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ステファン・ルルー氏による技術講習会&トークショー
2017年6月20日、MOFでピュラトス本社(ベルコラーデ)デモンストレーターを勤めるステファン・ルルー(Stéphane Leroux)氏による技術講習会が、ピュラトスジャパン株式会社と内海会の共催で行われました。

ステファン氏は、WPTC(ワールド・ペストリー・チーム・チャンピオンシップ)においてチョコレート・ショーピース部門での個人優勝を2002年と2004年の2大会連続で達成し、2004年にはMOFを受賞した世界屈指のパティシエの一人。特にチョコレートに関するテクニックおいては、世界的なパティシエからも一目置かれる存在として知られています。

毎年、ジャパン・ベルコラーデ・アワードに合わせて開催されるステファン氏による講習会。今年は例年と少し趣向を変えて、ピエスモンテのデモンストレーションとトークショーの2部構成となりました。

講習会の進行・解説は、エーグル・ドゥースの寺井則彦氏が務め、さらにトークショーのゲストには、パティスリーアプラノスの朝田晋平氏とアステリスクの和泉光一氏という豪華なメンバーが集結。チョコレートに関するテクニックと合わせて、デモンストレーションだけでは伝えきれないステファン氏の考え方なども伺える講習会となりました。
開 催 日 2017年6月20日(火)
会 場 正栄食品工業株式会社 テストキッチン
(東京都台東区)
講 師 ステファン・ルルー(Stéphane Leroux)氏
(ピュラトス本社ベルコラーデ・デモンストレーター、MOF)
進 行 ・ 解 説 寺井則彦氏 (エーグル・ドゥース オーナーシェフ)
トークショーパートナー 朝田晋平氏 (パティスリーアプラノス オーナーシェフ)
和泉光一氏 (アステリスク オーナーシェフ)
主 催 ピュラトスジャパン株式会社
内海会
【デモンストレーション】チョコレート・ピエスモンテ
講習会の前半は、ピエスモンテのデモンストレーションが行われました。この日に制作されたピエスモンテは、ステファン氏が得意とする植物をモチーフにした作品。

ピエスモンテのメインとなるのは、サイズの異なる半球形のチョコレートを複数に組み合わせた花のパーツ。波紋の様に幾重にも輪を重ねた形状が非常に独創的で、淡いピンク色のグラデーションと合わせて、ステファン氏の芸術性が伺えます。

花の後ろには、複数の枝のパーツが美しい曲線を描きます。枝の取り付けは、フランス菓子のデコレーションの基本である「S字ライン」を意識しているというステファン氏。柱部分と接着する際は、パーツと接着面に隙間ができないように丁寧にチョコレートを流してから、ピストレでムラの無い滑らかな状態に仕上げています。

大小様々な四角形のパーツを重ねた台座と柱部分は、プラスチックシートを重ねて作成した光沢のあるチョコレートプレートを表面に貼り付けることで、石柱のような艶やかで美しい質感に仕上げています。チョコレートの流し込みやピストレによる質感とは異なる独特な表現方法です。

基本的にステファン氏にとってピエスモンテは、お菓子をディスプレイする「場」を彩ることを想定しています。それだけにお菓子の存在を邪魔するような主張の強いデザインは好まず、シックな色彩と繊細で美しい形状のパーツを巧みに組み合わせて作品を構築するのがステファン氏のスタイルです。
オープニングの様子。ステファン氏を始め、豪華なメンバーが集結。
葉のパーツを制作するステファン氏。無駄のないスピーディーな動き。
台座のモンタージュ。表面にチョコプレートを張り付けて艶やかな質感に。
巧みにチョコレートを操るステファン氏の手の温度を計測。温度は27℃。
隙間ができないようにチョコレートを流し入れてパーツを接着。
パーツを接着後はピストレでムラの無い滑らかな状態に。
柱部分も台座と同じく表面にチョコプレートを貼り付けます。
感覚を頼りに作品を仕上げて行くステファン氏。完成間近。
半球形のチョコを組み合わせた花のパーツ。美しく独創的な形状。
ピエスモンテの着想について
ピエスモンテのデモンストレーション後は、休憩をはさんでからステファン氏によるトークショーがスタート。まずはピエスモンテの着想について解説して頂きました。

