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パティス・ガストロノミー協会主催 イタリアチーズを使ったカフェメニューセミナー
東京では2日連続の真夏日を迎えた5月の下旬、南青山にありますハワイ・オアフ島のラニカイ・ビーチをモチーフにしたカフェ&バー「Lanikai Terrace(ラニカイテラス)」のイベントスペースにて、パティス・ガストロノミー協会主催のセミナーが開催されました。

今回のセミナーテーマは「イタリアチーズを使ったカフェメニュー」。講師にイタリア菓子専門家・歴史研究家の藤田統三シェフを迎え、TFOODSでも人気のイタリアを代表するチーズブランド「ガルバーニ」のチーズをメイン素材に、2品+即席1品の合計3品のデモンストレーションが行われました。
開 催 日 2015年5月27日(水)
講 師 藤田 統三 シェフ
(イタリア菓子専門家・歴史研究家)
主 催 パティス・ガストロノミー協会主催
セミナーの開始30分ほど前に会場に到着すると、様々な野菜やフルーツが並べられた作業台を前に、本日の講師である藤田シェフとパティス・ガストロノミー協会の鈴木会長がセミナーの準備を進めています。少し早めに会場入りした受講者の方々には「一緒に準備しませんか?」と声をかけるなど、アットホームな講習会やセミナーでお馴染みのパティス・ガストロノミー協会らしく、和やかな雰囲気の中、セミナーはスタートします。
チーズとフルーツのクロスティーニ
1品目は「チーズとフルーツのクロスティーニ」。ベースとなるチーズにはガルバーニのゴルゴンゾーラとクリームチーズの2種類を使用します。ゴルゴンゾーラというとクセのある風味が苦手な方もいますが、それゆえに特徴が出しやすく、料理に少量使用するだけでもチーズの香りをプラスできる素材です。今回のクロスティーニではクリームチーズと組み合わせて風味をまろやかに。ともに小口切りにしてEXVオリーブオイルと合わせてほぐしておきます。
2種類のチーズをこのままバゲットに乗せても十分美味しそうですが、今回はピクルスとキウイ、ビワ、アメリカンチェリーといったフルーツをみじん切りにして混ぜ合わせます。「ゴルゴンゾーラはフルーツと相性が良い」という藤田シェフ。特に酸味のあるフルーツだと、ゴルゴンゾーラの風味がより引き立つそうです。さらにこの中にイタリアンハーブミックスと隠し味としてタバスコを少量加え、最後にカットしたバゲットの上に乗せてクロスティーニの完成です。
試食用のクロスティーニは、具材がたっぷりと乗っているので大きな口でがぶりと頂きます。ゴルゴンゾーラの風味とフルーツの甘みをクリームチーズが包み込むやさしい味わい。後味がスッキリするのはハーブとタバスコのお陰です。受講者の中には「ワインが飲みたいですね」なんて声も聞かれるおつまみに最適な一品です。
司会進行は株式会社鈴商の小菅さん。ガルバーニを始め、世界各国の様々な食品を取り扱っています。
ガルバーニのゴルゴンゾーラ。しっかりとした青かびの風味とキリッとした塩味が特徴。
試食用に並べられたクロスティーニ。甘みと酸味のバランスが心地よく、ついついお酒が飲みたくなります。
卵も小麦粉も入らない冷製ニョケッティ
2品目は「冷製ニョケッティ(ニョッキの小さいもの)」。一般的に知られるニョッキというと、加熱して裏漉したジャガイモに卵・小麦粉・パルミジャーノを混ぜ合わせて茹でたものになりますが、今回のニョッキは、ジャガイモ特有の質感を活かしたい、更にテーマ食材であるイタリアチーズの風味を最大限に引き出したいということで、卵と小麦粉を使用しない特殊な配合で作られます。しかし卵と小麦粉が入らないと生地の固まる力が不足します。その固まる力を補う為に配合されているのが、伊那食品の「イナアガーF」です。
イナアガーFは冷凍耐性がある植物性のゲル化剤です。通常は冷凍後に解凍すると激しく離水してしまうような水分量の多いゼリーやプリンなども冷凍保存を可能にすることができる非常に優れた商品です。
