TFOODS.COM 材料にこだわる人とプロの為の洋菓子材料通販サイト

ピュラトスジャパン主催 ステファン・ルルー氏によるチョコレート技術講習会
製菓・製パンのプロユーザーに向けて、ベルコラーデ・チョコレートをはじめ様々な材料を提供しているピュラトス・ジャパン主催のチョコレート技術講習会が6月下旬に東京都内で開催されました。
講師は2004年パティスリー部門のMOF授賞をはじめ、様々な輝かしい実績を持つベルコラーデ本社デモンストレーターのステファン・ルルー氏。通訳には昨年に引き続きノリエットのオーナーシェフである永井紀之氏を迎え、チョコレート菓子4作品とピエスモンテのデモンストレーションを披露して頂きました。
開 催 日 2015年6月23日(火)
講 師 ステファン・ルルー氏
(ベルコラーデ本社:デモンストレーター)
主 催 ピュラトスジャパン株式会社
協 賛 ・ 会 場 ドーバー洋酒貿易株式会社
カシス‐ブラン・セレクシオン CASSIS‐BLANC SELECTION
1作品目は、ベルコラーデのホワイトチョコレート「ブラン・セレクシオン」にカシスやフランボワーズなどのフルーツを組み合わせた「カシス‐ブラン・セレクシオン」。

こちらの作品は、ヘーゼルパウダーとアーモンドパウダーを配合したクランブルを底生地にして、フランボワーズやブルーベリーといった果実を砂糖で煮詰めたコンポート、ビスキュイ・ジョコンド、カシスとフランボワーズのクレームの4つのパーツを逆さ仕込みで順に重ねてセンター部分を作ります。センター部分が冷やし固まったところで、ブラン・セレクシオンのムースの中に配置。仕上げとしてムースと同じくブラン・セレクシオンを使用したグラッサージュでコーティングしています。

メインとなるブラン・セレクシオンのムースは、砂糖の配合を抑えて甘さ控えめに。センターに配置されたクレームとコンポートの酸味がホワイトチョコレートのやさしい味わいを引き立てます。大変なめらかで口溶けの良いムースとクレームに対して、底生地のクランブルはカリカリした心地の良い歯ごたえ。表面にカカオバターをピストレすることでモンタージュ後もしっかりと食感が残ります。さらにほんのり感じられるクランブルの塩気が作品全体の味を引き締めます。アントルメの表面にさりげなく吹き付けられた赤色のピストレと、トップとサイドに飾り付けられたプラックショコラの配色が美しい一品。
センター部分はクランブル、コンポート、ビスキュイ、クレーム4層で構成。逆さ仕込みを行います。
センター部分が冷やし固まったらブラン・セレクシオンのムースの中に配置します。
グラッサージュにはムースと同じベルコラーデの「ブラン・セレクシオン」を使用しています。
グラッサージュの後には赤色のカカオバターをピストレ。白地に赤が良く映えます。
トップに飾るプラックショコラの一枚を仕込む様子。ピケローラーを使用して凹凸模様をつけています。
試食用のカシス‐ブラン・セレクシオン。各層の特徴がバランス良く調和して見事な味わいに。
チョコレートケーキ・ベトナム・マンゴー‐パッションフルーツ CHOCOLATE CAKE VIETNAM MANGO‐PASSION FRUIT
2作品目は本日の主催であるピュラトス・ジャパンのクーベルチュール「ショコランテ・ガーデナー・オブ・チョコレート」を使用したケイク「チョコレートケーキ・ベトナム・マンゴー‐パッションフルーツ」。

作品について触れる前に、まずはショコランテ・ガーデナー・オブ・チョコレートをご紹介。ショコランテ・ガーデナー・オブ・チョコレートは、カカオマスにベトナム産のカカオ豆を100%使用したクーベルチュール。カカオの栽培から加工に至るまで様々な工程にこだわりを持って製造されており、2013年のサロン・デュ・ショコラ・パリで開催された国際品評会において、インターナショナル・カカオ・アワードを受賞する快挙を成し遂げました。ラインナップはダーク62%とミルク39%の2種類(2015年9月上旬頃、ホワイト40%が発売予定)。こちらの作品ではビスキュイとガナッシュにそれぞれダーク62%が使用されています。

