール・メール)」。このクーローヌ・ペール・メールは、1作品目のルーラド・ゼブレと同じ2種類のブリオッシュ生地を使用して、異なる形状に焼き上げた作品。

生地の成形は、ルーラド・ゼブレのように2種類の生地を重ねて層を作るのではなく、それぞれの生地を20〜30mm程度の大きさのチップ状にカット。このブリオッシュのチップを、大小2種類のセルクルを使用してドーナツ状にした型の中にランダムに入れてから焼成。焼成後は、ルーラド・ゼブレと同じくオレンジの香りを付けたアプソリュ・クリスタルでコーティングしています。

ちなみにチョコレートのブリオッシュ生地だけは、成形の際にドロップ・ショコラ・ブラック(ヴァローナ)を折り込んで、チョコレート感をプラスしています。しかし、それ以外はルーラド・ゼブレと同じブリオッシュ生地を使用したお菓子ですが、成形方法を変えるだけで全く違った印象のお菓子に生まれ変わりました。
TROPÉCLAIR NÉROLIE(トロペクレール・ネロリ)
3作品目は「TROPÉCLAIR NÉROLIE(トロペクレール・ネロリ)」。このトロペクレール・ネロリは、ブリオッシュ生地でクレーム・ムースリーヌをサンドした南仏のお菓子「トロペジェンヌ」をフィンガーフードにアレンジした作品。指でつまめる程度の小さな長方形に焼き上げたブリオッシュ生地にクリームをサンドしています。

サンドしているクリームは、オパリス(ヴァローナ)のガナッシュ・モンテ。バニラの香りを抽出した生クリームや糖類としっかり乳化させたオパリスに、別量の生クリームを加えて一晩休ませてからミキサーでふんわりと泡立てて使用。横半分にカットしたブリオッシュの上に絞った後には、細い口金を使用してクリームの中にフレーズ・コンフィを絞り入れています。

クリームをサンドするブリオッシュ生地は、オレンジフラワーウォーターとバニラで香り付けしたシロップに漬け込み、風味付けを行っています。オレンジフラワーの爽やかな香りと、バニラとオパリスの甘く芳醇な風味がマッチした作品です。
CUBE(キューブ)
4作品目は「CUBE(キューブ)」。その名称の通り、四角いキューブ状に焼き上げたブリオッシュに、ヌガティーヌとプラリネを組み合わせた作品です。

キューブの作り方は、まず四角いシリコン型の中に、一度固めてからパウダー状に粉砕したキャラメルとローストしたナッツを入れ、その上からブリオッシュ生地を詰めて焼成して、生地の一つの面にヌガティーヌを貼り付けます。このヌガティーヌを貼り付けた面を上にして、牛乳と乳化させたプラリネ・フリュイテ・クラッカン(ヴァローナ)を生地の底から中に絞り入れて完成です。

キューブのブリオッシュ生地は、シリコン型を使って焼成することを想定しているので、焼き色を強化する為に少量の転化糖が配合されています。焼き菓子やパンは、程良く色付いた焼き色が美味しさを演出する重要なポイントになりますので、このような配合の調整が大切です。
COQUILLAGE GUANAJA(コキヤージュ・グアナラ)
ヴィエノワズリーの最後となる5作品目は「COQUILLAGE GUANAJA(コキヤージュ・グアナラ)」。これまでの4作品はブリオッシュ生地を使ったレシピでしたが、このコキヤージュ・グアナラはクロワッサン生地を使用した作品となります。名称の「コキヤージュ」という言葉はフランス語で「貝」を意味しており、クロワッサンの層による模様が、貝殻の模様を連想させるということからネーミングしています。

クロワッサン生地の作り方は、ブリオッシュと同様に、小麦粉や卵などの各材料をミキシングしてから冷蔵庫で低温長時間発酵。発酵後は、バターを包んで四つ折り+三つ折りにして、40×200mmのバンド状にカット。このカットした生地を、四角いセルクルに詰めて焼成します。焼成の際は、生地の断面を上に向けて型に入れ、層の美しさが上部に見えるように焼き上げるのがポイントとなります。

