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Julien ALVAREZ 特別来日講習会
長く厳しい残暑も落ち着き始めた9月下旬、東京渋谷区にあるドーバー洋酒貿易講習会場にて、昨年より続く「創造するパティスリー」をテーマにしたヴァローナ社の講習会が開催されました。
今回、講師を務めるのは、まだ29歳という若さでありながら、2011年クープ・デュ・モンドのスペイン代表チームとして見事金メダルを獲得するという輝かしい実績を持つ、ジュリアン・アルヴァレス氏。さらに今回の講習会は、従来のブラック、ミルク、ホワイトに次ぐ、世界初のブロンド・チョコレートとしてヴァローナ社が新たに提案する「ドゥルセ35%」発売後、初の講習会となります。若き才能が、このドゥルセ35%をどのような作品に仕上げていくのか。多くのパティスリー関係者が注目する中、講習会がいよいよスタートします。
ルージュ・エ・ノワール
まず1品目にデモンストレーションされたのが、原産地限定のカカオを使用した「マカエ62%」とグリオットを組み合わせた「ルージュ・エ・ノワール(ROUGE ET NOIR)」。日本語に直すと「赤と黒」というネーミングの通り、グリオットの赤とショコラの黒がシンプルながら印象的に混ざり合った作品です。
作品の構成は、P125クール・ド・グアナラを使用して焼き上げたシュトロイゼルに、マカエとグリオットのガナッシュを流し固めた生地を土台とし、その上をマカエとグリオットのムースが覆います。ムースのセンターにはグリオットのコンポートとビスキュイが配置されています。
土台のシュトロイゼルにガナッシュを流しているのは、シュトロイゼルの形状を保つ以外に、食感の変化を加える為というジュリアン氏。ガナッシュが浸み込んだシュトロイゼルは、ビスキュイとは異なった新しい食感を実現していました。また、こちらで使用しているガナッシュは作業性を考慮し、ムースのベースとしても併用していきます。ひとつのベースから複数のパーツを作り上げるのは、製造現場の仕込みでは有効な手段。ジュリアン氏の職人としての考え方が伺える場面でした。
仕上げは、エクストラビター61%を使用したグラッサージュでコーティングしていきます。こちらのグラッサージュには少量の赤い色素が添加されており、深みのある独特の赤色がジュリアン氏の世界観を演出。コポー・ショコラと共にデコレーションとして添えられたローズの花びらに、彼の情熱が感じられる作品となりました。
キコ
続いて披露されたのが「キコ(KIKO)」。独特な響きの中に、どこか「和」を連想させるネーミングですが、それもそのはず。この作品は、昔ジュリアン氏と同じ職場で働いていた日本人女性の名前を作品名にしたもので、作品中にもその女性から教えてもらったという日本素材のひとつ「柚子」が使用されています。
キコのメインとなるのは、アングレーズをベースにしたグアナラ・ラクテ41%のムース。そのセンターに、キャラメル、柚子、マンゴー、タナリヴァ・ラクテ33%を合わせたものと、ビスキュイがセットされています。柚子とタナリヴァ・ラクテは、仕上げ用のグラッサージュにも使われており、仕上がりの美しさと共に、作品全体の風味を調和していました。
そして、こちらの作品も土台としてシュトロイゼルを用います。このシュトロイゼルは、ヘーゼルパウダーを使用した生地を一度焼成してから軽く砕いたものに、カライブ66%、プラリネノワゼット、バター、ローストしたヘーゼルナッツを混ぜ合わせて完成。混ぜ合わせる際は、砕いたシュトロイゼルの食感を生かす為、圧を加えずにさっくりとするのがポイントとの事でした。
このレシピに限らず、今回の講習会の中で、ひとつのポイントとして感じられたのが、ジュリアン氏の「食感」へのこだわりだったように思えます。物を食べる時に、ほとんどのケースで行われる「噛む」動作をいかに楽しませるか、というジュリアン氏の哲学を多くの受講者も感じていたのではないでしょうか。
ドゥスール・キャラメリゼ
3作品目は「ドゥスール・キャラメリゼ(DOUCEUR CARAMELISEE)」。前の2作品が円形のアントルメだったのに対して、こちらは直径7cmのドーム状(半球状)の作品となります。このドゥスール・キャラメリゼ以降の4作品には、2013年9月より新しく発売された「ドゥルセ35%」がレシピの中に使われていきます。受講者の方々も新商品のドゥルセを、どのように作品の中に組み込んでいくのか、興味深く見守ります。
このドゥスール・キャラメリゼが、今回の講習会ではドゥルセを使用して作られる最初の作品になりますが、底生地となるビスキュイとセンターのコンフィチュール以外、ムース、クレムー、グラッサージュの3パーツ全てにドゥルセを使用したレシピとなっています。
そして、ドゥルセのパートナーとしてジュリアン氏が最初に選んだ素材はグロゼイユ。グロゼイユの渋み・酸味を、ドゥルセのやわらかな甘みと香ばしさが包み込むといった仕上がりの作品となりました。
中でもひときわ目を引くのが、ドゥルセに糖類、コンデンスミルク、赤色色素を混ぜ合わせて作られた、美しい色彩のグラッサージュ。この独特な色はドゥルセのブロンド色が生み出したもの。ドゥルセは仕上げ用の素材としても幅広い使用方法が期待できる素材と言えるでしょう。
ローラ
4作品目は「ローラ(LAURA)」。このローラは、P125のシュトロイゼルとビスキュイを組み合わせた焼き菓子の上に、ドゥルセを使用したシャンティを絞ったプチガトースタイルの作品となります。
焼き菓子部分は、一度予備焼成したシュトロイゼルの上に、ビスキュイ生地を流し、フランボワーズを乗せてから、コンベクションで再度焼成します。焼成の際に使用するセルクルの内側には、カソナードを万遍なくまぶして、カリカリした食感を演出。ここでもジュリアン氏の食感へのこだわりが感じられるシーンとなりました。
