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Julien ALVAREZ 特別来日講習会
9月末に行われたジュリアン・アルヴァレズ氏の講習会から、2週間が過ぎた10月10日。世界で3校しかないヴァローナのショコラ専門学校「エコール・ヴァローナ東京」にて、再び、ヴァローナ講習会が開催されました。
今回の講師はジェローム・ドゥ・オリヴェラ氏。前回のジュリアン氏は29歳という若さでしたが、ジェローム氏はなんと26歳。しかしながら、21歳の時にル・モンディアル・デ・ザール・シュクレ2007で栄冠を手にし、2009年には史上最年少の23歳という若さでクープ・デュ・モンドの頂点に輝いた、素晴らしい実績の持ち主。間違いなくパティスリー界の次世代を担うジェローム氏のデモンストレーションを一目見ようと、会場は製菓関係者で埋め尽くされていました。
講習会の冒頭、ジェローム氏は自己紹介の中で、自分の作品に対する哲学を発表します。それは、2つ3つの少ない素材を活かした作品づくりを心掛けているという考え。今回の講習会で披露された作品も、例に漏れず、この哲学を元に構成されています。
それでは、メインとなる素材と共に、各作品を紹介していきます。
エグザルト(EXALTE)
今回の講習会のオープニングを飾る作品は「エグザルト(EXALTE)」。エグザルトは「バニラ」、「ペカンナッツ」、ヴァローナのグラン・クリュ・テロワールシリーズ「マカエ62%」がメインの素材となります。
作品の構成は、P125を使用したビスキュイ・ショコラを底生地として、その上をシュトロイゼルとペカンナッツにプラリネを混ぜ合わせたクルスティヨン、バニラクリームの順に並び、マカエのムースがそれら全体を覆っています。
ビスキュイ・ショコラは「ウルトラ・モワルー」という名称が付けられるほど、なめらかな質感にこだわったパーツ。ビスキュイ・ショコラ・サン・ファリーヌに、なめらかな質感を出す為、パート・ダマンドを加えたようなレシピです。バニラクリームには、バニラをサヤごと転化糖とロボクープで合わせた「バニラペースト」というジェローム氏オリジナルの素材を使用しています。このペーストは、冷凍保存が可能ということなので、必要な分量だけ解凍して使うことが出来て実用的。ジェローム氏の店でも実際に使用しているそうです。
完成したエグザルトは、素晴らしい口溶けを実現。口に含むとサッとなくなり、バニラの芳香とマカエの酸味が広がります。そして、なめらかな口溶けの後には、クルスティヨンのカリカリした食感。各素材の良さを見事にまとめ上げた逸品です。
フラグランス(FRAGRANCE)
素晴らしい口溶けの余韻が残る中、次の作品のデモンストレーションがスタートされます。2作品目は「フラグランス(FRAGRANCE)」。この作品のメイン素材は「ビスキュイ・ジョコンド」、「フランボワーズ」、「トンカ豆」となります。中でもフランボワーズは、ジェローム氏の出身地であるフランス・リヨンが産地ということもあり、特に思い入れが強い素材ということでした。
作品構成は、ビスキュイ・ジョコンドとフランボワーズのコンフィをそれぞれ3層重ねた上に、ジヴァラ・ラクテ40%とトンカ豆のクレムーを配置。トップのクレムーはサバランの型を使用して仕込み、くぼみの部分にフランボワーズのスフェリフィケーションを乗せて完成となります。
クレムーにはデコレーションとして、アプソリュ・クリスタルにパールパウダーを混ぜたものをピストレ。照明が反射してキラキラと輝きます。フランボワーズのスフェリフィケーションは、SOSA社のベジタブルゼラチンを使用して作られています。冷凍したフランボワーズピューレを、ベジタブルゼラチンに水と砂糖を合わせた溶液に2回くぐらせ、ピューレの周りを薄い膜でコーティングさせます。
完成した作品を食べてみると、フランボワーズの風味をトンカ豆の香りがマイルドに包み込んで、やさしい味わいに。ビスキュイ・ジョコンドも3層に重ねることでしっかりとした存在感を示します。鮮やかな赤色とバランスの取れた味わいが印象的な作品となりました。
ティラミス風タルト・カフェ(TARTE CAFE FACON TIRAMISU)
3作品目は前半の2作品とはガラリと変わり、イタリア菓子ティラミスの要素を取り入れた「ティラミス風タルト・カフェ(TARTE CAFE FACON TIRAMISU)」。メインとなるのは「パータ・サブレ」、「ビスキュイ」、そして「マスカルポーネ」の3つ。
この作品はタルトということなので、底生地がパータ・サブレになります。パータ・サブレには、卵黄を加熱して凝固させたものを目の細かいふるいにかけた「卵黄のプードル」を使用。この卵黄プードルを加えることで食感が良くなるというジェローム氏。独特なレシピと言えます。次に、このパータ・サブレの上にビスキュイを重ねます。重ねたビスキュイには、ティラミス風ということでエスプレッソコーヒーをしっかりアンビバージュ。エスプレッソコーヒーにはレモンゼストを加え、苦みをマイルドにします。さらにその上に、ジヴァラ・ラクテ40%を使用したクレムーを重ねて、タルト部分は完成。クレムーの表面は、ジェローム氏が自身でコーヒー豆を型取って作ったというオリジナルの型を使用して、コーヒー豆の模様を付けています。最後にマスカルポーネのシャンティを、クレムーの上に球状に絞り、円形のショコラを飾り付けて、ついにティラミス風タルト・カフェの完成となります。
味わいは作品名の通り、ティラミス風のタルト。なめらかなシャンティ、弾力あるクレムー、しっとりしたビスキュイ、サクサクしたサブレ、という4つの食感が一度に楽しめます。エスプレッソの香りの奥には、レモンの爽やかな風味が漂う、上品な仕上がりの作品です。
タルトレット・タタン・ドゥルセ(TARTELETTE TATIN DULCEY)
4作品目は定番のフランス菓子、タルトタタンをジェローム流にアレンジした「タルトレット・タタン・ドゥルセ(TARTELETTE TATIN DULCEY)」。その作品名の通り、メインとなる素材は「ポム・タタン」と「ドゥルセ」となります。
