TFOODS.COM 材料にこだわる人とプロの為の洋菓子材料通販サイト

GIANLUCA FUSTO 特別来日講習会
世界を代表するフランスのチョコレートメーカー「ヴァローナ」の講習会が、7月2日に都内にありますドーバー洋酒貿易講習会場にて開催されました。
今回のテーマは『IDENTITÀイデンティタ(アイデンティティ)』。講師には、2013年にも来日してデモンストレーションを披露して頂きました製菓の情熱的伝道師GIANLUCA FUSTO(ジャンルーカ・フュスト)氏を迎えます。
講習会の冒頭でジャンルーカ氏は、自身が掲げる「3つのルール」について説明をします。1つ目のルールは、「素材を尊重する」。素材の良さを理解することができれば、相手にも伝えることができるという考えです。2つ目のルールは、「自分のスタイルを考える」。誰かのマネではなく自分のスタイルを考えて、自分オリジナルの作品に結びつけるということ。そして最後の3つ目のルールが「3」。これは「3つの食感」、「3つの材料」、「3つの時間」ということを念頭において作品を考えるということです。
今回の講習会では、これらのルールを実践しながら、全6作品のデモンストレーションを披露して頂きました。
TORTA DECO(トルタ・デコ)
講習会のオープニングを飾る作品は「TORTA DECO(トルタ・デコ)」。こちらの作品には、2013年にヴァローナより発売された世界初のブロンドチョコレート「ドゥルセ」が使用されています。このドゥルセという素材に対してジャンルーカ氏は、@キャラメル・ミルク味、Aビスキュイの香ばしさ、B塩味という3つの特徴があると分析します。ここからドゥルセに合わせる素材として、本作品では「タヒチ産バニラ」と「ピーナッツ」を選択。タヒチ産バニラは「ドゥルセの甘み」を引き立て、ピーナッツは「ドゥルセの塩味」を引き立てる役割となります。

作品の土台となるのは、サブレ生地のタルト。生地の中には少量のヘーゼルナッツパウダーを配合して、歯切れの良いタルトに仕上げます。そのタルトの中にはドゥルセのクリームを流します。このクリームには、前述したドゥルセの甘みを引き立てる役割となるタヒチ産バニラが入りますが、チョコレートに直接バニラビーンズを入れ、そこに加熱した牛乳を加えて香りを閉じ込めるという手法を用います。これは、加熱による香りの損失を防ぎながら、素材に香りをつけることができるというジャンルーカ氏ならではの手法。香りを閉じ込める素材としては、@油脂、A砂糖、Bアルコールの3つの素材が有効であると語ります。そして一番トップには、ドゥルセの塩味を引き立てる役割となるピーナッツのペーストを使用したムースを配置して作品は完成です。

一番トップのピーナッツムースを始め、ジャンルーカ氏のムースには基本的に「卵」や「砂糖」が入りません。これは「素材を尊重する」という、ジャンルーカ氏が掲げるルールに基づいたもの。素材にしっかりと向かい合って考えられたこのタルトは、ジャンルーカ氏の「アイデンティティ」が堪能できるオープニングにふさわしい作品と言えるでしょう。
BAHIBE CANNELLA E CAFFÈ(バイベ・カネラ・カフェ)
2作品目はプチガトースタイルの「BAHIBE CANNELLA E CAFFÈ(バイベ・カネラ・カフェ)」。こちらの作品には、2014年4月にヴァローナより新しく発売された「バイベ・ラクテ」が使用されています。バイベ・ラクテといえば「46%」というハイカカオなミルクチョコレートで、力強いカカオ感、控えめな甘さ、やわらかなミルク風味を合わせ持つバランスの良い逸品素材。ジャンルーカ氏もこの特徴をふまえた上で、組み合わせる素材として「シナモン」と「コーヒー」を選択しました。

バイベ・カネラ・カフェは4つの層から構成された作品となります。一番底となる層は、P125クール・ド・グアナラを使用したパート・シュクレ。P125は、カカオの固形分と油脂分の比率を逆転させることでカカオの力強さを高めたチョコレート。このP125を使用することで、ココアパウダーとは違った力強いカカオの風味を素材にプラスすることが可能となります。2番目の層は、ジャンルーカ氏がバイベ・ラクテを引き立てる素材として選んだシナモンが入ったダックワーズ。更に3番目の層には、本作品の主役ともいえるバイベ・ラクテのムースを配置します。このムースも前作品と同様に「卵」、「砂糖」は使用せず、バイベ・ラクテ+牛乳+生クリームに補強程度の少量のゼラチンを加えてシンプルに仕上げます。一番トップは、もうひとつの組み合わせ素材であるコーヒーとオパリスのクリーム。コーヒーの香りは、ジャンルーカ氏のルールに基づき、前作品と同じように油脂分であるオパリスの中に閉じ込めます。