焼成後は、生地の隙間からグアナラ(ヴァローナ)のガナッシュを中に絞り入れてコキヤージュ・グアナラの完成。ヴィエノワズリーの定番である「パン・オ・ショコラ」をフィンガーフードにアレンジしたような作品です。
1,000 FEUILLES(1,000フュイユ)
6作品目は「1,000 FEUILLES(1,000フュイユ)」。講習会の前半は、ヴィエノワズリーが続きましたが、ここからはパティスリーを中心としたレシピがスタート。まずは、フランスのパティスリーでは外せない伝統的なフランス菓子「ミルフィーユ」を、フィンガーフードにアレンジしていきます。

この作品のフュイタージュは、デトランプでバターを包むクラシックな製法で行い、四つ折り×2回+三つ折りをして層を重ねていきます。折り込んだフュイタージュは、50×100mmの長方形にカットしてから、ステンレス製のパイプを生地の中央にしっかり押し付けるように乗せて焼成を行い、パイの中央に「溝」を作ります。

パイの溝には、キャラメルとドゥルセ(ヴァローナ)のクレムーと、バニラとトンカ豆で香り付けをしたオパリスのガナッシュを順に絞り、最後にクリームの上にデコール・ショコラを飾り付けています。パイの両端を持つことで手軽に食べられる新しいスタイルのミルフィーユとなりました。
TARTELETTE VULCÂO(タルトレット・ブルカオ)
7作品目は「TARTELETTE VULCÂO(タルトレット・ブルカオ)」。「火山」を意味する「ブルカオ」というネーミングの通り、火山のような形状が特徴的なタルト作品です。

タルトレット・ブルカオの土台部分は、事前に予備焼成を行ったサブレ・アマンドと、P125(ヴァローナ)のビスキュイを重ねて焼成したもの。通常のタルトのようにフォンサージュするタイプではありませんので、このまま上部にパーツを配置していきます。

タルトの上部には、マカエ(ヴァローナ)のガナッシュ・モンテをシェルタン型の口金を使用して、中に空洞を作りながら山のような形に絞ります。そして中央の空洞部分に、バニラとライム果皮で香り付けしたパイナップルダイス入れて完成。グアナラの華やかなでフルーティーな酸味とパイナップルのトロピカル感が良くマッチした味わいです。
TUBE BAHIBE(チューブ・バイベ)
8作品目は「TUBE BAHIBE(チューブ・バイベ)」。7作品目のタルトレット・ブルカオと同じように、タルトのバリエーションとして紹介する作品で、アーチ状に焼成したサブレ・アマンドの中に、バイベ・ラクテ(ヴァローナ)のガナッシュ・モンテと、フランボワーズのコンポートが配置されています。

アーチ状のサブレは、トヨ型を利用して焼き上げています。通常のタルトとは異なるユニークな形状ながら、クリームのみならず多少大きな具材でも乗せることができる上、手に取りやすく食べやすい特徴を持つ優れもの。アレンジ次第で製菓から料理まで幅広く使うことが可能です。

なお、ガナッシュ・モンテに使用されている「バイベ・ラクテ」は、レミ氏が最も好きなミルクチョコレートとの事。ミルクチョコレート特有のミルキーなやさしい甘みを持ちながらも、カカオ分が他のミルクチョコレートに比べ、非常に多く配合されているので、ローストされたカカオの風味を楽しむことができます。ブラックチョコレートとミルクチョコレートの良い部分を合わせ持つチョコレートです。
PERLE ILLANKA(パール・イランカ)
9作品目は「PERLE ILLANKA(パール・イランカ)」。パールのように美しい球体状に固めたイランカ(ヴァローナ)のムースの中に、ルイボス茶で風味付けをしたレーズンを忍ばせた作品です。

前作品のチューブ・バイベでは、レミ氏が最も好きなミルクチョコレートとして「バイベ・ラクテ」を挙げていましたが、本作品に使用されている「イランカ」は、レミ氏が全てのチョコレートの中で最も好きなチョコレートとして紹介されました。原料にはペルー産のグラン・ブランコという極めて稀なカカオ豆が使用され、ベリー系を思わせる心地の良い酸味が特徴的です。