作品構成は、チョコレート・ビスキュイでガナッシュとパート・ド・フリュイを層状にサンドしたシンプルなもの。ビスキュイは、小麦粉を配合せずにバター、アーモンドパウダー、砂糖、卵、チョコレートのみで作られています。形はしっかりしていますが、しっとりとなめらかな口当たり。ガナッシュの口溶けと見事に調和して、口の中に広がります。パート・ド・フリュイには、マンゴーとパッションフルーツを使用。ビスキュイ、ガナッシュに比べて歯ごたえがあるので食感のアクセントに。サイドに飾られたプラックショコラは、いかにもステファン氏らしい色使い。シンプルな作品構成と合わせてステファン氏らしさが全面に感じられる作品に仕上がりました。
真ん中を長方形に切り抜いた3mm厚のプラスチックシートを重ねて組み立てていきます。
各層ごとにパーツを重ねたら、しっかりと平らにならして美しい層を作り上げます。
仕上げは断面を上にしてからプラックショコラをサイドに張り付けます。ステファン氏らしい作品です。
ガナッシュ・レグリス GANACHE REGLISS
3作品目はモールドを使用したボンボンショコラ「ガナッシュ・レグリス」。その名前の通り、中に入れるガナッシュにはレグリス(甘草)が使用されています。

日本でレグリス(甘草)というと、薬のような印象が強いのであまり使われませんが、フランスではポピュラーな素材。スーパーなどにはレグリス風味のグミやキャンディーが並んでおり、子供の頃から親しまれているといいます。ステファン氏自身も乾燥させて棒状になったレグリスをおやつとしてかじっていたそうです。

ボンボンは2層構造。1層はレグリスの香りをアンフュゼしたガナッシュ。もう1層はフランボワーズのパート・ド・フリュイ。こちらのパート・ド・フリュイは柔らかめに仕込まれているので、ガナッシュのなめらかな口当たりとバランス良く調和します。レグリスのやわらかな香りとフランボワーズの酸味の後には、少量配合されているソミュール・トリプルセックのシャープな香り。後味がすっきりとしたさわやかなボンボンショコラです。
レグリスのエピソードを話すステファン氏。レグリスは日本ではあまり馴染みがありませんが、フランスではポピュラーな素材。
ボンボンの中にはレグリスのガナッシュとフランボワーズのパート・ド・フリュイが入っています。
こちらがレグリスのチップ。このチップから香りを抽出してガナッシュにアンフュゼします。
ガナッシュ・オ・ミエル GANACHE AU MIEL
4作品目はバータイプのプチガトー「ガナッシュ・オ・ミエル」。

こちらの作品は、まずチョコレートにアーモンドプラリネを混ぜ合わせたものをシート状にのばしてから1cm幅にカットしてベース部分を作ります。次にベース部分の上にレンゲのハチミツを使用したガナッシュを棒状に絞り、しっかり結晶化するまで休ませます。結晶化させたものは一定の長さにカット。最後にチョコレートでエンロービングして、仕上げにマローブルーの花びらを散らします。

ベース部分のチョコレートにプラリネを配合しているのは、味だけではなく結晶化後のソリや割れを防止するため。プラリネを配合することで油脂分が多くなるので、使用前には少し低めの温度でテンパリングを行い、固まるスピードを速めてあげることでファットブルームを防ぎます。その上に配置するガナッシュは、室温20℃の環境で3〜4時間程度休ませてから絞ります。固過ぎず柔らか過ぎない最適な状態で作業を行うことがポイントです。