この作品でも、自分のスタイルを貫くジャンルーカ氏。以上の2作品をもって前半のデモンストレーションは終了となりますが、早くも前半にしてジャンルーカ氏の掲げる「3つのルール」というものを受講者の皆様も十分理解して頂けたのではないでしょうか。
ヴァローナ グラン・プラリネ
昼食を終えたところで、後半がスタート。後半は4作品のデモンストレーションが行われますが、そのすべての作品に、ヴァローナが2014年9月から新しく発売する「グラン・プラリネ」シリーズの商品が使用されていきます。

ヴァローナのプラリネ商品といえば、これまではキャラメル感を主体としたアマンドノワゼットの2種類でしたが、新しく発売されるプラリネは、ナッツの風味を前面に押し出した商品となります。ラインナップは「プラリネ・アマンド・フリュイテ」、「プラリネ・ノワゼット・フリュイテ」、「プラリネ・フリュイテ・クラッカン」の3種類。「プラリネ・アマンド・フリュイテ」と「プラリネ・ノワゼット・フリュイテ」は、共にローストを軽くすることでそれぞれのナッツの風味を強調した仕上がりに。「プラリネ・フリュイテ・クラッカン」は、アーモンドとヘーゼルナッツを同じ割合で配合したプラリネに、細かく砕いたナッツとキャラメルシュガーが入ったもので、カリカリした食感とアーモンドとヘーゼルナッツのバランスの良さが楽しめる商品です。

これらの新しいプラリネをどのようにレシピに取り入れていくのか。このポイントを軸として、後半のデモンストレーションは進められていきます。
PRALINA ARANCIA E NOCCIOLA(プラリナ・アランチャ・ノッチョーラ)
後半最初のデモンストレーションとなる3作品目は「PRALINA ARANCIA E NOCCIOLA(プラリナ・アランチャ・ノッチョーラ)」。「ARANCIA」はオレンジ、「NOCCIOLA」はヘーゼルナッツをそれぞれイタリア語で意味しており、その名の通り、プラリネにオレンジとヘーゼルナッツを組み合わせた作品となります。

本作品は5つのパーツから構成されています。一番底の土台となるのが、ゆでた卵黄と片栗粉を配合したビスキュイ。ゆでた卵黄と片栗粉を入れる理由としては、歯切れの良い食感に仕上げる為。ビスキュイというよりはサブレ生地のようなサクサクした食感のパーツとなります。その上には、ヘーゼルナッツのダックワーズと、新商品のプラリネ・フリュイテ・クラッカンとオパリスを組み合わせガナッシュが、各2層ずつ交互に配置されます。プラリネとオパリスのガナッシュは、「Namelaka(なめらか)」という名称が付けられるほど、なめらかさにごだわったパーツです。ダックワーズとガナッシュの上には、さらにオレンジのジュレを重ねます。このジュレは、オレンジ果汁をアプソリュ・クリスタルと混ぜ合わせてなめらかな状態にしてから、最低限のゼラチンで凝固させるという独特の手法で作られます。この手法を用いることで、ゼラチンよりなめらかな食感になる上、加熱も最低限で抑えられるので、果汁の風味も損なうことがありません。そしてこれらのパーツを、プラリネ・フリュイテ・クラッカンのシャンティで覆って完成。

作品の構成は複雑に感じられますが、味わいは実にシンプル。素材それぞれの味わいがダイレクトに感じられる見事な作品に仕上がっています。素材を知ることができれば、素材を活かすことができる。そんなジャンルーカ氏の哲学が感じられる作品です。
PRALINA YOGURT E LIMONE(プラリナ・ヨーグルト・リモーネ)
4作品目は「PRALINA YOGURT E LIMONE(プラリナ・ヨーグルト・リモーネ)」。こちらの作品は、プラリネにヨーグルトとレモンを組み合わせたヴェリーヌスタイルの作品です。

ヴェリーヌの底には、3作品目の「PRALINA ARANCIA E NOCCIOLA」で作品全体を覆っていたプラリネ・フリュイテ・クラッカンのシャンティと同じものを、斜めに傾けた状態で容器に流します。シャンティが冷えて固まったところで、斜めになった隙間に、1.5cm程度のダイス状にカットしたレモン風味のダックワーズを入れ、上からイボワールとヨーグルトのクリームソースをかけます。ダイス状のダックワーズの表面には、オパリスとヘーゼルナッツにエクラ・ドール(フィヤンティーヌ)を混ぜ合わせたものを塗り、サクサクした食感を演出します。そして一番トップとなるのがレモンのジュレ。このジュレは3作品目のオレンジのジュレと同様に、アプソリュ・クリスタルを使用して作られていますが、本作品はヴェリーヌスタイルということもあり、よりなめらかさを追求。レモンの酸味により凝固作用が弱くなるという点をあえて活用し、「極限のやわらかさ」と表現するほどギリギリ固まった状態にジュレを仕上げます。

プラリネの濃厚な味わいの後に、レモンとヨーグルトの爽やかな風味が感じられる心地の良い一品。フードペアリングという考えを常々実践しているジャンルーカ氏らしい仕上がりです。プラリネ+ヨーグルトの組み合わせは、暑い季節にお勧めです。
YOGHI(ヨギ)
講習会も終盤を迎え、5作品目「YOGHI(ヨギ)」のデモンストレーションに入ります。この作品は、本日の講習会で唯一の焼き菓子。「ヨギ」という特徴的なネーミングは、「ヨーグルト」を略したニックネームのような言葉で、プラリネにヨーグルトとニンジンを合わせた作品となります。