※詳しくはTFOODS.COMのイナアガーF特集ページをご覧ください。
作り方は、まず通常のニョッキと同じようにジャガイモを茹でてから裏漉しますが、あえて粗熱を取ってから裏漉すことで、ジャガイモ特有の「粘り気」を引き出します。ジャガイモは「メイクイーン」を使用。男爵に比べて質感がなめらかなメイクイーンは冷製ニョッキに適していると藤田シェフは解説します。ポイントは出来る限り目の細かいもので裏漉すこと。ここでなめらかな状態にしないとイナアガーFで固める際にうまく固まらなくなるので注意が必要です。
裏漉したジャガイモには、ガルバーニのパルミジャーノに沸かした生クリームを1:2の割合(チーズ1に対してクリーム2)で混ぜ合わせた「パルミジャーノクリーム」を加えます。更にこの中に、沸かしたお湯で溶かしたイナアガーFを混ぜ合わせて生地の完成です。
通常のニョッキであれば、この後に生地を成形してボイルしますが、今回のニョッキはこのまま生地を電子レンジで80度以上に加熱してから、熱々の状態のまま棒状に絞ります。生地は高温になりますので、絞る際には軍手が必須です。絞った生地は冷蔵庫で冷却、残った分はこのまま冷凍保存も可能です。
生地を冷やしている間に野菜をカットして盛り付けていきます。パプリカ、トマト、アスパラガス、オクラ、ラディッシュ、ライム、レモンなど色とりどりの野菜が使われ、なんとも涼しい彩り。真夏日を迎えたこの日にピッタリです。盛り付けた野菜の上には、冷やし固めたニョッキを2cm程度にカットして配置。最後にジェノベーゼソースとEXVオリーブオイルを回しかけ、パルミジャーノのクロカンテを飾り付けます。
イナアガーFを使用したニョッキは、一般的なニョッキのもっちりとした食感とは少し異なり、デンプンの粘りを感じるねっとりとした食感。目の細かい網で丁寧に裏漉しされているので口当たりは大変なめらかです。一口食べるとパルミジャーノの風味と塩味が広がります。今回のメニューの様に、ソースと絡めたりはせず、素材本来の味を楽しみたい場合には、卵も小麦粉も入らないニョッキは最適です。
なお盛り付けの際にカットした野菜のヘタや皮などは、お湯で煮出してからコンソメで味を調えて固めれば「野菜のジュレ」になります。今回は伊那食品の「ル・カンテンウルトラ」で固めました。藤田シェフは一度固めてからほぐした方がなめらかな食感になり美味しいとのこと。ドレッシングの代わりとしてサラダにサッと降りかければ、見た目も涼しい一品になります。
色とりどりの野菜と一緒にニョケッティを盛り付けます。美しい配色が食欲をそそります。
こちらが「卵も小麦粉も入らないニョケッティ」。パルミジャーノの風味となめらかな口当たりが楽しめます。
カットした野菜のヘタや皮は煮出してジュレに。ゲル化剤にはル・カンテンウルトラを使用。
ビーフジャーキーを使った冷製カルボナーラ
予定されていたメニューは以上の2品でしたが、即席でもう1品「冷製カルボナーラ」が作られました。冷製なのでパスタにはカッペリーニを使用。コシを出す為にやや多めの塩を入れたお湯で茹で上げ、氷水で冷やします。氷水で冷やす際に塩気が抜けてしまいますので、「必ず塩を振って味を調えるのが冷製パスタを美味しく仕上げるポイント」と藤田シェフ。
カルボナーラのソースには、ニョッキの生地にジャガイモと一緒に混ぜ込んだ「パルミジャーノクリーム」を使用。パスタに良くからませて皿に盛り付けます。仕上げにはブラックペッパーとパンチェッタの代用としてなんと「テングのビーフジャーキー」を削り掛けて冷製カルボナーラの完成です。カルボナーラにビーフジャーキーという組み合わせには、テングブランドを輸入している鈴商の小菅さんも「こんな使い方は初めて」と驚きの様子。藤田シェフらしい自由な発想の一品です。
パスタを氷水で冷やした後はしっかりと水を切り、塩を振って味を調えます。
