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秋のスペシャリテ対決 〜木村成克シェフVS齋藤由季シェフ〜
2011年クープ・ドュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー日本代表キャプテンなど、世界を舞台に数々の実績を誇る鍋田幸宏氏の講習会が大和貿易にて行われました。卓越した手腕の持ち主である事は既にご存知かと思いますが、今回はピエスモンテにプティガトー2品・ドゥミセック・ボンボンショコラと広範囲に渡ってデモンストレーションして頂きました。
どの作品にも鍋田氏のこだわり・熱い想いが込められており、受講者の方々も全てを見逃さない様、とても熱心に聞き入っていたのが印象的でした。チョコレートはパティスリーには欠かせないアイテムでもありますので、今回教えて頂いたノウハウをぜひ現場でも活かして頂ければと思います。
それではその講習会の内容を簡単にですが、ご紹介させて頂きます。
開催日 2012年10月11日(木)
講 師 鍋田幸宏氏(現レコール・バンタン講師他フリーランスで活躍中)
主 催 大和貿易株式会社
会 場 大和貿易株式会社 東京スタジオ
cake aux marrons ケーク・オ・マロン
cake aux marrons ケーク・オ・マロン
しっとりほろっとした食感とマロンコンフィが織りなす、正に秋にふさわしいパウンドケーキ。
生地にカラメルを加える事で、更に味に奥行きを出しています。ブランデーの芳醇な香りとカラメルの深み、しっとりとした食感は、秋深まりゆくこの季節にピッタリです。生地に使用しているマロンペーストは栗・砂糖のみが原料のシンプルなタイプ。余分なものが入らないので栗本来の味を邪魔する事無く、素材そのものを活かす事が出来ます。更に鍋田氏曰く、バニラなどが初めから添加されていないので、逆に自分好みの香りを付けられるのがポイントとおっしゃっていました。
尚、今回の仕込みはシュガーバッター法でシンプルな作りではありますが、その分作業工程上で生地の状態などしっかり確認し、一つ一つを丁寧に行っていく事が大切と解説して下さいました。
Lamifie ラミフィエ
Lamifie ラミフィエ
『積層構造』の意味を持つLamifie。その名の通りいくつものパーツによって組み立てられたプティガトーです。一番下にセルクルで抜いたシュトロイゼル・その上にほんのり苦味のきいたカラメルをしのばせ、粉を最小限に抑えたビスキュイショコラが続きます。そしてパッション風味のクレームを絞り、プラックチョコレートをセットします。トップにはパッションとマンゴーのクーリーがセンターに入ったムースショコラが。
チョコレートとトロピカルフルーツの相性が抜群なのは言うまでもありませんが、生地・クレーム・ムースが織り成す味のバランスは見事としか言い様がありません。
間にセットされているプラックチョコレートも四角にカットしただけではなく、センターを丸くくり抜いてあります。これは食べやすさと全体の味のバランスを追求した結果、この様なスタイルになったとお話されていました。
更にここで鍋田氏のこだわりが。今回仕込んだビスキュイショコラのメレンゲですが、立てる時は常に中速で立てるとの事。高速で立てた後速度を落としてキメを整えるなら、初めから中速で常に良い状態で仕込むのがベストとおっしゃっていました。普段何気なく行う作業ではありますが、そういった細かな事も踏まえ仕込むそのスタイルに、受講者の方々も大変感銘を受けていました。
egoiste エゴイスト
egoiste エゴイスト
スタイリッシュな構造とガナッシュのラインが印象的なegoiste。メープルシュガー風味の軟らかめのフィナンシェを土台にし、その上にプラリネ・チョコレート・フィヤンティーヌを合わせたロイヤルティーヌを。更にカラメルの深みのあるオレンジコンフィチュールを薄く絞りプラックチョコレートをのせ、トップにガナッシュをあしらってあります。
