|
|
Frédéric BAU (フレデリック・ボウ) 特別来日講習会 2010 |
|
|
|
世界トップクラスのパティシエたちから圧倒的な支持を集める、フランスのチョコレートメーカー・ヴァローナ社。
2010年7月、ヴァローナ・エグゼクティブ・シェフ・パティシエであり、クリエイティブ・ディレクターある
フレデリック・ボウ氏 の特別講習会が開催されました。デモンストレーションのテーマは“グルマンディーズ・レゾネ”。講習会では8製品を紹介し、
洋菓子界の新たな流れを生む可能性を秘めたテーマに注目が集まりました。
グルマンディーズ・レゾネ 〜 節度ある美食とは 〜
『美味しく味わえる菓子でありながらも、栄養学的に節度ある構成のレシピ開発や技術開発、素材選びを行う』という提案です。 |
|
|
重要なのは、このテーマを、低カロリーの菓子やダイエット志向の菓子提案と混同してはいけない、という点でしょう。
「美味しさ」つまり美食的価値を損なわず、節度をもったレシピとはいかなるものか、
今回のテーマはその点に中心を置き、デモンストレーションがすすめられました。
節度あるレシピを作成するにあたり、まずボウ氏が行なったことは、美食の歴史を知ることだったと言います。
そして伝統ある菓子のレシピを紐解き、その菓子がなぜおいしいか・どのようにおいしいかを分析し、
素材が果たす役割をよく理解するところから始まります。例えば、伝統的菓子が作られ始めた時代と現代、
大きくことなる点のひとつに保存技術が挙げられます。
冷蔵、冷凍等の技術進歩により、菓子は大きな可能性を広げたといっても過言ではありません。
ゆえに、例えば技術が発展した現在では、保存を目的として配合されていた糖分やアルコール分は省くことも可能なのです。
とはいえ、美味しさを損なってまでカロリーダウンをすることは目的ではありませんから、味わいのために必要な成分は、もちろん残していきます。
こうしてその菓子のもつ美味しさはそのままに、“栄養学的に節度をもったレシピ” が生まれました。
また、栄養学の医師との共同研究によって生み出されたレシピもあり、食品科学という視点からヒントを得て、
一部取り入れていくという作業も行なわれたようです。 |
|
▲ 写真1 |
|
例えば、節度あるレシピのひとつとしてご提案いただいた 『 COMME UNE TARTE CITRON(タルト・シトロン風・・・)』。(写真1)
この 『タルト・シトロン風・・・』 は、クラシックな 『タルト・シトロン』 を今回のコンセプトを元に再考したものです。
低温でじっくり焼いた 「アーモンドのサブレ」、レモンと砂糖、卵、ゼラチン、イボワー ル(ヴァローナ/ホワイト・チョコレート)でつくる 「イボワールのクレーム・シトロン」、
卵不使用の 「ライムのメレンゲ風」 の3パーツで構成した、バターを全く使わないレシピで構成されています。
まず、ボウ氏は 「何のためにバターを配合しているのか?」という点を考えました。 |
|
|
これは今回のコンセプトに向き合うための重要なポイントです。クレーム・シトロンの場合、バターを配合する理由は、バターが持つ味わいよりも、凝固機能を必要としているからだということに気づきます。ならば、同じく凝固機能があり、植物性油脂であるカカオバターを代用できないか? と考えたのです(植物性油脂には、動物性油脂より多くの不飽和脂肪酸を多く含み、コレステロールを減らすと言われています)。
しかしながら、バターをカカオバターに置き換えただけのクレームはとても固く締まり、クレーム特有のなめらかな質感は損なわれたものでした。
食感や美味しさを損なってしまっては、“グルマンディーズ・レゾネ”のコンセプトから外れてしまいます。
そこで、イボワール(ヴァローナ/ホワイト・チョコレート)が採用されたのです。
また、『タルト・シトロン』 の特徴であるメレンゲは、水、砂糖、ライム、ゼラチンの配合で作られ、卵が全く使われていません。
ゼリー液をつくり、ミキサーでふんわり泡立てから冷凍して“メレンゲ風”としています。
このような思考を経て誕生した新しいタルト・シトロン、「タルト・シトロン風・・・」。主役であるレモンが十分にインパクトを持ち、