この作品は、半円状のパータ・サブレ2枚でポム・タタンをサンド。サンドしたポム・タタンの隙間にドゥルセのシャンティを絞り、リンゴをモチーフにしたチョコレートを飾り付けて完成です。
ジェローム氏自身の店では、タタン用のリンゴにゴールデンデリシャスを使用しているそうですが、今回の講習会では「サンつがる」を使用。サンつがるは、ゴールデンデリシャスに紅玉を交配した品種ということもあり、ジェローム氏も大変気に入った様子。ポム・タタンのデモンストレーション時には、キャラメルとバターの甘い香りが会場中に広がり、食欲をそそります。
そして、いよいよ試食の登場。モンタージュされた作品は、一般的に知られるタルトタタンとはまったく違って見えますが、食べてみるとオリジナルのタルトタタンを、しっかりとイメージをさせる仕上がり。煮詰め過ぎないように丁寧にポワレしてからキャラメルと合わせたリンゴは、大変みずみずしく美味しい。キャラメルの苦みとコクを、シャンティ・ドゥルセのクリーミーさがやさしく包みます。爽やかで飽きのこない味わいなので、1個と言わず、2個、3個と食べたくなる見事な作品です。
ババ・モヒート・ドゥルセ(BABA MOJITO DULCEY)
いよいよ最後の5品目となります。最後の作品は「ババ・モヒート・ドゥルセ(BABA MOJITO DULCEY)」。名称からもイメージ出来ると思いますが、モヒート風味のババで、メインとなる素材は「モヒート」と「ドゥルセ」。このババ・モヒート・ドゥルセは、エスプーマを使用するということもあり、サロンやレストラン向けの作品で、各パーツをグラスの中で組み立てるヴェリーヌタイプのガトーとなりました。
まず最初に、ババの生地作りからスタートとなりますが、伝統的なパータ・ババは完成するまでに時間がかかるということで、ジェローム氏が採用しているのは、シンプルで時間のかからないレシピ。発酵もホイロで一回行うだけで大丈夫ということです。焼成したパータ・ババには、同量のミントと転化糖をロボクープで合わせた「ミントペースト」で風味を加えたラム酒のシロップをアンビバージュします。次に仕込むのは、ババと一緒に添えるモヒート風味のコンフィチュール。こちらにもアンビバージュ用シロップと同様にミントペーストを使用。さらにライムの果汁を加え、モヒートを再現します。最後はドゥルセのエスプーマ作り。作り方はガナッシュと同じで、沸騰させた牛乳と生クリームにゼラチンを合わせ、ドゥルセに注ぎ、乳化させるというもの。乳化は3回に分けてしっかり行います。
それぞれのパーツの準備が出来たところで、いよいよモンタージュとなります。まずはグラスのフチに、緑色のチョコレートでデコレーション。独創的ですが、どこかモヒートをイメージさせる飾りです。その後は、グラスの中にババ、モヒートのコンフィチュール、食感としてアーモンドのシュトロイゼルを順に配置し、その上にドゥルセのエスプーマを絞ります。最後にグレーターでライムのゼストをおろして完成です。
完成した作品に顔を近づけるだけでも、ミントとライムが爽やかに香る、まさにモヒート。甘みも程良く、サッパリした味わいなので、夏でも楽しめる一品です。サロンやレストラン向けということなので、グラスやソルベと組み合わせても、おもしろい仕上がりになる作品だと思います。
以上、5作品のデモンストレーションでジェローム・ドゥ・オリヴェラ氏の講習会は終了となりました。5作品中、後半の3作品は、スタンダードな洋菓子をジェローム流にアレンジした作品。伝統的なものを吸収して、新しい作品に昇華させるジェローム氏の才能には、感動を覚えます。
今回、披露して頂いた作品は、講習会後に行われたプレス・カンファレンスの中で、「来日用に配合を調整したレシピなのか?」という質問が出るほど、日本人の口に合う、やさしくて上品な味わい。しかしこれらの作品は、素材を活かすというジェローム氏の哲学に基づいて作られたもので、自身の店でも使用しているレシピとの事でした。
今後もフランスを中心とした活動を行っていくというジェローム氏ですが、日本で彼の作品を食す機会があれば是非足を運びたいと純粋に思える、素晴らしい出会いが今回の講習会にはありました。
Julien ALVAREZ
Jerome DE OLIVEIRA(ジェローム・ドゥ・オリヴェラ)氏
セバスチャン・ブイエ氏の元で修業後、21歳の時にル・モンディアル・デ・ザール・シュクレ2007で栄冠を手にする。2009年には史上最年少の23歳という若さでクープ・デュ・モンドの頂点に輝く。その後、2011年4月に5年間勤めたパリの5つ星ホテル、プラザ・アテネのスーシェフの座を退き、現在はカンヌのファイブホテルで菓子創作に腕を振るう。
ヴァローナ
ヴァローナ(VALRHONA)社について
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。 カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。 超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、 その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。 2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。 さまざまな研修プログラムが用意されている。

ヴァローナ・ジャポン
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ヴァローナ オンライン・ブティック
http://boutique.valrhona.co.jp
エコール・ヴァローナ 東京
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