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ジャパン・ベルコラーデ・アワード2015優勝者、眞砂翔平氏による特別デモンストレーション
2016年7月14日(木)、東京都港区にあるピュラトス・ジャパン株式会社イノベーションセンターにて、昨年行われたジャパン・ベルコラーデ・アワード2015の優勝者であり、2016年春に店舗とブランド名を新しくリニューアルしたクリオロ(旧エコール・クリオロ)のスーシェフとして活躍する眞砂翔平氏による特別デモンストレーションが開催されました。

今回のデモンストレーションは、ジャパン・ベルコラーデ・アワード2015の優勝作品を実演するという内容となり、昨年の大会テーマ「JAPAN(日本)」をモチーフに、実際に決勝大会で作成したボンボンショコラ2種類(モールドタイプ、エンロービングタイプ)とチョコレート・ピエスモンテを再現します。

実演中は、ジャパン・ベルコラーデ・アワードへの応募の方法から、決勝大会当日の会場の様子や審査員からのアドバイスなど、実際にファイナリストとして競技を行ったからこそ話せるエピソードを交えながら進められていきます。受講者は、次回のジャパン・ベルコラーデ・アワードに参加を検討している方や、製菓コンクールで入賞を目指している方が多く、大会などに関する質問を交えながら熱心にデモンストレーションを観覧していました。
開 催 日 2016年7月14日(木)
講 師 眞砂 翔平 氏
(クリオロ スーシェフ)
主 催 ピュラトスジャパン株式会社
ENSHU(ボンボンショコラ - モールドタイプ)
モールドタイプのボンボンショコラ「ENSHU」。フィグのコンフィチュールとカシスのガナッシュを組み合わせた作品で、そのネーミングは「綺麗さび」という茶道を確立した茶人「小堀遠州」から名前をつけています。

デモンストレーションの冒頭は、モールドの色付けとシェル作りからスタート。色付けの手順は、まず最初にブラシを弾くようにしてゴールドのカカオバターで斑点模様を付けます。次にその上から赤色のカカオバターをエアーブラシで吹き付け、最後にシルバーのパールパウダーを重ねています。本作品の色付けのポイントは、赤を綺麗に見せることなので、赤色のカカオバターは、チョコレートで型取りした際に暗い色味にならないように、仕上がりの状態をイメージして少し薄めに吹き付けます。その上に重ねているパールパウダーも、キラキラした輝きを見せると共に、表面の赤色が映えるようにする為の下地として使用しているということです。

色が定着した後は、シェル作りを行います。眞砂氏は、シェル用のチョコレートとしてノワール・アンターンス(ベルコラーデ)を使用します。このチョコレートは、カカオバターの含有量が多い為、流動性が非常に良く、モールディングが薄く仕上がるということで選んだそうです。製菓のコンクールでは、モールディングのチョコレートの厚みも重要な審査ポイントとなりますので、使用するチョコレート選びも大切になります。

シェルが固まるのを待つ間に、ボンボンショコラの中身2種類を仕込んでいきます。まずはフィグのコンフィチュール。作り方は、ドライイチジク、グラニュー糖、はちみつ、白ワイン(ゲヴィルツトラミネール)、アニスパウダー、レモン果汁を全て鍋に入れて煮詰め、最後にフードプロセッサーにかけて完成。材料を見ると複雑な組み合わせに思えますが、フードペアリング(※1)の考えをベースにして相性の良い材料を組み合わせたレシピとなっています。

もう1種類の中身となるカシスのガナッシュは、カシスピューレをベースにノワール・コレクシオン・エクアドル(ベルコラーデ)とレ・コレクシオン・ベネズエラ(ベルコラーデ)や糖類などを乳化させて作ります。このレシピのポイントは、ペクチンを配合することです。これは時間経過に伴うカシスの繊維部分によるザラつきを抑制することが目的で、カシス以外にも繊維質が多いフルーツには有効な手法です。

全ての材料が揃ったところでモンタージュを行います。大会当日は、底のフタを薄い仕上がりにする為に、型のギリギリまで中身を詰めて作業を行ったという眞砂氏。入れ過ぎて溢れさせてしまえば、当然減点の対象になるところですが、コンクールで他の選手に差を付けるには、大胆さや勝負強さも大切な要素と言えるでしょう。

