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ラバッツア×藤田統三シェフ「ティラミスの秘密」
徐々に気温が高まり、夏の訪れを感じ始める6月後半、新橋にあります片岡物産株式会社内に併設された「ラバッツァトレーニングセンター東京校」にて、ラバッツァチーフトレーナーの菊地正明氏と、元ソル・レヴァンテのシェフで現在はフリーで活躍中の藤田統三シェフによるセミナーが行われました。「ティラミスの秘密」というテーマを元に、前半は菊池氏、後半は藤田シェフの2部構成でセミナーは進められていきました。
開催日 2014年6月24日(火)
主 催 片岡物産株式会社、パティス・ガストロノミー協会
協 賛 株式会社鈴商、ドーバー洋酒貿易株式会社、中沢乳業株式会社
会 場 片岡物産株式会社
『ラバッツァ』のご紹介
TFOODSで『ラバッツァ』についてご紹介させて頂くのは2回目。今回も前回と同じくラバッツァのチーフトレーナーである菊地正明氏に、イタリアのコーヒー文化と合わせて、ラバッツァについてのお話をして頂きました。
ラバッツァについて
まずはラバッツァについておさらいしておきましょう。
ラバッツァは1895年にイタリア北部のピエモンテ州・トリノで創業。イタリア人の生活には欠かすことのできないソウルドリンクとも言える「エスプレッソ」の国内市場において、全体の約半分近くの割合を占めるイタリアンコーヒーのトップブランドです。
ラバッツァの人気の理由は、1世紀以上にわたって培ってきた門外不出の「焙煎・ブレンド技術」と言えるでしょう。世界30ヵ国以上から厳選したコーヒー豆をブレンド。直火ではなく熱風による独自の焙煎技術により、ラバッツァにしかできない深い味わいを実現しています。
その高品質な味わいは、イタリア国内のみならず世界でも認められており、今日ではイギリス、フランス、ドイツ、アメリカなど世界の一流ホテルやレストラン、有名店でもラバッツァのエスプレッソが採用されています。
イタリアのバール文化
エスプレッソを語る上で、欠かすことができないのが『バール』の存在です。
「イタリアはバールだらけ」と話す菊池さん。菊池さんによると、イタリア国内のバール数は約15万件もあるとのこと。日本のコンビニエンスストア数が全国でだいたい5万店舗くらいということを考えると、日本の約80%の面積となるイタリアにどれほどたくさんのバールが存在しているのかというのがイメージできると思います。
イタリア人のバールの使い方は様々。朝の出勤前にサッと立ち寄ってエスプレッソを飲んだり、炭酸水などちょっとした買い物をしたり、アペリティフとして利用したり、一日に何度もバールを利用します。バールはそのくらいイタリア人の生活に密着した文化なのです。1杯1ユーロくらいで楽しめるということなので、「イタリアに行った際は色々なバールに出入りして、お気に入りのお店を見つけてみては?」と菊池さんは受講者に進めていました。
「エスプレッソ+砂糖」がイタリアンスタイル
イタリア人は毎日何杯もエスプレッソを飲むということですが、その時にはスプーン山盛りの砂糖を入れるのが本場イタリア流。この「エスプレッソ+砂糖」については、次にティラミスセミナーを控えた藤田統三シェフもエピソードを話して下さいました。
「1日1Lはコーヒーを飲む」というくらいコーヒーが好きだと語る藤田シェフですが、イタリア修業時代に下宿していた家庭でも毎日エスプレッソを出してくれたそうです。そのエスプレッソはもちろんたっぷりの砂糖入り。当時の藤田シェフは「コーヒーはブラックのみ」だったそうで、下宿先の方にブラックで出してほしいとお願いした所、「エスプレッソに砂糖を入れないなんておかしい」とつっぱねられたといいます。そんなある日、『カフェ・コレット』という飲み物に出会います。カフェ・コレットは、エスプレッソにリキュールを加えた飲み物で、ここにもやっぱり砂糖が入ります。しかしブラック派の藤田シェフは、このカフェ・コレットを「砂糖抜き」で飲んでみることに。するとどうでしょう、味のバランスが悪い。この時に藤田シェフは「エスプレッソ+砂糖」の重要性を学んだと言います。それ以降はエスプレッソには砂糖を入れて飲んでいるそうです。
