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藤田浩司シェフによるエルレイ・チョコレート講習会
1929年の創業以来85年以上にわたり、ノンブレンドにこだわったシングルビーンチョコレート作りのパイオニアとして活躍する、ベネズエラのチョコレートメーカー「エルレイ」の講習会が、東京都内にありますドーバー洋酒貿易講習会場にて開催されました。

講師には、2008年WPTCチョコレートピエス部門優勝や2012年WPTC総合優勝などの活躍で知られる藤田浩司シェフを迎えて、全6品のデモントレーションを披露。2014年には、藤田シェフ自身がベネズエラのエルレイ本社やカカオ農園へ視察に行った経緯もあり、ベネズエラでのエピソードなども交えながら講習会は進められていきました。

開 催 日 2015年7月15日(水)
講 師 藤田 浩司シェフ
主 催 株式会社エム・シー・フーズ
後 援 ベネズエラ・ボリバル共和国大使館
Torta de Bolivar(トルタ・デ・ボリバル)
2層のチョコレート生地で構成された焼き菓子「Torta de Bolivar(トルタ・デ・ボリバル)」。こちらの作品は、藤田シェフがベネズエラのエルレイ本社に視察に行った際に、現地の方々に披露したもので、作品名はベネズエラの英雄「シモン・ボリバル」の名前から付けられています。

作品の土台となるのは、2015年より取扱いを始めたという新商品エルレイ・グランサマン70%を使用したケイク・ショコラ。こちらのケイク・ショコラは、藤田シェフの解説によると、焼き方を調整することでスタンダードなケイクの質感からクッキーのようなサクサクした状態まで仕上がりをコントロールできる生地とのこと。本作品ではある程度しっかり火を入れて、ほろほろしたやや固めの状態に焼き上げます。

焼き上がったケイク・ショコラは粗熱を取った後、上にエルレイ・アパマテ73.5%を使用したケイク生地を流して、再度焼成します。上に配置したケイク生地は、藤田シェフが「オーブンに入れるムース」と表現するように、土台のケイク・ショコラとは対照的な口溶けの良い滑らかな状態です。

こちらの作品中には、フルーツやナッツのようなチョコレートと組み合わせる副材料を使用していないので、「チョコレートを食べる為の焼き菓子」といった印象の仕上がり。チョコレートは共に70%台のものを使用しているので、大人向けのビター味わいが特徴です。
土台となるケイク・ショコラの生地。ビーターで全ての材料を混ぜ合わせて作ります。
混ぜ合わせた生地はセルクルに絞り入れて焼成。ほろほろしたやや固めの状態に焼き上げます。
焼成したケイク・ショコラの上には、アパマテ73.5%を使用したアパレイユを流し、再度焼成。
トルタ・デ・ボリバルの飾り付けの様子。上部のケイクはプラックショコラが刺さるほど柔らかな仕上がり。
試食用のトルタ・デ・ボリバル。ビターなチョコレートの味を際立たせた「チョコレートを食べる為の焼き菓子」。
Session5(セッション5)
チョコレートを使用した代表的な5つのパーツを組み合わせたアントルメ作品「Session5(セッション5)」。ムース・ショコラを全体のメインにして、ムースの中にはビスキュイ・ショコラ・サンファリーヌ、フォンダンショコラ、ガナッシュを組み合わせたセンター、底生地としてビスキュイ・モワルーショコラを配置した作品構成となります。

上記の5つのパーツ全てには、エルレイ・クリオロナチュラル61.4%というチョコレートが使用されています。このクリオロナチュラル61.4%は、藤田シェフがエルレイ本社へ視察に行った際に、現地で取り扱いのあるチョコレート商品の中からピックアップしたもの。まだ日本では未発売の商品(2015年9月時点)ですが、リーズナブルな価格ながら、しっかりとしたクリオロの香りが感じられるということで、日本のマーケットでの取扱いを検討している商品になるそうです。

メインとなるムース・ショコラとセンターのガナッシュには、上記のクリオロナチュラル61.4%と合わせてエルレイ・カオバ41%も併用しています。ブラックチョコレートのパーツが続く中にミルクチョコレート入ることで、風味・味わいに変化が生まれます。

1作品目のトルタ・デ・ボリバルと同様に、このセッション5もフルーツやナッツなどの副材料が使用されていないので、こちらは「チョコレートを食べる為のアントルメ」といえるでしょう。作品に付けられた名前の通り、それぞれ異なる5つのパーツを口の中でセッションさせて楽しむアントルメです。
ビスキュイ・ショコラ・サンファリーヌを仕込む様子。鉄板に広げて焼き上げます。
底生地となるビスキュイ・モワルーショコラは、セルクルに流してから焼成。
全てのパーツが揃った所でモンタージュ。セルクルに流しているのはメインとなるムース・ショコラ。
センターパーツはビスキュイ・ショコラ・サンファリーヌ、フォンダンショコラ、ガナッシュを組み合わせたもの。
最後はビスキュイ・モワルーショコラで蓋をします。5つのチョコレートパーツを組み合わせた作品。
仕上げとしてグラッサージュ・ショコラでコーティング。スパチュラなどは使用せず、レードルで仕上げます。
Apricot Lemon(アプリコット・レモン)
レモンとアプリコットにホワイトチョコレートを組み合わせたアントルメ「Apricot Lemon(アプリコット・レモン)」。