ドゥルセを使用したシャンティには、削ったトンカ豆とライム果皮の香りを抽出しています。トンカ豆独特の芳香とライムの爽やかさがアクセントとなり、ドゥルセの存在感を見事に高める役割となっていました。このシャンティを泡立てる際には、ふんわりした食感に仕上げる為、泡立て過ぎには十分注意してほしいとジュリアン氏の説明が入りました。このポイントをふまえて仕上げられたシャンティは、見事な食感を実現。食した際には、溶けるように口の中へ消えていきます。
アントンス
講習会も終盤に入り、残り2作品。5品目の「アントンス(INTENSE)」のデモンストレーションに入ります。アントンスは今回の講習会の中で唯一カードルに仕込んでいく作品で、4つの層で形成されています。4つの層の構成は、一番下からペカンナッツとP125のブラウニー、グアナラ70%タナリヴァ・ラクテ33%を使用したハチミツ風味のガナッシュ、ペカンナッツとP125のビスキュイ、ドゥルセとカフェのクリームという順なります。
共にペカンナッツとP125を使用したブラウニーとビスキュイは、材料の構成的にはほどんど同じですが、作業工程の違いで仕上がりの質感を変化させたとジュリアン氏の解説が入ります。ブラウニーはどっしり、ビスキュイはふんわり。複数層のガトーでは、それぞれの層の質感を考える事は、重要な要素と言えるでしょう。さらに層の美しさも重要な要素。モンタージュの際にジュリアン氏は、層を綺麗に均等に仕上げるということをポイントとして解説していました。
一番トップのドゥルセとカフェのクリームは、カードル擦り切りまで流したあとに、やや太めの丸口金でランダムな模様に絞り、表面に凹凸をつけます。そしてその表面には、ドゥルセと黄色の色粉を合わせたものをピストレして、作品は完成。このピストレにより、ベルベットような質感を表現したというジュリアン氏。細部までイメージして作品を完成させる哲学は、創造するパティスリーというテーマの通りです。
フィンガー・プラリネ・ドゥルセ
いよいよ今回の講習会最後の作品「フィンガー・プラリネ・ドゥルセ(FINGER PRALINE DULCEY)」となりました。この作品は、プラリネで接着した3つのパーツをグラッサージュでコーティングした、スティック状のガトーです。
3つのパーツの一番下は、サブレ生地にドゥルセとライスパフを合わせたもの。サクサクした軽い食感が特徴的なパーツです。真ん中のパーツは、厚さ1cm程度のパン・ド・ジェーヌ。仕込み方はスタンダードなパン・ド・ジェーヌと一緒で、パート・ダマンドに他の材料を順番に加えてから焼成して完成。そして一番トップは、キャラメリゼしたフリュイ・セック。一度、ローストしたアーモンド、ヘーゼルナッツ、ペカンナッツをキャラメリゼします。これらの3パーツをつなぎ合わせるのが、ジヴァラ・ラクテ40%を混ぜ合わせたプラリネ・アマンド。このプラリネには、アクセントとしてレモン果皮が加えられています。最後に、これらのパーツをモンタージュしてから、ドゥルセとヘーゼルナッツオイルを合わせたグラッサージュでコーティングを行い、フィンガー・プラリネ・ドゥルセの完成となります。
サクサクした食感の中にも、なめらかなパン・ド・ジェーヌが感じられる、おもしろい口当たり。全体の甘みを、ドゥルセの塩味とプラリネに加えられたレモン果皮が爽やかに引き締めるといった、バランスの取れた作品となりました。
約7時間にも及ぶ充実の講習会は、ついに終了となります。昨年よりヴァローナで掲げるテーマ「創造するパティスリー」を元に、ジュリアン・アルヴァレスという29歳の若い才能を十分に堪能する事が出来た講習会となりました。講習会の途中で2011年のクープ・デュ・モンドのエピソードを話す場面がありましたが、その際にチームワークの素晴らしさについて語っていたジュリアン氏。そして随時、アシスタントの方々に「merci(ありがとう)」と感謝の言葉を告げる彼の姿に、パティスリーを超えた人との繋がりを大切にする思いを教わったような気がします。
Julien ALVAREZ
Julien ALVAREZ(ジュリアン・アルヴァレス)氏
2006年、スペイン・バルセロナの「パティスリー・ブボ」に入店。2007年、ワールドチョコレートマスターで5位入賞。2008年、フィリップ・コンティチーニ氏、その片腕アンジェロ・ムサ氏が率いるラ・パティスリー・デ・レーヴ(パリ)で商品開発を担当。同年、シャルル・プルースト杯で3位獲得、さらに芸術賞を獲得する。2009年よりジャン・ミッシェル・ペリュション率いるエコール・ベルエ・コンセイユ(パリ)で講師を務め、氏の支持を受ける。2011年、クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーにスペイン代表チームとして参加、見事金メダルを獲得した。
ヴァローナ
ヴァローナ(VALRHONA)社について
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。 カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。 超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、 その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。 2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。 さまざまな研修プログラムが用意されている。

ヴァローナ・ジャポン
http://www.valrhona.co.jp/
ヴァローナ オンライン・ブティック
http://boutique.valrhona.co.jp
エコール・ヴァローナ 東京
http://www.valrhona.co.jp/ecole/
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