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SOSAテクスチャーシリーズ商品セミナー2015冬
2015年の夏、日本国内向けに8つの新商品が加わり、全20商品のラインナップとなったSOSAテクスチャーシリーズ。国内での取扱いから5年以上が経過し、日本でも数多くの飲食店で様々な調理法に活用されていますが、これから新しく取り入れてみようと考えている店も多いはず。そんなSOSAテクスチャーシリーズを始めて使用する方や、基本をもう一度確認しようとする方に向けたセミナーが、昨年の秋に引き続き、サンエイト貿易のテストキッチンにて開催されました。

以前より取扱いの有る商品は2014年のレポートで紹介しておりますので、今年は新たに追加された8つの新商品と、昨年のセミナーで紹介されなかったプロクレマCOLDとプロエスプーマCOLD&HOTを合わせて紹介します。

こちらのセミナーで紹介しているのは、あくまでも各商品の基本的な使用方法や特徴になりますので、これらを元にSOSAテクスチャーシリーズを使用すると料理や製菓でどのような表現ができるのかということを感じて、新しい調理法へのアイデアとしてお役立て下さい。

開 催 日 2015年12月2日(水)
講 師 今尾 暁子 氏
(サンエイト貿易 製品研究課シェフパティシエール)
主 催 サンエイト貿易株式会社
プロパンナコッタ
プロパンナコッタは、イオタタイプのカラギーナン100%のゲル化剤。ミルクを始めとする乳製品などに含まれるカルシウムと合わさることで、粘性のあるゲルを形成します。添加量や使用する素材にもよりますが、仕上がりのイメージとしましては、コンビニエンスストアやスーパーに陳列されているプリンやムースの食感に近く、クリーミーでやや舌に残るような印象です。

標準添加量は全体量の約0.2〜1.5%程度。乳製品などを含む液体に常温で混ぜ合わせてから、一度沸騰させて使用します。ややダマになりやすいので、砂糖を使用するレシピの場合は、粉体混合をしてから液体と混ぜ合わせる方が良いでしょう。

プロパンナコッタを使用したゼリーは、50℃程度まで加熱することが可能なので、常温や少し温めてから提供することができます。また離水が少ないという特徴もあります。気を付けたいのは、使用する素材の酸の強さ。酸が強くなるほど凝固力が弱くなるので配合には注意が必要です。ちなみにミルクなどの乳製品以外にも使用することは可能ですが、通常の2倍程度の使用量が必要になります。

代表的な使い方としては、やはりその商品名からもイメージ出来るようにイタリアンドルチェ「パンナコッタ」でしょう。なめらかで舌に絡みつくようなプロパンナコッタのゲル化は、濃厚な生クリームの味わいを舌の上でじっくりと楽しませるのに最適です。
まず乳製品などを含む液体に常温で混ぜ合わせます。ダマになりやすいので注意が必要。
良く混ぜ合わせた後は火にかけて沸騰させて使用します。添加量は全体量の約0.2〜1.5%程度。
容器の下がプロパンナコッタを使用したブランマンジェ。なめらかで舌に絡みつくような食感。
カッパ
カッパは、その名の通りカッパタイプのカラギーナン100%のゲル化剤。前述したプロパンナコッタもカラギーナン100%のゲル化剤ですがタイプが異なります。カッパのゲル化は、透明感があり、やや固く脆い印象。言い換えると歯切れの良いゲル化が特徴です。近年ではゼリーなどに良く使われているアガー系のゲル化剤は、主にこちらのカッパタイプ・カラギーナンやローカストビーンガムなどの増粘剤を原料に作られています。

標準添加量は全体量の0.1〜1%程度。添加量を増やせばより固めに仕上がります。基本的な使い方は、プロパンナコッタと同じように常温で混ぜ合わせてから一度沸騰させて使用しますが、こちらは乳製品以外でも大丈夫です。使用の際は、やはりカッパもダマになりやすい為、粉体混合をしてから液体と混ぜ合わせることをお勧めします。また酸の強い素材だと凝固力が弱くなるという点も同様です。