(※1)フードペアリング
食材の香りの働きに着目した考え方。2004年に、ベルギー・ブルージュの研究機関フードペアリング社が中心となり、1000種類以上の食材を分子レベルで分析。共通するアロマ成分をもつ食材同士の組み合わせは、相性が良いことを科学的に実証。ベルコラーデ(ピュラトス)は、アロマが豊富に含まれるカカオ産地別のチョコレートと様々な食材をフードペアリングで組み合わせています。
モールドへの色付けの様子。赤色のカカオバターは暗い色味にならないように少し薄めに吹き付けます。
赤色のカカオバターの上にはパールパウダーを重ね、輝きと共に赤の色味を強調します。
色が定着した後はシェル作り。チョコレートは流動性の良いノワール・アンターンスを使用。
ボンボンの中身は2層で構成。1層目はフードペアリングをベースに考案したフィグのコンフィチュール。
2層目はカシスのガナッシュ。ペクチンを配合して時間経過に伴う繊維部分のザラつきを抑制。
シェルに中身を詰めた後は蓋をして完成。蓋のチョコレートも薄く仕上げます。
こちらが完成した「ENSHU」。美しい赤の色彩とゴールドの斑点模様が目を引きます。
ボンボンの断面。プチプチした食感のフィグと、ねっとりと酸味の効いたカシスの味わいが口の中に広がります。
RIKYU(ボンボンショコラ - エンロービングタイプ)
エンロービングタイプのボンボンショコラは「RIKYU」。作品名はその名の通り、日本で最も有名な茶人「千利休」から名前を付けています。

作品構成は、モールディングタイプと同じく2層構造。1層目は柚子のガナッシュです。ノワール・コレクシオン・ペルー(ベルコラーデ)とレ・コレクシオン・ベネズエラ(ベルコラーデ)をベースにして、柚子の香りをアンフュゼした牛乳、柚子ピューレ、糖類などを乳化させて作ります。

2層目はキャラメルと生姜を組み合わせたキャラメル・ジャンジャンブル。糖類をキャラメリゼしたところに、摩り下ろした生姜の香りをアンフュゼした生クリームを混ぜ合わせて作ります。作り方は通常のキャラメルと変わりませんが、1層目のガナッシュと異なる食感に仕上げる為、バターを少し多めに加えてねっとりとした食感を演出。ボンボンショコラは、複雑な構成に仕上げるのが難しいお菓子なので、ちょっとした食感の変化も仕上がりを左右する重要なポイントとなります。

ガナッシュの結晶化に時間がかかることを考慮して、今回のデモンストレーションでは、上記2層のパーツを予めカードルで固めてからギッターでカットしたものを使用してトランペを行います。「手作業でのエンロービングは本当に難しい」と大会での苦労を振り返る眞砂氏。先輩や知人などにアドバイスをもらいながら、何度も何度も練習を重ねて綺麗に薄くコーティングする感覚を身に付けたそうです。

コーティングを行ったボンボンショコラは、斜めに白いラインと小さな赤いカカオバターの玉を飾り付け、「かんざし」をイメージしたデザインに仕上げて完成です。小さな赤いカカオバターの玉は、冷却スプレーを吹き付けたギターシートの上にカカオバターをコルネで球状に絞り出すことで、瞬間的に冷却して固めています。作り方にちょっとしたアイデアが必要ですが、味やデザインに合わせて好みの色付けが出来るので、ボンボンショコラのデコレーションには汎用性が高いパーツとなります。
飾り用のカカオバターの玉を作る様子。まずバットの上にギターシートを重ね、冷却スプレーを吹き付けます。
その上に色を付けたカカオバターをコルネで球状に絞ります。瞬間的に冷却されて綺麗な球に固まります。
トランペのチョコレートはレ・アンターンス。エアースプレーを使用して薄いコーティングを目指します。
薄くコーティングした後は余計なチョコレートを落として「はかま」が出来ないように気を付けて作業を行います。
仕上げとして白いラインと先ほどのカカオバターの玉を飾り付けて完成。「かんざし」をイメージしたデザイン。
完成した「RIKYU」。上の層が柚子のガナッシュ、下の層がキャラメル・ジャンジャンブルとなります。
龍門瀑(チョコレート・ピエスモンテ)
チョコレート・ピエスモンテは「龍門瀑」。この作品は、鯉が滝を昇って龍になる様子を表した龍門瀑の石組みをモチーフにして日本庭園を表現したピエスモンテです。