そんなイランカを使用したムースは、イランカ、ゼラチン、牛乳、生クリームという非常にシンプルな材料のみで作られている為、チョコレートの特徴がダイレクトに楽しめる味わいに。さらにチョコレートを乳化する際は、牛乳のみで乳化することで生クリームの使用量を抑えて、軽い食べ心地のお菓子に仕上げています。
POT CHOCO OPALYS , ORELYS , CARAMÉLIA , ILLANKA(ポ・ショコ)
講習会の最後にデモンストレーションされたのは、ミニサイズのヴェリーヌ作品「POT CHOCO(ポ・ショコ)」シリーズ。ブラック、ミルク、ブロンド、ホワイトの4種類のチョコレートを使用したムースをそれぞれ容器に入れて、クーリ(フルーツソース)と生地やナッツのチップをトッピングしています。

ブラックチョコレートのポ・ショコは、9作品目の「パール・イランカ」と同じムースを使用して、ジェル・シトロンとビスキュイ・シトロンをトッピング。イランカの特徴的な酸味とシトロンの爽やかな酸味が良くマッチした仕上がりです。

上質でクリーミーなキャラメル風味が人気のチョコレート、キャラメリア(ヴァローナ)のムースをベースにしているのは、ミルクチョコレートのポ・ショコ。ムースの上には、クーリ・ポワールとアーモンドのシュトルーゼルがトッピングされており、キャラメリアのキャラメル感と相性の良いポワールとナッツを組み合わせたヴェリーヌとなっています。

ブロンドチョコレートのポ・ショコは、モーリシャス島のマスコバド糖を使用したブロンドチョコレート、オレリス(ヴァローナ)がムースに使用されています。レミ氏がオレリスと相性が良いと解説するアングレーズソースでムースを仕込み、クーリ・アブリコとビスキュイ・ノワゼットをトッピングしています。

ホワイトチョコレートのポ・ショコは、本日の講習会でも度々登場しているオパリスを使用。このポ・ショコだけは、ベース部分がムースではなくクリームとなっており、バニラで香り付けした牛乳と生クリームで乳化させたオパリスをペクチンで固めることで、滑らかな質感に仕上げています。トッピングは、クーリ・フランボワーズと塩味を効かせたアマンド・サブレ。甘くなりがちなホワイトチョコレートの味わいを、フランボワーズの酸味とサブレの塩味がバランス良くまとめています。
レミ・モンターニュ(Rémi MONTAGNE)
レミ・モンターニュ(Rémi MONTAGNE)
パン職人、製菓職人の家庭に生まれ育ち、幼少期から製菓に対する情熱を抱く。ブーランジェリー、パティスリー、ショコラトリーで研鑽を積み、頭角を現す。2008年、世界的に有名な職業訓練校、フランス国立高等専門学校(ENSP)に迎えられる。ブルーノ・モンクディオル(MOF)、フィリップ・リゴロ(MOF)、ジャン・フランソワ・アルノー(MOF)、セバスチャン・セルヴォ、ヴァンサン・ゲルレといったグラン・シェフと並び、教鞭をとる。多くの職人と親交を深め、ノウハウを分かち合い、伝達する喜びを経験し、2011年エコール・ヴァローナフランス本校に籍を移す。2017年よりエグゼクティブ・シェフに就任。エコール・ヴァローナ本校の統括責任者として、本校の運営、製菓創造でチームを統率すると共に、世界各国で技術とノウハウの伝播に力を注ぐ。
ヴァローナ
ヴァローナ(VALRHONA)社について
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。 カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。 超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、 その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。 2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。 さまざまな研修プログラムが用意されている。

ヴァローナ ジャポン
http://www.valrhona.co.jp/
ヴァローナ オンライン・ブティック
http://boutique.valrhona.co.jp
エコール・ヴァローナ 東京
http://www.valrhona.co.jp/ecole/
 
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