もし今までエスプレッソに砂糖を入れたことがないのであれば、一度砂糖を入れて飲んでみることをお勧めします。エスプレッソの新しい魅力に触れることが出来るかもしれません。
セミナーを受講している方々とコミュニケーションを取りながら、和やかに進められていきます。
セミナー後には菊池さん自らマシーンを操作してエスプレッソを提供。無駄のないスピーディーな動きは必見です。
注文によってはラテアートも披露。ラバッツァチーフトレーナーの技術を堪能させて頂きました。
ラバッツァ原宿店
世界が認めるコーヒー『ラバッツァ』は、原宿のカフェでお楽しみ頂けます。
ラバッツァ原宿店
東京都渋谷区神宮前6-3-7
営業時間:9:00〜22:00 (年中無休)
http://www.kataoka.com/lavazza/index.html
藤田統三シェフによる『ティラミスの秘密』セミナー
ラバッツァとイタリアのコーヒー文化に触れたあとは、場所を移動して藤田統三シェフのセミナーがスタートです。
今回のテーマは『ティラミスの秘密』。
ティラミスと言えば、90年代に爆発的なブームを巻き起こしたことで、日本中にその名が知れ渡ったイタリアン・ドルチェですね。ブームが落ち着いてからもその人気は根強く、現在ではイタリア料理店やイタリア菓子店以外でもティラミスの姿を良く見かけます。さらに近年は『ティラミス◯◯◯』という名称で、アイスになったり、チョコになったり、クッキーになったりと、様々なスタイルに形を変えて商品化されているほど。こんなにも日本人に愛されて、魅了し続けるティラミスにはいったいどんな秘密が隠されているのか、ティラミスが好きな方もそうでない方も、とても気になるテーマです。
藤田統三シェフのプロフィール
ティラミスについて触れる前に、藤田統三シェフのプロフィールからご紹介していきます。
藤田シェフは大阪出身。製菓専門学校を卒業後、まずはフランス洋菓子店に勤務し、シェフとなります。その後、イタリア料理の世界へ。イタリア料理を始めるきっかけは、「大阪出身なので生地ものが好きだから」という関西の人ならではの発想。この頃は料理人としてやっていくつもりだったそうです。
そんな藤田シェフを再び製菓の世界に呼び戻す転機がやってきます。それはイタリア現地の菓子店で仕事をするチャンスが訪れたこと。当時の藤田シェフは、イタリア菓子に対して「茶色くて地味なお菓子」という印象くらいしか持っておらず、日本で学んだフランス菓子の方がレベルが高いだろうと考えていたそうです。ところが、実際にイタリアで務めた菓子店は、想像に反して、大変華やかでレベルの高い店で、イタリア菓子の魅力に大いに触れることになります。そしてこの経験こそが、「イタリア菓子、そしてイタリアの食文化を日本で広めたい」という想いに繋がっていきます。
イタリアから帰国後は、大阪で本格的なイタリア菓子を取り扱うバールを始めます。そして2005年には東京の表参道に「ソル・レヴァンテ」をオープン。今年の2014年には同店をたたみ、現在は独立に向けた準備を行いながら、フリーで活躍をしております。
藤田シェフの講習会・セミナーといえば、ジョークを交えながら進められる軽快な関西弁トークが大変人気です。今回のセミナーも例に漏れず、絶妙なトークと絶品のティラミス、そしてイタリアの食文化に対する情熱を持って会は進められていきます。
ティラミスの歴史
物事を語る上で、まずは歴史を押さえておきたいものです。
ティラミスの歴史については諸説ありますが、16世紀後半にトスカーナ地方で誕生した『ズッパ・デル・ドゥーカ』がティラミスの原型となったのではないかと藤田シェフは考えます。
ズッパ・デル・ドゥーカは、イタリアのワイン産地を線引きした事で有名なトスカーナ大公コジモ3世をもてなす為に、当時は貴重だったコーヒーに生地をたっぷり浸した高級なおもてなしデザートだったそうで、コジモ3世がイタリアを遠征する際に、各地で食べた事により広がります。
『ズッパ』というと日本ではスープをイメージしますが、イタリアではパンをスープに浸したものを指すそうで、『コーヒー漬けのズッパ』がティラミスの原型といえるでしょう。
この説以外にもいくつか誕生のエピソードを持つティラミス。そんなミステリアスな部分もティラミスの魅力といえるのではないでしょうか。
ティラミスはイタリアの卵酒?