2015年に二度ほど来日して講習会を行ったSOSAテクニカルアドバイザーのギエーム氏は、素材のコーティングとクラッシュゼリーにカッパを使用していました。共に透明度の高さと硬く脆いカッパのゲル化の特性を活用した使い方です。
カッパを使用した薄いゼリー。固く脆いゲル化なので左右に引っ張ると簡単に割れてしまいます。
ギエーム氏は海老のコーティングにカッパを使用。透明度が高く歯切れの良い特徴を活用。
こちらはカッパのクラッシュゼリーに海老と青リンゴを絡めたもの。透明度が高いのできれいに仕上がります。
ゴマガロフィ
ゴマガロフィは、植物の種子を原料に作られたローカストビーンガム100%の増粘剤。ゴマガロフィをそのまま使用した場合は、素材を増粘・安定させる効果がありますが、SOSA本国のスペインなどではゴマガロフィを単体で使用することはほとんどなく、主に他のゲル化剤や増粘剤と併用して仕上がりの状態をコントロールする目的で使用されます。また離水防止に優れているという特徴がある為、冷解凍時の離水を軽減させる目的でも使用されます。

代表的な使用例としてはカッパ+ゴマガロフィの組み合わせが挙げられます。前述した通り、カッパ単体で使用したゼリーは固く脆いゲル化が特徴でしたが、ゴマガロフィを併用することで非常にしなやかで伸展性のあるゼリーに仕上がります。イメージとしては、エラスティックを使用したゼリーのように、多少ひっぱったりしても破れることはありません。他にもジェルエスペッサやプロパンナコッタなど、様々な組み合わせがあるそうです。

「これを使用するとこんな効果があります」というような素材ではなく、SOSAテクスチャーシリーズの中でもかなり特殊な使われ方をする商品ですが、市販されているゲル化剤や増粘剤の仕上がりでは満足できない場合には、一度試してみると良いでしょう。
こちらはカッパとゴマガロフィを組み合わせた薄いゼリー。多少ひっぱっても破れることはありません。
11月の講習会ではプロパンナコッタとゴマガロフィを組み合わせて使用。質感の調整と共に冷凍耐性を付与。
アガーアガー
アガーアガーは、寒天を主原料に作られたゲル化製剤です。寒天と同じように脆く固さがあり粘り気のないゼリーを作ることができます。

アガーアガーの使い方としてSOSAテクニカルアドバイザーのギエーム氏が提案しているのが、通称「パール」とネーミングしている粒状のゼリーです。粒状ゼリーの作り方としては、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの組み合わせが非常に有名ですが、アガーアガーの場合はリキッド状の油があれば作れるのでお手軽です。さらにアガーアガーではポン酢のように、多少酸味の強い素材でもゲル化させることが可能です。標準添加量は素材にもよりますが、0.2〜1.5%程度。

作り方は、アガーアガーとゼリーのベースとなる液体を良く混ぜ合わせてから一度沸騰させてゼリー溶液を作り、その溶液をスポイトや注射器を使用して、良く冷やした油の中に一粒一粒落としていくというもの。落とされたゼリー溶液は、油に弾かれて球体になると同時に、冷却されて固まるという仕組みです。

ただしアガーアガーを使用して作った粒状ゼリーは、主原料である寒天の力で固めているのでので、しっかりと食感の残るゼリーに仕上がり、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムで作ったゼリーとは食感が異なります。その為、ゼリーの食感を料理のアクセントにしたい場合はアガーアガーを使うなど、使用目的に合わせて使い分けることをお勧めします。
ギエーム氏の講習会では醤油のパールにアガーアガーを使用。冷たい油の中に注射器で粒を落とします。
ゼリーが冷え固まったところで油を切って皿に盛り付けます。非常にお手軽に粒状ゼリーが作れます。
アガーアガーは寒天を主原料に作られたゲル化剤なので、しっかりとした食感のゼリーに仕上がります。
ナチュルエミュル
ナチュルエミュルは、柑橘類の繊維とキサンタンガムから作られた乳化安定剤です。油脂と水分の乳化・安定・保水に効果があり、最大の特徴はオリーブオイルやサラダ油など常温でリキッド状の油脂と水分をマヨネーズのように強く乳化させることが可能です。もちろん卵黄を配合する必要はありません。