作品のメインとなるのは、エルレイ・イコア34%のムース。配合中にクレームエペスとクリームチーズを使用することで、甘くなりがちなホワイトチョコレートのムースに酸味を効かせてさっぱりとした味わいに仕上げています。

ムースの中には、レモンピューレと糖類を加熱して作ったシロップに生クリームを混ぜ合わせて固めたものと、炊き上げて作ったレモンクリーム(クレーム・シトロン)を、ケイク生地でサンドしたセンターパーツを配置しています。センターパーツの中には、ダイス状にカットしたアプリコットが入っており、食感と味にアクセントを加えています。

底生地となるのはヘーゼルナッツのダックワーズ。生地の上にヘーゼルナッツのブロークンを散らしてから焼成。モンタージュする前には、表面にプードルデコールを振り掛けて、上に配置されるムースからの吸湿を防止します。

酸味を効かせたムースと、レモンの風味を強調したセンターにより、全体的に爽やかな味わいのアントルメに仕上がりました。さりげなくセンターに入れられているアプリコットが、断面の美しさと共に全体のアクセントになっています。
センターを仕込む様子。レモン風味のパーツを2層重ねてケイク生地でサンド。中にはアプリコットダイス。
アプリコット・レモンのモンタージュ。上の画像はメインとなるイコア34%のムースを流す様子。
イコア34%のムースの中には、先に仕込んでおいたセンターを埋め込みます。
底生地となるヘーゼルナッツのダックワーズで蓋をする前には、レモンのコンフィチュールを配置。
グラッサージュでコーティングする際は、トルタ・デ・ボリバルと同様にレードルで仕上げます。
完成したアプリコット・レモンの断面。センターに配置されているアプリコットがアクセント。
Weekly(ウィークリー)
伝統的な焼き菓子「ガトー・ウィークエンド」を藤田シェフ流にアレンジした作品「Weekly(ウィークリー)」。こちらの作品は、バター不使用のウィークエンドにホワイトチョコレートを組み合わせたような焼き菓子で、バターの油脂分をチョコレートの油脂分で補うようなイメージで配合が構成されています。昨今のバター不足を考慮して、最近はこのようなバターを使用しないレシピを良く考えているそうです。

作り方はシンプルで、溶かしたイコア34%の中に卵と砂糖類を混ぜ合わせたものを加えて、最後に粉類を混ぜ合わせて焼成。生地中には、ガルニチュールとしてレモンのコンフィチュールが入っています。また風味付けとしてカルダモンパウダーを少量配合。カルダモンは清涼感のある爽やかな香りがするスパイスなので、柑橘系のフルーツと相性の良い素材。柑橘類の生地を仕込む時は、藤田シェフも良く使用しているそうです。

焼き上がった生地は、ラム酒をアンビバージュしてからすぐにラップで包み、冷蔵庫で生地を締めます。その後は、レモンのナパージュとイコア34%のグラッサージュを順に上掛けしてウィークリーは完成です。

食べた瞬間はウィークエンドの味わいですが、後から感じられるホワイトチョコレートの風味と合わさることで、徐々にウィークリー独自の味わいに変化していきます。バターの代わりにホワイトチョコレートが配合されているので甘みはやや強く感じられますが、レモンとカルダモンの爽やかな香りにより後味はすっきり。夏でも楽しめるさっぱりとした印象の焼き菓子です。
ケイク生地を仕込む様子。バターは使用せずチョコレートの油脂分を利用。
完成した生地はミニサイズのパウンド型に入れて焼成。
焼成後はラム酒をアンビバージュしてからラップに包み、冷蔵庫で休ませます。
仕上げとしてナパージュとグラッサージュでコーティング。まずはレモンのナパージュ。
ナパージュの上からイコア34%のグラッサージュで上掛けしてウィークリーは完成。
Coco Rhom(ココ・ロム)
その名前からもイメージ出来るように、ココナッツとラム酒をメイン素材に使用した作品「Coco Rhom(ココ・ロム)」。こちらの作品は、前作品のウィークリーと同様にバター不使用で作られたケイクとクリーム状にしたホワイトチョコレートを組み合わせたバー状のガトーです。

ケイク生地の作り方はウィークリーと同じで、溶かしたチョコレートにダークラムとアパレイユを混ぜてから粉類を合わせるというもの。カードルに流して焼成します。チョコレートには、カオバ41%を使用。こちらのカオバ41%は、キャラメルの様な香ばしい風味が特徴的なチョコレートなので、焼き菓子に向いていると藤田シェフは解説します。さらに生地には、グラニュー糖の代わりに黒糖を使用することで、キャラメルの風味を強調したコクのある生地に仕上げています。