アメ細工のピエスモンテではいくつかの受賞歴を誇る眞砂氏ですが、チョコレートのピエスモンテはジャパン・ベルコラーデ・アワードが実に初めての取り組みだったということで、勤務店であるクリオロのサントス・アントワーヌシェフからのアドバイスや、チョコレート・ピエスモンテに関する書籍などを参考にして、アメ細工と共通するアイデアや技術を活かしながら、独自の作品に仕上げて行きました。

本作品は「シリコンなどでシャブロンを作成する場合、高さを2cm以内にする(球や円柱、立方体などシンプルな立体的な型の使用は可)」という、ジャパン・ベルコラーデ・アワード2015の大会ルールを考慮して構成されている為、基本的に型を使用せずに作られています。メインとなる鯉のパーツは、フードプロセッサーで粘土状に加工したホワイトチョコレートをベースに、パレットナイフで作ったヒレやエラを飾り付けて、優雅に泳ぐ姿を表現。龍門瀑の石組みをイメージして積み重ねられている岩のパーツは、フードプロセッサーで粗めに砕いたブラックとホワイトチョコレートにカカオバターを混ぜ合わせたものを、ボールの底を利用して円盤状に固めています。

モンタージュは、少しアンバランスに組み立てることで、作品全体に動きを付けると共に、どの角度から見ても鯉や石段などの各パーツが確認できる立体的なデザインに仕上げて行きます。大会ルールに沿って作品を仕上げる必要がある為、立体感のある表現が難しいところですが、柔軟な発想により立体的に仕上げた眞砂氏のアイデアは、同大会でベスト・チョコレート・ショーピース賞を受賞したことからも、審査員から高く評価されたことが伺えます。
葉のパーツを作る様子。グリーンのカカオバターとチョコレートを重ねてカットラインを入れた後、ロールに巻きつけます。
こちらは土台となる岩のパーツ。粗めに砕いた2種類のチョコレートにカカオバターを混ぜ合わせ、ボールの底を利用して固めています。
鯉のパーツはフードプロセッサーで粘土状に加工したホワイトチョコレートを使用して動きのある泳ぐ姿を表現。
パーツが揃ったところでモンタージュ。岩のパーツは少しアンバランスに組み合わせて立体感を演出。
組み上げた後は赤色のカカオバターで着色。粗く砕いた2種類のチョコレートを独特の質感に仕上げて行きます。
メインとなる鯉のパーツを接着する様子。少し重みのあるパーツなので丁寧に時間をかけて土台と繋ぎ合せます。
接着した鯉のパーツにはパレットナイフで作ったエラとヒレを付けて、最後に赤色のカカオバターで模様を付けます。
仕上げとしてホワイトチョコレートを砕いたものを日本庭園の砂利に見立てて配置。これで「龍門瀑」の完成です。
眞砂 翔平(まなご しょうへい)
クリオロ・スーシェフ
1988年、和歌山県生まれ。辻学園調理・製菓専門学校在学時に「ア・キャトル」に勤務。卒業後、「エコール・クリオロ(現クリオロ)」に入社。現在同店のスーシェフを務める。

【受賞歴】
2011年 ジャパンケーキショー「ピエスアーティスティック部門」 銅賞
2012年 ジャパンケーキショー「味と技のピエスモンテ部門」 銅賞
2013年 ジャパンケーキショー「味と技のピエスモンテ部門」 金賞
2015年 ジャパン・ベルコラーデ・アワード2015 優勝
ジャパン・ベルコラーデ・アワード


ベルギーチョコレートの伝統を受け継いで世界のプロフェッショナルに向けて最高レベルのチョコレート提供している「ベルコラーデ」(取扱:ピュラトスジャパン株式会社、本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:ジャン・ピエール・ベルナルディノ)が主催する製菓コンクール。2012年のスタート以来、日本のパティシエ、ショコラティエの技術向上に大きく貢献。現在では世界的なコンクールを目指す若手パティシエ、ショコラティエの登竜門として広く知られています。
 
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