標準添加量は全体量の0.2〜2%程度。使用方法は、まず水分とナチュルエミュルをハンドブレンダーで滑らかな状態になるまで良く混ぜ合わせます。そこにリキッド状の油脂を加えてさらに良く混ぜ合わせて完成。使い方は簡単ですが、非常にきれいなマヨネーズ状に仕上がります。一度マヨネーズ状に仕上げたものは、時間が経過してもほぼ分離しませんが、高温になると乳化が弱まり分離しますので、加熱は40℃程度までに控えて下さい。

製菓で使用する場合は、焼き菓子の生地の安定剤として有効です。水分が多い配合でもナチュルエミュルの効果により、各材料がつながりやすくなるので作業性も向上します。他にも焼き菓子の生地の中に、お好みの液体やオイルを配合させるなど、アイデア次第で面白い使用方法が期待できる商品です。
ナチュルエミュルの使い方は、まず水分とナチュルエミュルを滑らかな状態になるまで良く混ぜ合わせます。
そこにリキッド状のオイルを加えてさらに攪拌。ハンドブレンダーを使用すると素早くきれいに混ざります。
ナチュルエミュルの力で水分とオイルが簡単にマヨネーズ状に乳化。口当たりもクリーミーで滑らか。
シュクロエミュル
2015年の夏に新しく追加されたテクスチャーシリーズの中で、一番の人気商品がこちらのシュクロエミュル。シュクロエミュルは、ショ糖脂肪酸エステル100%の粉末状の乳化剤。水分ベースの素材と混ぜ合わせて攪拌することで、耐久性の良いフォーム(泡)を作ることができます。

使い方は、シュクロエミュルと水分ベースの素材を常温で混ぜ合わせて泡立てるだけ。標準添加量は水分に対して0.5%程度となります。ベースとなる素材にもよりますが、シュクロエミュルを使用して作った泡は30分程度状態を維持しますので、飲食店の場合、提供する直前に皿に盛り付ければ、お客様が料理を食べ終わるまで十分に泡の状態を保持することができます。

さらにシュクロエミュルでは、アルコール含む素材をベースにして泡を作ることも可能です。シュクロエミュルの泡は、エスプーマのようなクリーミーな泡とは異なり、口に含むとシュワシュワとすぐに消えてなくなるので、アルコール分を強く感じさせずにリキュールなどの風味を楽しませることができます。ただしアルコール度数があまり高すぎると泡立ちが悪くなるので、水やシロップなどを加えて度数を20℃前後に調整して下さい。

その他の注意点としては、酸の強い素材は泡立ちが悪くなりますので、アルコールと同じように水やシロップなどで薄める必要があります。また油脂単体では泡立ちませんので、こちらも注意が必要です。
シュクロエミュルと水分を常温で泡立てるだけで簡単に耐久性の良いフォーム(泡)が作れます。
6月の講習会では海老から抽出したストックを泡にして料理に盛り付けていました。
こちらは12月の講習会で披露されたビーツの泡。視覚的におもしろい泡に仕上がりました。
プロクレマCOLD&グリセリン
SOSAテクスチャーシリーズの中でもアイスクリームやソルベなどの氷菓に適した商品がこちらのプロクレマCOLDグリセリンの2商品です。

プロクレマCOLDは、氷菓用の安定剤。アイスクリームやソルベの生地に添加することで、凍結後の状態をリッチで滑らかなに仕上げることができます。特にその効果が分かりやすいのはソルベに使用した時。通常のソルベは、配合に乳や卵が入らない為、シャリシャリした軽い食感に仕上がるのが一般的です。しかしプロクレマCOLDを添加した場合、乳や卵を加えなくても、アイスクリームのような滑らかでクリーミーな状態に仕上がります。標準添加量は水分に対して5〜10%程度。非加熱で生地に混ぜ合わせ、8時間程度冷蔵庫で休ませてから使用します。あまりたくさん入れ過ぎると、トルコアイスのように粘りが出過ぎてしまうので注意が必要です。