焼成した生地には、ココナッツリキュールとカウベル・ミルクリキュールを全体にたっぷりとアンビバージュしてからバー状にカット。カットしたものは、上にイコア34%、パーム油、太白胡麻油を混ぜ合わせたクリームを絞ります。仕上げには、生地と同様にカオバ41%を使用したグラッサージュでコーティングして、ココ・ロムの完成。仕上げのグラッサージュは、ザッハトルテのグラズールをイメージしているそうで、あえて配合する砂糖の粒を残した状態に仕上げることで、糖化によるシャリシャリしたグラズール特有の食感に近づけています。

ほろほろした食感のケイク生地、固めに仕上げたホワイトチョコレートクリーム、砂糖の食感が残るグラッサージュという各パーツの特徴がおもしろい作品。全体的に甘みが強く、ヨーロッパの伝統菓子といった印象の仕上がりです。
ココ・ロムのケイク生地はカードルを使用して焼成。こちらの生地もウィークリーと同様にバター不使用。
焼成した生地にはココナッツリキュールとカウベル・ミルクリキュールをたっぷりとアンビバージュ。
アンビバージュ後はすぐにラップをして乾燥を防ぎます。この後バー状にカットしてからイコア34%のクリームを絞ります。
仕上げとしてザッハトルテのグラズールをイメージしたグラッサージュでコーティング。
試食用のココ・ロム。ほろほろしたケイク生地と強めの甘みが、伝統菓子を彷彿させる素朴な作品。
Mojito(モヒート)
最後の作品は、人気のカクテルに抹茶を組み合わせたボンボンショコラ「Mojito(モヒート)」。藤田シェフ自身はあまりお酒が飲めないそうですが、モヒートのホワイトラム、ミント、ライムという素材の組み合わせが非常に気に入っているということで、ボンボンショコラに取り入れた作品です。

ボンボンショコラの中身は、シンプルにガナッシュのみなので、こちらのガナッシュにモヒートと抹茶の風味を加えていきます。モヒートのベースとなるホワイトラムには、ミントの葉を混ぜ合わせてから電子レンジで加熱して香りを抽出。残りのライムと抹茶は、溶かしたカカオバターの中に香りを閉じ込めます。全ての香りがそろったところで、イコア34%をベースにしたガナッシュを作り、ムーラージュした型に流して完成です。

一口食べると、ます最初に感じられるのがライムとミント香り。清涼感のある爽やかな風味が第一印象として広がります。次にやってくるのがホワイトラム。しっかりと力強さがあり、先に香るライムとミントと混ざり合うことでモヒートの風味に変化します。そして最後の余韻として残るのが抹茶の渋み。トロピカルな風味と和の風味が絡み合う独特の味わいの作品に仕上がりました。

試食用のボンボンショコラは前日に作られたそうですが、藤田シェフによると「このボンボンショコラは4〜5日熟成させてアルコールをマイルドにした方が美味しい」とのこと。時間経過による味わいの変化もボンボンショコラの楽しみ方のひとつです。
ホワイトラムとミントは電子レンジで加熱して裏漉します。強く絞り過ぎるとミントの水分が出てしまうので要注意。
カカオバターとライムのゼストも電子レンジで加熱し香りを抽出。ゼストをカカオバターで軽く揚げるイメージ。
ライムの香りを抽出したカカオバターには、さらに抹茶を混ぜ合わせます。
ガナッシュのベースとなるイコア34%を溶かし、香りを抽出した素材を混ぜていきます。
ハンドブレンダーを使用して丁寧に乳化させながらガナッシュを作ります。
ボンボンの表面はホワイトチョコレートとダークチョコレートを組み合わせてマーブルにしています。
藤田 浩司シェフ
1970年、大阪生まれ。リーガロイヤルホテルでの修業を経て、1991年、ヒロコーヒーに入社。のちに同社シェフパティシエに就任。2008年、国際的製菓コンクルールWPTCにチョコレートピエス部門の日本代表として出場、同部門のグランプリ獲得。2012年、WPTCに味覚担当として再度出場、チーム総合優勝に輝く。現在は株式会社ロマンライフに入社し、京都でショコラティエとして活動する傍ら、海外を含めた様々な場所で講習会を行い、製菓技術の指導を行う。
エルレイ社について
1929年、ベネズエラにて創業。「最高品質のカカオ豆が採れるこの国で、最高峰のチョコレート作りを」という思いから、ノンブレンドにこだわったシングルビーンチョコレートのパイオニアとして活躍。カカオ栽培を手掛けているエリアの気候や土壌により、そこでしか育まれない産地特有の個性を持ったカカオ豆100%で、一枚のチョコレートを丹念に作り上げています。

【エルレイ・チョコレート取扱い一覧】
http://store.tfoods.com/Form/Product/ProductList.aspx?shop=0&cat=005001016
 
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