最近では多くの飲食店や洋菓子店などでティラミスの姿を見かけますが、ティラミスの『色』について気になったことはないでしょうか。
一般的にティラミスといえば、少し黄色がかったイメージですが、「巷のティラミスは色が白いものが多い」と藤田シェフは指摘します。なぜティラミスの色が白いのか。それは卵が入っていないから。その要因としては、近年の低カロリーブームや保存性を高める為に、卵の入っていないティラミスが増えているといえます。もちろん卵が入っていないティラミスも美味しいですが、卵入りのものと比べると味の力強さがどうしても弱い印象になってしまいます。
本場イタリアでもティラミスには卵が入ります。その理由の一つのエピソードとして、「ティラミスは日本で言うところの『卵酒』のようなニュアンス」と藤田シェフは説明します。ティラミスの名前を日本語に直すと「私を元気にして」という意味になり、精をつけるデザートとしてイタリアでは楽しまれているそうです。
そして、もしイタリアに行ってティラミスを食べたいと思った時は、夜にお店に行ってください。ティラミスは夜のデザート。昼はどこのお店でも提供していないといいます。藤田シェフも、イタリアでの修業時代にいろいろと店を回ったそうですが、昼にティラミスを提供している所はなく、唯一、無理やりお願いして昼に提供してもらった時のティラミスは凍った状態だったそうです。
藤田シェフのティラミス
藤田シェフには、他にもたくさんのエピソードをお話頂きましたが、何といってもセミナーを受講していた皆様が一番楽しみにしていたのは、ティラミスの試食だったのではないでしょうか。今回は「ふわふわタイプ」と「しっかりタイプ」の2種類をご用意して頂きました。
藤田シェフの解説によると、伝統的なティラミスのスタイルは「ふわふわタイプ」で、今回の試食品は、形状を保つのがやっとというくらい本当にふわふわな仕上がり。口に含むとサッと消えてなくなる完璧な口溶けの後には、マスカルポーネ、マルサラ、エスプレッソの余韻が見事に広がります。
一方、「しっかりタイプ」は比較的新しいスタイルのティラミスで、洋菓子店などテイクアウトを目的とした場合は、保形性・保存性などの観点から考えてもこちらのタイプになると思います。しっかりタイプは、ふわふわタイプとは対照的に、一口目にガツンとティラミスらしい力強い味わいが感じられ、その後はキレイに口の中に溶けてなくなります。
試食中には「どちらのティラミスが好みですが?」と受講者に聞いて回っていた藤田シェフ。どちらのティラミスも甲乙付け難い見事な美味しさなので、真剣に考え込んでしまう人もしばしば。試食用のお皿には大きなティラミスが2つも乗っていた訳ですが、セミナーが終わった時には、どのお皿もきれいに完食されていました。この光景こそが藤田シェフのティラミスの美味しさを一番物語っていたと言えるでしょう。
自身の著書を用いながらイタリア菓子について説明。関西仕込みのトーク力はさすがです。
シェフ自らティラミスを仕上げていきます。藤田シェフ愛用のココアパウダーは「バンホーテン」。
サーブされた2種類のティラミス。かなりボリュームがありますが、ぺろりと食べれる美味しさです。
藤田統三シェフ
大阪出身。製菓専門学校卒業後、フランス菓子店とイタリア料理店の勤務を経て、イタリアで修業。イタリアから帰国後は、大阪で本格的なイタリア菓子を取り扱うバールをスタート。そして2005年には東京の表参道に「ソル・レヴァンテ」をオープン。今年の2014年には同店をたたみ、現在は独立に向けた準備を行いながら、フリーで活躍中。
 
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