ソースを絡めたパスタの上には、ブラックペッパーと一緒にテングのビーフジャーキーを削り掛けます。
テングのビーフジャーキーとカルボナーラの組み合わせ。料理には発想力が大切ですね。
「チーズの話」・「ゴルゴンゾーラに合うリキュール」
藤田シェフのデモンストレーションの合間には、ちょっとしたミニセミナーも行われました。一つ目は、本日のメイン素材として各メニューに登場したガルバーニの越智さんによる「チーズの話」。各テーブルにガルバーニのマスカルポーネ、リコッタ、クリームチーズ、ゴルゴンゾーラが配られ、それぞれのチーズをテイスティングしながら耳を傾けます。本セミナーは飲食業や食品業界の方が対象ということもあり、話はビジネス的な内容に。
「同じメニューでもチーズが入ることでお金が取れるメニューになるんです」と越智さんは語ります。確かに「チーズ入り○○○」なんてメニューを見ると少し値段が高くなっても、ついつい注文してしまう方も多いのではないでしょうか。さらに越智さんは「チーズの使い方にはタブーは無い」と続けます。先入観でチーズに合う・合わないを判断するのでは無く、もっと柔軟にメニューに取り入れていけば、もっとチーズに合う素材や料理を発見できるのだというメッセージが込められています。越智さんの言うように、普段のメニューの中にもっとチーズを取り入れて行けば、料理のバリエーションもお店の売上も豊かになるかもしれません。
二つ目のミニセミナーは、ドーバー洋酒貿易の安田さんによる「ゴルゴンゾーラに合うリキュール」です。今回用意されたリキュールは、ルクサルド社のバニラリキュールとラッツァローニ社のアマレットの2種類。これらのリキュールは、数年前にチーズプロフェッショナル協会のイベントで、ゴルゴンゾーラと100種類以上のリキュールを組み合わせた中の2組になるそうです。
「ゴルゴンゾーラにリキュールをちょっと漬けて食べてください、何回も味が変わって行くのが感じられると思います」と安田さん。早速、リキュールに漬けて一口、味の変化を楽しみます。まず最初に訪れるのがリキュールの甘い香り、次にはゴルゴンゾーラの塩味、そして最後にそれらが口の中で混ざり合っていくのが感じられます。これらの2種類以外にも栗のリキュールなど、まるみのあるリキュールがお勧めとのこと。ゴルゴンゾーラにワインもいいですが、たまにはリキュールと一緒に楽しんでみるのもいいですね。
以上で藤田シェフによる「イタリアチーズを使ったカフェメニュー」は終了となります。約2時間のセミナーでしたが、内容も試食もボリューム満点でした。
途中、会場に設置されていた電子レンジの使用方法が分からず、デモンストレーションがストップしてしまうトラブルも。しかしそんな時でも「誰か機械に強い方居ますかー!」と呼びかけて、セミナー受講者と一緒に力を合わせてトラブルを解決してしまうのが、なんともパティスさんらしい展開。今回のようなセミナー以外にも、パティス・ガストロノミー協会では様々なセミナー・イベントを行っておりますので、ご興味のある方は是非ホームページにアクセスしてみて下さい。
藤田統三シェフ
大阪出身。製菓専門学校卒業後、フランス菓子店とイタリア料理店の勤務を経て、イタリアで修業。イタリアから帰国後は、大阪で本格的なイタリア菓子を取り扱うバールをスタート。そして2005年には東京の表参道に「ソル・レヴァンテ」をオープン。2014年には同店をたたみ、現在は独立に向けた準備を行いながら、フリーで活躍中。
パティス・ガストロノミー協会
食に興味ある方とプロを結ぶ会員制ネットワークです。小冊子「patis」の発行や「食の講座」の開催を通して、 手で作ることの素晴らしさ、工業製品でない本物のおいしさを伝えています。

ホームページ
http://www.patis-swing.net/
 
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