作り方は、ベースとなるヨーグルト入りのパータ・ケイク生地を仕込み、そこにプラリネ・ガナッシュを混ぜ合わせるというもの。型に入れる際には、生地のセンターに細かく糸状にカットしたニンジンのコンフィチュールと、細かく砕いたヘーゼルナッツを敷き詰めてから、焼成して完成となります。この作品で特徴的といえるのが、ベース生地に混ぜ込まれるプラリネ・ガナッシュの分量。ベース生地の約60%にもなる分量のプラリネ・ガナッシュが加えられる為、焼き上がった生地の状態は一般的なケイクとは異なり、非常にねっとり&しっとりとした仕上がりになります。イメージとしては、「ようかん」の食感に近いかもしれません。

デモンストレーションの中では、日本の焼き菓子は非常に美味しいので、スタンダードな焼き菓子ではなく、想像力をくすぐるような少し変わった焼き菓子を提案したいと思い、この作品を選択したと説明するジャンルーカ氏。受講していた方々も一風変わったこの作品から、新しい発見があったのではないでしょうか。
AMANDALI(アマンダリ)
今回の講習会で最後にデモンストレーションされた作品が「AMANDALI(アマンダリ)」。こちらの作品は、「CREMINI(クレミニ)」と呼ばれる伝統的なイタリアのお菓子をジャンルーカ氏流にアレンジしたものです。
「CREMINI(クレミニ)」は、ジャンドゥージャを使った3層のチョコレート菓子で、一般的にはキューブ状のボンボンタイプが多いようですが、イタリアではカーニバルの時などに、3kgくらいある大きな塊をカットして、昼から夜まで食べ続けるといいますから、日本人には驚きです。

本作品「AMANDALI(アマンダリ)」も、3つの層から構成されています。上段と下段の層は、ジャンドゥージャにヘーゼルナッツ・ペーストと澄ましバターを合わせたガナッシュ。センターの層は、オパリスとプラリネ・アマンド・フリュイテのガナッシュとなります。

味の印象は「これぞ伝統菓子」といった素朴でストレートな味わい。一口食べると、濃厚な甘み・ヘーゼルナッツの風味・プラリネの風味がダイレクトに口の中に広がります。
この作品についてジャンルーカ氏は、イタリアの伝統的な食文化を日本に伝えたいという想いで選択したといいます。国は変わっても伝統菓子というものは、不思議と懐かしい味がするものです。受講者の皆様もわずかながらイタリアの伝統的な食文化を感じられたことでしょう。
以上全6作品で、今回のデモンストレーションは終了となりました。

今回の講習会のテーマには『IDENTITÀイデンティタ』という言葉が使われておりますが、この言葉にはジャンルーカ氏、そしてヴァローナからの特別なメッセージが込められています。そのメッセージというのが、「お菓子作りにも作り手のオリジナリティが必要で、そのオリジナリティを作り上げる為には、一人一人の歩みがとても重要」ということ。講習会の中で素材に対する分析と自身のルールを徹底的に貫くジャンルーカ氏のスタイルを通じて、受講者の皆様も、ジャンルーカ氏、そしてヴァローナの『IDENTITÀイデンティタ』を感じられたことだと思います。

今後は素材に対する知識と情熱を用いて、世界中の国々で多くのプロジェクトを進めていくというジャンルーカ氏。近い将来には、日本の製菓業界でもジャンルーカ氏の名が大きく取り上げられる日がやってくるかもしれません。
GIANLUCA FUSTO(ジャンルーカ・フュスト)
GIANLUCA FUSTO(ジャンルーカ・フュスト)氏
イタリア料理界の巨匠Aimo MORONI(アイモ・モロニ)氏との出会いをきっかけに、料理から製菓の道へ。これを機にパティシエとしての才能を開花させ、ヴァローナ エコール・デュ・グラン・ショコラの一員として活躍。フレデリック・ボウ、ヤン・ドゥイッチ、フィリップ・ジブルらと5年間を共にし、ショコラに関する造詣を深め、その技術を洗練させていきます。現在は伝道師としてミラノ・パリ・ロンドン・ニューヨーク等世界中を駆け巡り、情熱的かつ厳格に豊かなノウハウを伝えている。
ヴァローナ
ヴァローナ(VALRHONA)社について
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。 カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。 超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、 その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。 2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。 さまざまな研修プログラムが用意されている。

ヴァローナ・ジャポン
http://www.valrhona.co.jp/
ヴァローナ オンライン・ブティック
http://boutique.valrhona.co.jp
エコール・ヴァローナ 東京
http://www.valrhona.co.jp/ecole/
ヴァローナ・メールマガジン
研修や新製品などの情報が、携帯Eーメールに届きます。
ご希望の方は、こちらをご参照ください。
 
過去に開催された、講習会や教室の一覧ページ