ロイヤルティーヌのさくさくとした食感と、フィナンシェのやさしい歯触りが相反的でもあり、且つお互いの持ち味を際立たせます。更にこちらのプティガトーはチョコレートとオレンジを組み合わせています。オレンジを丸ごとしっかり煮込み、カソナードでキャラメリゼする事で、奥の深いビター感を与えているのも特徴です。
そして、このスタイリッシュなデザインに思わず目を奪われますが、最近の鍋田氏が考えるプティガトーは、こういった一つ一つモンタージュするタイプを好むそう。勿論現場ペースで考えればやはり型を使用したものが効率的ではありますが、こうやってそれぞれモンタージュする事で、独自のデザインを無限に編み出す事が可能となります。建築家もしくはパティシエを志していたという鍋田氏。独創的なデザインはその精神の表れとも言えるのではないでしょうか。
bon bon chocolat ボンボンショコラ
bon bon chocolat ボンボンショコラ
艶やかに・メタリックにコーティングされたボンボンショコラ。
チョコレートとは思えないその見た目に、思わずため息が出てしまいます。
深みのあるルージュから連想される様に、センターにはフランボワーズのジャムとガナッシュがしのばせてあります。
ここではモールドに色素入りのカカオバターを塗り込む所からデモンストレーションして頂きました。カカオバターを溶かす温度や扱い方・デコレーションの仕方など、実際に作業しながらの解説でしたので、大変分かりやすい内容で進められました。また、普段なかなかお目にかかれないパールパウダーなども使用しており、興味を示す受講者の方々が熱心に質問をされていました。
ガナッシュの仕込みではバターを加え乳化させる際や、流し込むタイミングでの温度管理など、細かな部分まで丁寧に指導して頂きました。更にセンターを詰めた後、最後にチョコレートを流し込み余分なチョコを払う際、上にフィルムを敷いてその上からパレットで払う作業を行っていました。こうする事で裏面も美しく仕上げる事が出来ると説明して下さいました。見えない部分にも妥協しないその細やかな技術に、世界のレベルの高さを感じ取れました。
Piecemontee ピエスモンテ
ピエスモンテ
ラストはピエスモンテのデモンストレーションです。今回はモンタージュからピストレ・更に仕上げを行って頂きました。
花とライトという対照的な組み合わせが見る者の目を奪います。全体的にしなやかな曲線美を描く事で、無機質なものをひと際美しく躍動的に表現させます。
注目すべきはやはりそのデザイン。最近はこういった機械的なものをベースに作られる事が多いそう。クープ・ドュ・モンドでもそういったデザインで挑まれていたのが印象に残っている方も多いのではないでしょうか。更に使用したパーツでへこみのある球体がとても目を惹きますが、受講者の方もどうやって作られたかを早速質問されていました。こういった物は全てごく身近にあるもので型取りしているとの事。特にホームセンターにはそういった型として代用可能なものが沢山あるので、意識して見て回る事をおすすめされていました。ごく一般的にあるものを型として利用する、その柔軟な創造性や感性に、受講者の方々も大変感銘を受けていました。
そしてピストレ後の仕上げは、ボンボンショコラでも使用したパールパウダーを全体的に施します。このパウダーを使用するだけで、質感がガラリと変わるのも見所です。ライトはよりライトらしく・花はより花らしく、それぞれに息を吹き込まれたかの如く表情が生まれてきます。勿論動きのある構成があってこそ、ですね。
鍋田 幸宏 氏
大阪あべの辻製菓専門学校フランス校卒業
現在レコール・バンタン他フリーランスで活躍中

〜受賞歴〜
2008年 ジャパンケーキショー トップオブパティシエ(チョコレート部門)優勝
2009年 世界パティスリー優勝
2010年 クープ・ドゥ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー国内予選優勝
2011年 クープ・ドゥ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2011日本代表キャプテン
その他多数受賞
 
過去に開催された、講習会や教室の一覧ページ