ステファン氏は、ピエスモンテのデザインを考える時、最初に作品の「軸」となる土台・柱部分から構想をスタートし、作品の軸を中心にして全体のライン、装飾部分という順にアイデアを広げています。その際には、必ずデッサンを描いて頭の中のイメージをビジュアル化しますが、ピエスモンテを複数の箇所に分解してデッサンを行うことで、詳細なデザインを作り上げています。

デッサンを行った後は、段ボールやマジパンなど、チョコレート以外の素材を使って実際にモデラージュを行います。ピエスモンテの配色は、一番最後に考えているということです。
新著「Blue Chocolat」について
トークショーの中盤は、2017年の秋頃にベルギーで出版を予定しているステファン氏の新しい著書について語って頂きました。

これまでステファン氏は、「素材としてのチョコレート」(2009年)と「プラリネ」(2013年)の2冊の著書を出版しており、今回の新刊が3冊目となります。新刊のタイトルは「Blue Chocolat」。「青」と「チョコレート」という、やや対照的な印象の言葉をタイトルに用いたこの著書は、世界屈指と称されるステファン氏のチョコレート技術と、自身のアーティスティックな面を組み合わせた内容となります。

チョコレート技術に関しては、チョコレートの技術教本を意識したという2009年出版の「素材としてのチョコレート」から内容を一新。「1冊目の著書から進化した技術を見てほしい」と語るステファン氏の言葉からも、新しく出版される著書に対する自信が伺えます。

今回の著書の中で、ステファン氏がこだわりの一つとして紹介するのが、掲載されている写真の数々です。掲載されている写真は、ステファン氏が創作する様々なチョコレート作品が中心ですが、中には工芸職人のMOFである父から譲り受けた作業道具やベルコラーデのチョコレート工場など、ステファン氏の感性でチョイスした写真も収められています。これらの写真は、ステファン氏とは20年来の付き合いがあるカメラマン、トム・スウォーレン氏が撮影したもの。ステファン氏が著書を通じて伝えたかったというアーティスティックな面は、トム氏の写真による表現力無くしては実現しなかったと語ります。
朝田氏と和泉氏を交えたトークセッション
トークショーの最後は、朝田氏と和泉氏をゲストに迎えたトークセッションが行われました。

トークセッションの中で朝田氏から、コンクールについての質問を受けたステファン氏は、「自身にとって最初のコンクールと呼べるのは”MOFコンクール”であった」と回答。工芸職人のMOFを父に持つステファン氏にとって、職種は違えど父と同じMOFの称号を手に入れることが自分自身の目標であり、MOF受賞以降がパティシエ、ショコラティエとして本当のスタートラインになったというエピソードを語って頂きました。

また、和泉氏からは、ステファン氏が審査員長を務める”ジャパン・ベルコラーデ・アワード”についての質問がありました。この質問に対してステファン氏は、「4時間という限られた競技時間の中で3種類(ボンボン・ショコラ、スナック(チョコレートを使用した菓子)、チョコレート・ピエスモンテ)の作品を仕上げることは難しいが、世界的な製菓コンクールを目指すパティシエにとって非常に良いコンクールである」と評価。さらにファイナリストに選ばれた選手たちに向けて、「素晴らしい作品を期待している」という激励と共に、「コンクールを通じて、審査員を務めるシェフを始め、製菓関係者や選手同士のつながりを大切にしてほしい」とアドバイスの言葉を残しました。
ステファン・ルルー(Stephane Leroux)氏
ステファン・ルルー(Stephane Leroux)氏
1967年フランス生まれ。MOF(2004年パティシエ部門)。2002年、2004年と連続してワールド・ペストリー・チーム・チャンピオンシップ(WPTC)にベルギー代表として出場し、チョコレート・ショーピース部門で2度に渡り個人優勝を果たす。2009年に「素材としてのチョコレート」、2013年に「プラリネ」を出版し、世界中のプロフェッショナルより賞賛を得る。現在、ピュラトス本社(ベルコラーデ)に所属し、世界各国で技術指導を行う。
ピュラトスについて
ピュラトスについて
世界100カ国以上の製菓・製パンのプロフェッショナルに向けて、様々な原材料やサービスを提供する国際的企業。開発から製造まで自社で行うベーカリー・パティスリー製品や、ベルギーチョコレートのブランド、ベルコラーデなどを取り扱う。ベルギーの首都ブリュッセル近郊のグルート・ビジガーデンに本社を構える。
 
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