作品自体はシンプルですが、パーツ作りからモンタージュまでの各所で、結晶化など時間を取る工程が多い一品。良い品を作るには、一つ一つの工程に対して丁寧な作業を行う事が大切というステファン氏の職人性が感じられました。
チョコレートとプラリネを合わせてベース部分を作成。しっかりテンパリングを行い結晶化させます。
結晶化したベース部分はギッターを使用して1cm幅にカット。
カットしたベースの上にはガナッシュを絞り、最後にチョコレートでエンロービングして完成。
ピエス・モンテ Piece Montee
休憩をはさんで後半はピエスモンテのデモンストレーションとなります。今回の講習会では、まずピエスに使われるパーツの作り方やポイントを実演しながら解説。その後にモンタージュを行うという流れで進められました。作られたピエスは、植物をモチーフにした小型の作品と、波と魚をモチーフにした大型の作品の2台。どちらもステファン氏らしい色使い・デザインが感じられる作品です。

自身の作品では決まった形の型をあまり使用しないというステファン氏。デモンストレーションの中では、薄く広げたチョコレートにプラスチック製のカーテンをカットしたものを作品のイメージに合わせて差し込み、型として使用します。型取ったパーツはそのまま使用するだけではなく、他のパーツと組み合わせたり、コーティングして形を変えることで、様々なバリエーションが生まれます。

上記の方法以外に、ステファン氏は鍋やボール、レードルなど身近なものを利用して型作りを行っているといいます。実際に、熱したレードルとフィルムを組み合わせて葉の型作りを披露。一枚一枚異なるナチュラルな形に仕上がるので表現の幅が広がります。

一通りパーツを作り終えた所でモンタージュに入ります。モンタージュは平面的にならないように立体感を意識しながら組み立てていきます。パーツを接着する際は点で接着するのではなく、面で接着するように工夫して強度上げていきます。

組み上がったピエスは最後にピストレを行います。様々な角度から細部を意識して丁寧に吹き付けていきます。チョコレートのピエスは、チョコレートの持つツヤやマット感と、ピストレによる質感のコントラストが大切と語るステファン氏。その言葉通り、バランス良くピエス表面の質感をコントロールする技術は見事です。受講者の方々も徐々に作品が仕上がる様子を真剣な眼差しで見守っていました。
基本的に決まった形の型は使用しないというステファン氏。カットしたプラスチック製のカーテンを組み合わせて型にします。
熱したレードルとフィルムを使って葉の型を作るステファン氏。一枚一枚違った形になるので表現の幅が広がります。
こちらが先ほどの型を使用して作った葉のパーツ。ナチュラルな動きのある形に仕上がります。
植物のピエスのモンタージュ風景。点ではなく面を合わせるようにして、しっかりと接着していきます。
作品全体のバランスを見ながらピストレを行い、ピエス表面の質感をコントロール。
こちらが完成した植物のピエス。花びら一枚一枚の形が微妙に違っており、動きのある作品に仕上がっています。
以上でステファン・ルルー氏によるチョコレート技術講習会は終了となります。
今回の講習会もステファン氏らしい作品の数々が並びました。ピエスのデモンストレーションは、例年よりも長い時間が取られていたので、コンクールを目指す方や、これからピエスに挑戦しようとしている方には大変参考になったのではないでしょうか。
講習会の中で、今後はチョコレートのピエスにアメ細工を組み合わせて、透明感のある表現に挑戦してみたいと語るステファン氏。この創作意欲がステファン氏の原動力となり、また次回来日する時には、更に素晴らしい作品を披露してくれることでしょう
Stéphane Leroux氏 (ステファン・ルルー)
ベルコラーデ本社 デモンストレーター

1967年フランス生まれ。
MOF(2004年パティシエ部門)。
2002年、2004年と連続してワールド・ペストリー・チャンピオンシップ(WPTC)にベルギー代表として出場し、チョコレート・ショーピース部門で2度にわたり個人優勝を果たす。2009年に「素材としてのチョコレート」、2013年に「プラリネ」を出版し、世界中のプロフェッショナルより賞賛を得る。現在、ピュラトス本社(ベルコラーデ)に所属し、世界各国で技術指導などを行う。
 
過去に開催された、講習会や教室の一覧ページ