もう一つの商品であるグリセリンは、植物性グリセリン100%の乳化剤。乳化剤なので、通常の効果として水分と油脂の乳化力を高めることができますが、特筆すべきはアイスクリームなどの氷菓の凍結点を下げる効果です。この効果を活用すると、しっかりと凍結していながらも柔らかな質感の氷菓に仕上げることができるので、クネルにして皿に盛り付けたり、絞り出して使用する場合などは、格段に作業性が向上します。もちろん食べた際は口当たりが柔らかくなっているので、食感の印象も良くなります。標準添加量は全体量の0.5〜2%程度。液状なのでそのまま生地に混ぜて使用することができます。
カップ下に絞られているのはレモンのソルベ。乳や卵は入りませんが滑らかで柔らかな仕上がり。
6月の講習会でギエーム氏はプロクレマCOLDとグリセリンを使用して口金で絞り出せるソルベを披露。
チョコレートなど油脂分が多く含まれるアイスでも簡単にクネルにすることが可能です。
プロエスプーマCOLD&HOT
プロエスプーマCOLDプロエスプーマHOTは、エスプーマ用に作られた安定剤。その名称からも分かるように、35℃以下の冷製エスプーマにはCOLD、35〜70℃までの温製エスプーマにはHOTと、使用時の温度帯により使い分けます。その効果は、エスプーマで絞り出した泡の状態を安定させることはもちろんですが、通常は泡になりにくいような素材でも、本商品を添加することで泡にすることが可能になります。

使用方法は、COLDとHOTで若干異なります。まずCOLDは、泡のベースとなる素材に本商品を添加してハンドブレンダーで良く混ぜ合わせます。完成したベースは、サイフォンに入れてガスを充填し良く振ってから使用しますが、充填後に冷蔵庫で1時間以上休ませてから使用することで、泡のパフォーマンスが向上します。

続いてHOTは、ベース素材の温度を70℃程度まで温めてから添加してハンドブレンダーで良く混ぜ合わせます。その後はCOLDと同様にサイフォンに入れてガスを充填し、提供する温度に合わせて湯煎で温めてから使用しますが、湯煎の温度70℃以上にならないように注意が必要です。これはプロエスプーマHOTの原料に含まれる卵白成分が壊れるのを防止するためで、最初にベース素材と混ぜ合わせる時も同じことが言えますので温度管理には十分注意して下さい。

添加量は、COLDであればベース素材に対して2〜10%程度。仕上がりのイメージは、2%でそのまま飲める程度の軽くソフトな泡、5%でシェービングクリームのようなクリーミーな泡、10%で口金の跡が残るくらいの泡になります。一方HOTの添加量はベース素材に対して5〜10%程度。こちらは5%でそのまま飲める程度の軽くソフトな泡、10%でシェービングクリームのようなクリーミーな泡となり、同じ添加量でもHOTの方がすこしゆるい泡に仕上がります。
プロエスプーマCOLDとHOTはベースとなる素材にハンドブレンダーで良く混ぜ合わせて使用します。
後はサイフォンに入れてからガスを充填して絞り出すだけ。非常に状態の良い泡に仕上がります。
プロエスプーマHOTの場合は湯煎で温めて温度を調整。加熱し過ぎには注意が必要です。
SOSAについて
1967年、スペイン・カタルーニャ地方に設立されたSOSA社は、アルチザンビスケットやアイスクリームの原材料メーカーとして事業をスタート。2000年よりガストロノミーやペストリー向けの原材料ビジネスに参入し、現在では同社の新機能素材が世界各地で使用されている。
⇒ SOSA社取扱い商品一覧

【過去のSOSA講習会】
SOSA SUMMER DEMONSTRATION 2010
SOSA DEMONSTRATION in Tokyo 2011 "Summer Cocktail"
SOSAアシェットデセール講習会2012
SOSAデモンストレーション2013
SOSAテクスチャーシリーズ講習会2014
SOSA商品提案会2015
SOSA技術講習会2015冬
 
過去に開催された、講習会や教室の一覧ページ