はっきりとした輪郭が出ています。ライムのメレンゲ風のふんわり爽やかな口どけに、
「タルト・シトロン」の美味しさを十二分に感じることができるでしょう。また、作り手の観点から言うと、パーツに分けて製造保存できるため、
提供前に組立を行うことが容易となり、作業効率の向上につながります。ライムのメレンゲ風は冷凍も可能なので、状況に応じた製品提供が可能です。
慣れ親しんだ誰もが知っている「美味しさ」を支える、味・香り・食感はそのままに、スマートに変身した 「タルト・シトロン」 は、
消費者にとって喜ばしい製品であることは間違いありません。 |
|
▲ 写真2 |
|
そのほかにも、生クリーム半分以上、卵1/3以上減らしても、変わらない味わい・食感のなめらかさを表現した 『 CRÈME BRULÉE RAISONNÉE(クレーム・ブリュレ・レゾネ)』 や、
シュー生地にバターを使わず、ヘーゼルナッツオイルを用いた 『 PARIS VICHY(パリ・ヴィシィー)』(写真2) 、お酒がきつく苦手と口にする人も多いババをフレッシュでジューシーに作り上げた
『 BABA-COOL(ババ・クール)』(写真3)などを試食し、砂糖や油脂分、コレステロールを減らしても、美味しさの本質を損ねない “節度あるレシピ” というものを体験することができました。 |
|
|
ボウ氏の提唱する “グルマンディーズ・レゾネ 〜節度ある美食〜”は、現代における私たちの食文化やライフスタイルに、これからもっと関わりを強くしていくテーマです。
行過ぎるとダイエットフード、あるいはヘルシーフードという印象が先行してしまうため、
そのテーマを取り扱うさじ加減の重要性については強く力説されており、
「菓子職人としての本質はそうでなく、今も昔も変わらず美味しいものを作り、
召し上がる方へ幸せを提供することである」という信念があるとおっしゃっていました。
ボウ氏の“美味しいものを作りたい”という職人としての美学が感じられ る言葉です。
時代とともに変化を続ける洋菓子界に、ボウ氏の投げかける本テーマが、今後どのように浸透していくのか?
参加者として、ぜひ見つめていきたいテーマです。世界の洋菓子界をリードするヴァローナ社とボウ氏による哲学のある講習会に、
時代の新しい風を感じる一日 でした。 |
|
▲ 写真3 |
|
|
ヴァローナ・エグゼクティブ・シェフ・パティシエ
クリエイティブ・ディレクター
Frédéric BAU 氏 (フレデリック・ボウ)
1979年にパティスリー界への扉を開き、1986年パリ・フォションへ。ピエール・エルメにデコレーション部門を任される。
1988 年にテクニカルサポート・サービスの設立のため、ヴァローナに招かれ、「エコール・デュ・グラン・ショコラ」を創設。
以降、20 年間にわたり、ディレクターとしてヴァローナ文化の創造、レシピ開発に貢献。『Au Coeur des Saveurs( 1997)』、
『 Caprices de Chocolat( 1998)』、『 Fusion Chocolat( 2006)』を出版。
2007年には新しい試みとして、ショコラへの科学的アプローチをテーマにした研修プログラム「テクノ・タクティル」を新設。
2009年には、リヨンの南タン・エルミタージュにレストラン 「UMIA(ウミア)」 をオープン。 |
|
|
|
ヴァローナ(VALRHONA)社について
▼ ヴァローナ(VALRHONA)社とは
1922年フランス、ローヌ地方の菓子職人が創業。
カカオの品種や産地別に分類した商品をいちはやく展開した世界トップクラスのチョコレートメーカー。
超一流洋菓子店、レストラン、ホテルご用達の製菓材料であり、個性的な商品構成は、
その商品名が時にケーキやドリンクの名前にも付けられるほどの存在感です。
2007年には、フランスに次いで世界で2校目になるショコラの専門技術学校を、東京に設立。
さまざまな研修プログラムが用意されている。
≫ ヴァローナ・ジャポン ≫ エコール・ヴァローナ東京
▼ ヴァローナ・メールマガジンのご案内
研修や新製品などの情報が、携帯Eーメールに届きます。
ご希望の方は、こちらをご参照ください。 |
|
|